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前夜祭 2〜レギュレーションチェック

「では、レギュレーションチェックを始めるよ〜みんな並んで〜!」


ゼラフィティスの言葉にヴィンターリアに住む子供たちは自分の船を大事そうに抱えて列に並ぶ。


「えっ?なんでまたゼラフィティス様がその様な事を?マサルはどうしたんです?マサルは?」


「あぁ、彼も一緒にレースに出るらしいから中立って事で審判と船体の確認を頼まれたんだよ。」


既に馴染みつつあるゼラフィティスに頭を抱えるアデリナ。


「何かお手伝い出来る事はありますか?」


「じゃあ、レギュレーションチェックのお手伝いを宜しくお願いね。この直径50cmの筒に船と水を入れて水平になった時にこの蓋に触れずに閉まれば合格だから。船の出し入れは出場者が責任を持って自分でやるけど、水の増減は必要かもね。」


「水の増減ですか?どういう事でしょう?」


「まぁ、見ていれば分かるよ。じゃあ、確認が終わった船はこの動力のパイプを付けたら台に置いて、大会始まるまでは触っちゃ駄目だよ。」


大半の子供たちはマサルの作った玩具の船を参考にしている為、無難な手漕ぎボートの形をした船が多い。ルールでは動力は魔道具のパイプだけと決められている為に帆を付けるのも違反になる為、確認用の筒には半分くらい水を入れてそこに浮かべても余裕でレギュレーションチェックに通過する船ばかりだ。


「メイです。おねがいします!」


メイが持って来たのは例の金魚型、何度も調整を重ねて磨きあげたそのフォルムは魚そのもののようでもあり、とても可愛くて独創的だ。


「もうちょっと水を入れてください。」


「えっ?水を増やせば良いの?どれくらい?」


「えっと、このくらいまで?おねがいします。」


水の量を3/4くらい迄増やして貰った中にメイは抱えていたお魚さん号を入れる。背鰭だけを水の外に出して少しお尻が沈んだ体制で浮かんでいる。


「えっと、この頭より尾びれの方が沈んでいるのは何でだい?」


「それはっ、このおしりのとこにまどーぐをつけておよぐと、およいでいるときにまっすぐなるの!」


ゼラフィティス意外の全員がどういう事?と頭を傾げる。


「つまり、メイは魔道具のパイプを付けて泳いでいる姿こそが完成品だと理解してバランスの調整をしっかりしているって事だ。まぁ、普通の船の形ならこんな独特の工夫は要らないだろうけどね。」


つまり水を排出する力と進む時にかかる水圧まで考えて何度も調整してあるのだ。船が進んでいる時に一番安定する調整というのはとても大事な考え方なのである。


「ちょっと技術的には他の子供たちより頭何個か飛び抜けているね…。末恐ろしいよ。」


ゼラフィティスが苦笑いする横で、アデリナはとりあえず大丈夫なのね?と魔道具をメイに渡す。


「あとは………彼だね。ほらマサル、そんな所で観察してないでレギュレーションチェックしなよ!」


「おっ、見つかってたか?どうだい?愛弟子の船は可愛いかっただろ?」


「メイちゃんだね、あれは君が考えたんじゃないだろうね?ちょっと安定感と技術力が違う気がするよ?」


「あれは間違いなくメイが考えて作ったお魚さん号だよ?ちゃんと他の子供たちと同じ様に教えて欲しいとか手伝って欲しいと言われたら同じ様には手を貸したけどね。発想力とそれを実現する力はメイの持っている才能だと思うよ?」


「くっ、あんな愛弟子が欲しい…。」


どこまでもメイちゃん好きに溢れ始めているゼラフィティスに少し危険性をマサルは感じ始めている…どうか思い過ごしであって欲しい。


「で、俺のレギュレーションチェックも頼むよ。水は満タンで!」


「は?満タンって船なんでしょ?」


「ほらほら、早く水を入れて♪」


水がほぼ満タンまで入った筒にマサルは自分の船を入れる。すると沈んでいった船体は筒の中間でピタリと浮かび、水面にも底にも触れる事無く安定してしまった。


「えっ?どうなってるの?途中で浮いているわよ!?」


「これはメイの船の進化系だな。」


「おにいちゃんしゅごいの〜っ!」


皆の驚く姿にマサルは満足感を露にしながら船を回収する。メイなんかは視線がキラキラとしていて、尊敬と興味の眼差しでマサルの船体に釘付けだ。


「その船の形は………?」


「あぁ、ハンマーヘッドシャークって言って鮫の形を模して作ってあるんだ。この頭の横に突き出た所で進む時に水深を潜らず、浮かばずに安定させて、もし万が一曲がった時には壁に当たっても向きを進むべき方向に直す様に小さなローラーがついている。」


「しかも完全に水面から離れているから他の船との接触がないから安心して進めるって訳だね…大人気ないなぁ。」


本気で大人気ない行動にドン引きしてしまうゼラフィティス。


「ちゃんとお手本や目標になるのも大人の役割だと思わないかね?ゼラフィティス君?」


「良い事言ってみせてもマサルは自分が楽しみたいだけにしか見えないわよ?あとゼラフィティス様でしょ!」


調子に乗ったマサルに拳骨をいれて怒るアデリナ。


「じゃあ、本番の用意しよっか…大人たちも待っているからね。」


始まったコントを止めて準備を促すゼラフィティス…大会本番はまだこれからなのだ。

マサルの大人気なさはデフォですね。

誰が相手でも手加減も容赦もあまりしません。



感想返し最近出来てませんが、全部読んでますよ〜もうちょっとお待ち下さい。可能な限り時間がかかっても全部お返事したいと思ってますので。

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