マサルのいないヴィンターリア①
ピンファントと神々とマサルの激しい戦いがあった後、マギアルウス様の死去とマサルの行方不明がゼラフィティス様より知らされた。
ゼラフィティス様たちは何か知っている様だったが神々が伏せている特別な事情に私たちが口を挟む事は出来ない…。
数日してからピンファントがこの地を守る聖獣だと言われたがマサルのいなくなった原因と思われるピンファントに対する風当たりは強い…誰も世話する人がおらずアデリナとザーグが仕方なく世話をしている。…と言っても餌を持っていくだけなのだが。
「もう半年にもなるけど帰ってこないわね…マサルとの婚約希望の話はグレイタスとバゼラールカ両方の貴族から山ほど来てるんだけど…無理よね。」
「そうだな…そもそもどうにかなりそうな相手がいないんだけどな…あんな縁談持ってきたらマサルがどんな顔するか…。」
売れ残りの様な年上か、どうすれば良いか分からない程の幼女の縁談が多く不適格としか言いようがないのである。賢い者はそもそも彼に縁談など出さないのだ。
「何で普通の縁談がないのよ…意外と良い物件よ?」
「そもそもコレは 縁談が本気なのか疑いたくなるな。嫌がらせにしか思えないだろ。」
「当たれば幸運くらいに思ってるんじゃないの?………ビクティニアス様には知られる訳にはいかないわね。焼却しときましょうか。」
「そうだな…縁談なんか来てないって事で良いじゃないか。もう事件と面倒事はお断りだしな。」
違う意味でビクティニアスやアイラセフィラに知られるとヤバい縁談だし、そもそもマサルが神となったのを知っていたら使者の前で破り捨てていられたのにと後に愚痴る事になるのだがまだ先の話である。
「それにしても…子供たちが賢すぎるな…。」
ふと、アデリナとザーグが振り替えると薪木を束ねたり、肥料を畑に運ぶ手伝いをしたりしているのが見える。午前中は今日も勉強をする為に集まり週一度は必ずどの神かが講義に来て下さっていて、それを全員が受講していたハズだ。
「私たちが子供の頃って遊んでいた記憶ばかりな気がするわ…。」
「そうだな、間違いなくあんなに人の役に立つ事はしてなかったな。」
大人も子供たちも協力し合い街を発展させようとするこの姿に、たまに2人はそれを眩しく感じるのだった。
「にしても、マサル早く帰って来ないかなぁ…。」
アデリナがちょっと遠くを見つめ呟くその言葉に胸が疼くザーグ………この男、今になってというか、今更というか、アデリナは本当はマサルが好きだったんじゃないかのかと疑っている。
「なぁ、アデリナ!おっ……おおおお…おれと結婚した事、後悔してないか?」
「何よそれ、馬鹿じゃないの?…わたしが自分で決めた事を後悔する訳ないでしょ!」
「でも………。」
「この話は終わり!何?ザーグは後悔してるの?…
「そんな事ある訳ないじゃないか!君だけを愛してるよ!!」
「ふふふっ、ありがと。……尚更に早くマサルに帰って来て貰って、私たちの新居の計画を立てないとね。」
「あ、お城か…………確か、下手な土台を建てると後で問題になるってやつか?」
「それよ、資材の大きいのはマサルがアイテムボックスで管理してたしね。岩を切り出すだけの人もいないし大変なのよ。」
「マサルがいないと出来ない事が多過ぎるな…いたらいたで面倒事起こすのに、いないとこんなに寂しいとはな。」
アデリナとザーグはしっかりとマサルのいない間のヴィンターリアを守ろうと誓いあい、その夜も熱い夜を過ごすのであった。




