金になる木
「兄ちゃん、変な虫捕まえたよ〜!」
「おっ、カブトムシじゃん♪ここにもいるのかぁ…んっ?何かコイツ重いな…なぁ、ジータコイツ何処にいた?」
「今朝、家の前の苗木にくっついてたんだ。」
「…なぁ、コイツ貰ってもいいかな?」
「兄ちゃん飼うの?」
「………いや、悪いけど何か引っかかってな…素材にならないかなと…。」
子供が捕まえたカブトムシを素材の為に殺すとはなかなかの鬼畜の所業で、流石にマサルも罪悪感が半端ない。
「兄ちゃんが欲しいならあげるよ!その代わりメイの船作りちょっと見てやってくれない?」
「船作り?なんだか分からんが分かった。何時でも出張サービスするからコイツは貰うな。」
そう言って謎のカブトムシを貰う。メタリックブルーに鈍く光るカブトムシは地球で見たカブトムシと比べてみてもかなり力強い。
「何かホームセンターで何故かヘラクレスオオカブト売ってたなぁ…何か妙にちっこいヤツ。」
田舎のホームセンターではメダカや金魚といった淡水魚だけではなく、何故か夏はカブトムシやクワガタ、秋はコオロギや鈴虫を売っている所もある。凄い所はアロアナや亀など謎のラインナップをしている所もあるのだ。
「えっと…叩き潰すのは流石に精神衛生上よろしくないから…大気操作で窒息させて……………ごめんなさい。」
狩りなどは流石に慣れたが、作業台で虫を冷静に殺すのはちょっと精神に堪えた。
「………で、鑑定っと。」
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【アダマンタイト甲虫♂】
体内でアダマンタイトを持って産まれる昆虫。大きさは成虫となった時に決まり、以降成長しない。広い地域でかなりの数が分布しているがあまり死骸が発見される事もない。♀はミスリルを体内に持つ。
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「何で虫が金属を体内に…って、ちょっと待て!コイツ増やしたら凄い特産品になるじゃねぇか!」
大人はこういう時になかなか汚いのである。金になると思えばその為に生き物だって増やそうとしたりするのも当たり前なのだ。
「ジータ!ジータ!?もういないか?」
「んっ?まだいるよ?…何かあったの?」
「子供たちを集めろ!コイツをまだまだ探すんだ………んっ?待てよ…コイツはカブトムシなんだから…腐葉土やワームの糞がいっぱい置いてある小屋があるだろ?その辺りから探してくれ!」
「そこにいるの?」
「おぅ、兄ちゃんの勘があたっているならな!」
牧場の動物の糞や藁を山積みにしている堆肥の中でカブトムシを繁殖させているのを昔テレビで見たことを思い出したのだ。あの時はウジャウジャいてカブトムシも大量にいるとこんなに気持ち悪いのかという印象しかなかったのだが。
「お願いします!いて下さい!」
子供たちと小学校の体育館くらいのサイズの広大な堆肥小屋へと向かう。
「………うわ、やっぱり気持ち悪いな。」
大量のカブトムシが堆肥の中からモコモコ土を動かしながら出てきていた。悪夢を見そうな光景である。
「みんなその虫を捕まえてこの箱の中に集めてくれ!出来るだけ沢山頼むぞ!」
マサルは大きな木箱に大気操作でトドメをさしながら、入れる時に逃げない様にフォローしていく…実際は大量のカブトムシに少し怖じ気付いているのは内緒だ。
「昔は虫も平気だったのになぁ…大人になるってこういう事なんかな…。」
そんなマサルの呟きは誰にも聞こえない。その日、マサルと子供たちは永遠とカブトムシを収集し続けたのだった。その数実に20万匹超となっていた。
夕飯時になって揃ってぐったりしている子供たちを見て、何をしていたのかを聞いた1人の母親が、子供に指差されて覗いた大量の木箱の中を見た後、この世の最後の様な悲鳴をあげたのは仕方ないだろう。
最初こそ、大量の虫を捕まえて殺している事に忌避感情を見せる親たちであったが、その目的を話すと仕方ないわねと急に意見を変えたのだった。
それは何より金になり、子供に止めろと言うなら代わりに虫を集める人が必要になるであろう案件なのは、誰の目にも明らかだったのだ。
要は自分たちに白羽の矢が飛んでくるのを恐れたのである。そう大人は勝手な生き物なのだ。
「これで、ヴィンターリアにも少しは金属の獲得ルートが出来たわね…。」
「いやいや、物が物だけに日用品に向かないから…取り敢えずは鉄と銅なんかの産出場所の調査は必須だからな。」
喜ぶアデリナを現実に戻してあげたのはザーグで2人何とかしてランスロットに認めて貰う為に一緒に頑張っていた。
きっとマサルが大量消費してしまうであろう事をまだ考慮に入れてないアデリナ、ザーグ夫妻はまだまだ半人前なのです(笑)




