建国の儀と戴冠式
2月最後の投稿です。
こっそり夜なべして作った神官服に金糸で刺繍された白いローブを纏い、祭壇の中心に立つマサル。
向かって、ホール内には前列2列にグレイタス王国とバゼラールカ王国の重鎮たち。ヴィンターリアの元となった集落の代表である兎人族の長、ルルさんとジータとメイ、各種族の代表たちが静かに席へと座っていた。
しっかり磨かれて均一に並べられたミスリルの燭台に真っ白な蝋燭…匂いも微かにハーブの香りが漂い、煙も煤も出ないその蝋燭に夢ではないのかと見ている光景を疑う。
この世界の蝋燭は少し独特な臭いがするし、少なからず煙や煤が出るものなのだ。
「では、神器入場!」
神器とは王が国の代表として認められた時に、神々から祝福を受けた王の証の事で、一般的に王冠などに祝福が行われる事が多い。
カチャっと静かに扉が開かれ薄桃色のドレス姿のアデリナとザ・定番の黒の礼服を着たザーグがミスリルの銀に輝くトレイを手に入ってくる。そっと祭壇にトレイが置かれるまで全員が息を飲んで見守る。
「では、神々をお呼びしましょう。」
アデリナとザーグは祭壇の端へ寄り、席に座っていた者たちは一度立ち上がってその場へと跪く。
「ビクティニアス様、アイラセフィラ様、ゼラフィティス様の御降臨です。」
祭壇の上から柔らかな光が洩れ3つの人影が祭壇へと降り立つ。
実のところ、神々が現れる時に光が射したりという事は起こらない…しかし、演出的にそれを弱いと見たマサルがゼラフィティスとの共同開発でスイッチを踏むと水晶が発光するという仕掛けを作っていたのだ。
芸が細かいというか、無駄な努力というかは微妙なところである。
「本日、この時を持ちましてこの地をヴィンターリア王国と認め祝福します。」
ビクティニアスの宣言した瞬間、室内で王都にあたる街にいるマサルたちには見られなかったが国境にあたる場所にはオーロラの様な光の膜が現れた。建国の光と呼ばれるこの光は7日間に渡って新たな国の誕生とその国の定められた土地の範囲を内部と外部の両方に誇示する意味合いがあるのだという。
「続いて、アデリナ。貴女をヴィンターリアの女王に任命し、アデリナ・エル・ヴィンターリアの名を与えます。」
「拝命致します。」
ドレスの端を摘まんで綺麗に一礼する。
「次に、ザイルターグ。」
「誰!?」
「………オレの本名だ。ザイルターグじゃあ、長いからザーグ…今は良いだろう…。」
小声でザーグが教えてくれるが、マサルの奇行にホール内の皆が渋い顔をしている。
「………ザイルターグ。貴方をアデリナの王配とし、ザイルターグ・オル・ヴィンターリアの名を与えます。」
「拝命致します。」
こちらも優雅に一礼する。
「神器をこちらに。では、このまま戴冠の儀を行います。皆さまは席へお座り下さい。」
ここからは通常、民へと神器を御披露目する人の儀式なので跪いたままでなくても良いのだ。
「では、アデリナとザイルターグ跪きなさい。」
跪いた2人の頭にトレイに乗せられていた冠がビクティニアスから授けられる。
「じゃあ、ビクティニアス。これもよろしく。」
差し出された一本の杖に全員の視線が集まる。
「これは俺とビクティニアスからだ。2人とも冠してたら男尊女卑の強いこの世の中だ、アデリナが低く見られるかも知れないだろ?これだけの杖を持っていたらどちらが王なのか一目瞭然だろ?」
芯はアダマンタイト、表面はミスリルでコーティングされ、精密に翼ある女性を象ったその杖は地球なら誰もが天使だと分かっただろう。天使の腕の中には濃い青のサファイアの球が抱えられ、目にはアクアマリンがあしらわれている。
「基本的にはアダマンタイトだから護身用の打撃武器にもピッタリだよ!」
「流石に神器で殴ったりしないわよ…多分。」
変なところで素直なアデリナは絶対にしないとは言えなかったらしい。流石、メイス一本で蟻の大群と戦った女である。
終わったと一同が少し気を抜きかけたその時。
「続いて、スレイハーツ前へ。」
「お前もか!」
「マサル…ツッコミは後にして頂戴。」
