竜巻や嵐の方がマシです。
自称シュタッテット王国が存在するレイザード砦 の後方、山中にマサルとランスロットは潜伏している…2人は車で全速力で近くまで来て偵察をしていたのだ。
「砦の中には野郎共ばかりで、女性や奴隷は外の掘っ建て小屋で生活しているそうだ…夜に何人かが砦の中へ連れていかれる以外ではメンバー以外は砦には入る事を禁止しているらしいな。」
「何処までのクズなんだ!マサル、さっさと殲滅するぞ!」
「まぁ待てよ。このまま襲ったら逃げられるだろ…こっちは2人なんだぞ…。」
「お前がオレだけを連れて来たんだろ!」
「だから、頭を使って行こうって言ってるんだ。砦の入り口は3ヶ所で、隠し通路の出口はもう崩落させてあるから2ヶ所の入り口を岩で塞いでランスロットが入ったらそこも塞いでしまおう。」
「………それでマサルは?」
「3階の窓からでも何処からでも入るけど?」
「………………。」
他の人はランスロットも含めて砦という構造上、入り口を重い岩で塞げば誰も出る事はかなわない。飛び降りて死んだり動けなくなるリスクをおかさなければだが………大抵の場合は他人の命を軽視する輩に限って自分の命を賭ける様なマネはしない。
「じゃあ、作戦開始だ。」
「ちょっとマサル!作戦って何だ!?聞いてないぞ!」
「………だから出入口を塞いで中の輩に痛い思いをして貰おうって感じだ。じゃあ、入り口を塞いでいくな。」
正門以外の入り口を一辺が2mを超える立方体の岩を置いていき、外の見張りを静かに黙らせた後に不安そうなランスロットを正門へと連行する。
「本当に大丈夫なんだろうな?マサルがそのまま置いてきぼりにしたりしたら出れないんだが…。」
「そんな酷い事を俺がする訳ないだろ!だいたい言われるまでそんな面白そうな案浮かばなかったわ!」
「えっ?面白そうって…。」
「良いから入れ!大剣は建物内じゃあ使いにくいから、こっちのバックラーとメイスな!じゃあな!」
戸惑うランスロットを正門側の入り口から武具ごと蹴り入れ外から岩で塞ぐ。この間、ランスロットが反論する暇さえ与えない早業である。
「じゃあ、俺はグレイタス王国の部隊呼んで周囲を制圧するかな。」
マサルは、ランスロットに伝えて無かった奴隷や一般人の確保を優先させるべく動きだした。
………1時間後。
「まだ2階でウロウロ戦っているのか…ランスロットめ…仕事が遅いな。」
外で呟くマサルに、グレイタス王国の兵士たちはドン引きである。先程、ランスロット単独で中の制圧に閉じ込めた事を話したばかりなのだ。
「じゃあ兵士の皆さん、俺も仕事して来ますんで…もう少し待機しておいて下さい!」
クルリと踵を返し兵士たちに背を向けるマサル。
「5階建て…面倒だな。………大気操作!そして秘技!小麦粉粉塵爆破!」
チュドーーーーーーーーッン!!
「よし、スッキリした!」
4階と5階がスッキリ無くなった砦に、兵士たちがガクガクブルブルと震えているのに見向きもせず、鉤爪付きのロープで3階の窓からあっさり侵入するマサル。
「はろーっ♪シュタッテット王国?の皆さん。鬼さんの追加ですよー♪」
風の魔法の応用で作った拡声の魔法で砦内部に呼びかけるマサル。
「捕まったらグレイタス王国の犯罪奴隷、鉱山採掘ツアーに抽選無しでご招待しますよ〜♪みんな頑張れ〜♪」
鉄鞭片手を振り回しながらピクニックの様な足取りで内部の徘徊を始める。
「尚、隠れるのはオススメしませんよ〜♪探索して見付からなかった場合は建物ごと後で瓦礫に埋もれてしまいますので一生懸命抵抗して下さいませ〜♪」
警告が響き渡る中で遠くから何かが聴こえる。
「マサルのバッキャロ〜〜〜〜〜ウッ!殺す気かぁぁぁぁあぁぁっ!」
前後に4人ずつに囲まれ戦闘していた最中に、マサルの魔法の衝撃で倒れてきた棚に押し潰されそうになった挙げ句そこを追撃されていたランスロットの悲痛な叫びが建物に響き渡る。
「元気そうで何よりだな♪」
しかし、マサルは全然気にしてなかった。それどころかその辺りにある目につく全てをアイテムボックスに収納し………俗に言うパクっていく作業に夢中だ。
「ふんふんふ〜ん♪」
上機嫌でスキップしながら物色を繰り返しているマサルだが、拡声の魔法で声を響かせたせいで何処にいるのか誰にも把握されてない。既に火事場泥棒の様な有り様である。
………マサルが侵入して1時間。
やっと静かになった砦の内部から入り口の扉を外して出てきたマサルたちの姿に安堵した兵士たちは、猿ぐつわに後ろ手に拘束を受けている内部の人間を出すのに大忙しとなる。
「ふん、オレは246人を倒したぜ!マサルは?」
「あぁ、13人かな?」
「貴様っ!何をしていた!?」
「俺は爆破まで外で一般人や奴隷を兵士と一緒に助け出していたんだ。大事な仕事だろ?」
「………おぅ…大事だな。」
ランスロットは優秀で人間味のある素敵な指揮官なのだ。何が大事で優先させるのかは分かっている………頭では。
「爆破してからはどうしていた?かなり時間があったと思うけど…まさかそこの扉の様に…。」
勿論、出てきた時に外した扉は回収済みだ。
「待て!ランスロット!これには大変な理由があるんだ!俺だって暴れたかった…しかしだな、ゼラフィティスから後々に遺恨を残してはいけないと言われていたんだ…つまり、この砦は放置しておけない!」
勿論、出任せである。
「つまり後々、ここにまた野盗などが住み着く様な事がない様にという事か?」
「そう!その通り!」
………優秀な指揮官なのである?
「で、どうするつもりだ?」
「こうするつもりだ………みんな外に出たな?兵士諸君、点呼したかね?よしよし…という事で爆破!」
チュドーーーーーーーーッン!!!
もう慣れたもので、建物は内側に崩壊して外に影響が最低限しか起きない爆破解体をしてみせるマサル。勿論、財産となりうる物は机や椅子に至るまで全て回収済みであり、瓦礫も殆ど回収である。
こうして2度の爆破に巻き込まれた数名を除けば全員を確保し終えたマサルたちはスッキリした顔をしてシュタッテット王国を自称していた平地となった土地を後にした。
「コイツらをオレたちは輸送しないといけないんだな…。」
すっかり心の折れた囚人たちと保護した一般人を連れて、1番近い大きな都市ポータリィムへと向かう一同。
因みに…野郎どもの洗濯して干してあった紐パンが、囚人たちの口の中から猿ぐつわの布として出てきたのを見て、決してマサルやランスロットに逆らってはいけないと心に決めた兵士は少なくなかった。
バレンタインの日に男たちに何て物を食べさせる!?
マサルは都市や砦の解体屋になりつつありますね。
瓦礫だって使いさえすればお宝の山なのです。
次回予告「よく吠える犬は泣く」です。
いやはや何をされるんでしょう…犬とは???
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今日は呼び出しが2件ある様です。
以前お話した中学生の女の子と、あとは知人のチョコを食べながらシャンパンを飲む会です。チョコを持ち寄りシャンパンと共にキャッキャッと言う謎の会なのです。




