【side story】ルルさんとアデリナと
「マサル、準備手伝うから急ぎましょう!」
「おにいちゃん、はやく!」
アデリナとメイに引っ張られて神殿へ駆け込むと何やらたくさんの奥様方が救援に来てくれていた。
「すいません忙しいのに………お昼ご飯の準備は大丈夫ですか?」
「えぇ、料理人の人達も頑張ってくれましたので。」
「おかあさんっ!」
「じゃあ、ルルさんたちにもお手伝いお願いしますね。燭台を磨いて仕分けして貰えますか?」
と言い出した燭台の数517…。
「何でこんなに燭台があるの………じゃない!必要なのだけ出しなさいよ!神殿の中が燭台だらけじゃないの!転けたら刺さっちゃうわよ!燭台に刺さって死ぬとか斬新過ぎるわっ!」
「おねえちゃんこわい………。」
「どうしたアデリナ?ストレスか?情緒不安定か?それとも………。」
「良いから、マサルさんは余分な燭台片付けて下さい。アデリナさんも少し落ち着いて下さい、イライラは良い仕事の大敵ですよ。あ、マサルさんはティーセットも出しといて下さいね?」
ルルさんに怒られてメイちゃんに手伝って貰いながら燭台をしまっていく。勿論、ティーセットも出してお湯を沸かす準備も素早く行う。
「はい、アデリナさん、ちょっと一息ついて下さいな。皆さんもお茶にしましょう。」
「え?でも、時間が………。」
「ふぅ………お茶が美味しい。」
「おいちいのっ!」
「マサルは寛ぎ過ぎだと思うわよ?」
焦るアデリナをよそ目に、一気にまったりムードでお茶しだしたマサルとメイに逆に冷静さを見付ける。
「なんか慌ててる私が馬鹿みたいね…。」
「アデリナさんもマサルさんも働き過ぎですよ。責任もあるのは分かりますが、あんまり追い込まれて仕事したり、仕事し過ぎて身体壊してたら意味ないんですよ。」
「そうね…マサルはぶっ倒れた後だし、無理させ過ぎたら駄目よね。」
「そうね。で、マサルさん?あの燭台はどうしたのかしら?」
「あぁ、あれはバゼラールカの王都で手に入れたものやレイザード砦で手に入れたのかな。暇を見付けて一応、修理はしてたんだけど磨くのまでは手がまわらなくて……。」
「手に入れたって………そこは置いとくとして、あれ全部修理したの?」
「そりゃあ………まだまだ色々あるけど、ガラクタにしてしまうのは勿体無いだろ?」
「勿体無いって………他にも何かまだしてるの?」
「街にあるものは一通りあるかな…全部修理中か、修理待ちだな………。取り敢えずは使うから燭台や椅子、机なんかは優先して直したけど全然時間が足りないな。」
「マサルは何か好きな事して適当に生きてると思ったけど、自分がどれ程足りてないか思い知らされたわ………。
「「「マネすると死ぬぞ?(死ぬわよ?)(しんじゃうよ?)」」」
マサルとルルとメイの声が絶妙にハモる。実際、普通じゃない体質で、普通じゃないスキル持って、普通じゃないレベルやステータスだからこそ出来る芸当で一般の人に同じ事をさせたら過労死確定だろう。
「じゃあ、俺は絨毯ひくのに椅子や机が邪魔だから片付けてくるよ。」
「メイもてつだう!」
「アイテムボックスの中に全部しまってしまうから大丈夫だよ。隣を歩いて触るだけだからね。」
「便利ねぇ………そういえば蝋燭は?」
「馬の魔獣の油から丁寧に作った特別性がここに………そういえば亀は!!どうなった!?」
「ちゃんとマサルが倒したわよ………石牢の前にあるから回収しちゃって。」
「行ってくる!絨毯ここに置いて行くんで宜しくお願いします!」
「メイもいく〜っ!」
「よし、メイ隊員!背中に乗れ!行くぞ!落ちるなよ!」
「あいあいさぁ〜♪」
静止する間も与えずコントまで挟んで出ていった師弟コンビを微笑ましく見送る奥様方。
「アデリナさん。貴女は今日から女王様なんでしょう?これからは上手く仕事を振り分けられる様にならないと困るわよ?いつまでもマサルがずっといるとは思わない様にね。」
意味深に微笑むルルの言葉はアデリナの心に深く突き刺さったのだった。
結局、冷静に第三者目線で見ているルルお母さんには誰も勝てないのです。
何処の世界でも男の方が偉そうにしたりしてますが、最終的に女性には頭が上がらないのが人って生き物なのですよ。
そして、上司が何でもやっちゃう組織は良い組織ではありません。たまに上司がいなくてちょうど良いくらいの組織が多分一番良いのです…世の中の上司の殆どはずっといなくて良いとか言われてるけど大変なのですよ!(なんのこっちゃ)