度重なるツッコミによる妨害にビクティニアスも苦笑している。スレイはその中、何が起きてるのか良く分からないまま祭壇まで出てくる。
「バゼラールカには王位継承者が現在3名しかおらず、1人はまだ1歳、1人は先日継承権を放棄しました。よって貴方を次期国王とし、スレイハーツ・バラド・バゼラールカの名を与えます。」
「え?え?なん………えっ?」
「神々の御前だぞ?」
「………お前が言ぅ…………いや、拝命致します。」
何とか反応出来たスレイは未だに何が起きてるのかちゃんと理解していないのか、視線が定まっていない。バゼラールカ王国の重鎮たちもあまりの事に呆然としている。
「という訳で、先代のバゼラールカ王の使っていた神器の王冠は修理しといたから。」
「え?何でここにそれが………っていうか何でマサルが持って!!?………いや、ありがとう。ちゃんと王は弔われたって事だな?」
「あぁ、まあそういう事になるかな。」
「では、もう良いですか?跪いて下さい。」
跪いたスレイの頭にも冠が授けられる。細身で優美な軽量化と称した緻密な飾り彫りがされているヴィンターリアの王冠とは対象的に、大きく豪華で重いのが特徴だ。
「では、皆さま外に出て御披露目にしましょうか。」
「アクシオンと奥様、子供さんは一緒に神殿2階のバルコニーへ。他の皆さまは外の皆さまに合流して下さい。」
外へ出ていく皆を見送った後、突然スレイが怒りだす。
「何で急に………オレなんだ!」
「ん?あぁ、お前しか居ないからな。それに放っておいたらもう1人の王位継承者の爺さんは殺されて替え玉用意されるって言うからアイラに行って貰って継承権放棄させて、1歳の子供の方も10歳までは神とお前の保護下にあるとさせて貰った。
因みにバゼラールカ本国にはバッチリ爺さん暗殺しようとしてた話も、スレイが王位継承する話も、1歳の子についても全部バラした。暗殺未遂犯たちは拘束されている様だよ?」
既に厄介事と大量の仕事がのし掛かっている現実に頭を抱えるスレイ。
「いい加減にしなさい、もう分かっているんでしょ?貴方は国を支える立場にある、そしてそれをポータリィムに預けられた時点で受け入れて、それに向けて色々な事を学んで来たんじゃないの?もう後には引けないんだからしっかり前を向きなさい!」
アデリナの叱責に言葉が詰まるスレイ……。
「それはそうだけど………今日の事は事前に教えてくれても良いじゃないか………。」
「あぁ、朝のうちに話しておこうと思ったけど例の騒ぎで俺が意識失ってたから!」
と、さらっと嘘を吐くマサルに今朝の魔獣騒動の事を聞いているスレイは意図も容易く納得してしまう。
「………それなら仕方ないな。魔獣が相手だもんな。」
打ち合わせで内緒にしておいて驚かせてやろうぜ!と言っていたのを知っている3柱は笑うのを必死に堪えている。それを悟ってマサルは皆を急がす。
「ほら、みんな!バルコニーに急ぐぞ!民たちが待っている!」
バルコニーから現れた3柱と3国の代表者+オマケ(マサル)の姿にヴィンターリアの街は大きな歓声と共に震えたのだった。
久しぶりにロードバイクに乗った話をします。ロードバイクって何やって人に簡単に言うとツール・ド・フランスとかみたいに街中を走る事に特化した軽くて(良い物は女性でも片手で持てるくらい)効率的で機械的に完成された最高の自転車です。
ああいった自転車は構造的には完結されているとさえ言われていて既に材料くらいしか進化させるところがないとさえ言われているんですけど…それに久しぶりに乗りました。
………そして転けました。
本気で回して知人のスクーターに付いて走る事25分…足がひきつけて下り坂でスリップ…15mくらいぶっ飛びました。
安心して下さい!無傷ですよ!………私は…ペダルはガリガリ削れて磨り減ってました(←借り物)
自転車は道路交通法を守り無理のない範囲で楽しみましょう…良い物は高いですし、スピード出ると危ないですからね。
息を止めて下り坂でコーナーを曲がるのが私的にはスリリングで好きです…ズリズリとタイヤが滑るのを感じながら走るのです。チビリそうなくらい怖いですけどね。




