発展と教育と…。
「まぁ、すぐに経済の発展とか生活を変えるのは難しいだろ?だから一応の提案はあるんだ。」
「提案?それは助かるが何か効果的に人を変える魔法みたいなモノ…神じゃないよな?」
「あぁ、流石に違うよ。むしろ神の力でやると貴族の駆逐とかになりそうで怖いな…ちょっと面白そうだけど。」
「やめてくれ………国が崩壊する。」
マサルとアクシオンのコントにアデリナは他人事の様にクスクス笑っている。
「今のヴィンターリアには希望者に魔法を使う為の基礎段階の知識や人の身体の仕組みとかを学べる講義が希望者には受けられる制度があるんだ。…と言ってもそれとは別に子供たちは文字や計算を学ぶ事が必須になっている。それの延長で、留学制度を作ってみたらどうかなと思っているんだ。」
「留学?つまりはどういう事だ?」
「まずは新しい知識や新しい技術を学ぶ為にヴィンターリアに学習を目的とした滞在をして貰うって事だな。」
「やはり料金は高いのだろう?」
アクシオンの不安気な表情に、税金やお金の事で追い詰め過ぎたかと少しだけ反省するマサル。
「いや、そこは格安でいこう。今の教育は将来への先行投資と割り切ろうじゃないか。細かい調整はまたどんな講義をするかとか色々と決めないといけないから後回しにするとして…大事なのは、今のグレイタス王国とヴィンターリアの生活水準の違いを感じて貰う事にある。」
「あっ………。」
アデリナはやはり言いたい事に気付いて渋い顔になる。
「俺やアデリナからするとグレイタス王国の王都の平均的な生活レベルは………アデリナから言うか?一応、元々グレイタス王国の民なんだろ?」
「そこでわたしに話をふる?まったく酷い人ね………ヴィンターリアに慣れると今のグレイタス王国の王都は汚くて、華やかさがなくて…何というか貧相?それに民は貧しいし、あんまり笑っている人がいないわね。」
「躊躇いながらボロクソだな…俺もそこまで言う気は無かったんだが…。」
「ちょっと!言わせておいてそれは無いでしょ!」
「いや、続けてくれ。」
マサルとアデリナの指摘に、グレイタス王国が何か間違っていたのではないか?そんな思いを抱えながら話の先を促す。
「魔物のいる地を切り開いて生きるんだから軍事に力を入れるのは分かる。だからこそ俺は逆に生活の為の技術の発展が最優先されなければならないと思っている。」
「しかし、人の余裕が無いぞ?」
「それなんだよ。軍やその産業に人が必要なら他の職業には楽で人が少なくてすむ技術がなければいけないんじゃないか?食べる事は人が生きる為の基本だし、その産業を蔑ろにすると人口が増えたり、軍の活動で食料不足となるんじゃないか?そういう時に軍を優先するとどうなると考えた事があるか?力の無い農民は反乱を起こさないとでも?」
「「…………………………………。」」
現在の国の構造事態を否定された様で、アデリナとアクシオンがお通夜の様な雰囲気になってきた。
「という事で農民がまず豊かになるにはだが…まず、税の調整。本当にその税で適切なのか?商人は適正な商売をしているのか?立場の強さに託つけて弱者から搾取していないか?税を払って貰っている以上ちゃんと有事には動けるのか?など様々な考えなければならない事案があるのだが。」
「ちょっと待て!今は農民を豊かにするという話ばかりではないか。他の職業の者はどうするんだ?」
「逆に農民が豊かになればどうなると思う?お金があれば溜め込むか?」
「どうなると言われてもな…農民の暮らしが儂には分からぬ。」
ぐぬぬと顔をしかめるアクシオン。
「農民は自分たちが一生懸命に城壁の外で育てた穀物を税を納めたり、お金にする為に殆ど取られて、お腹いっぱいパンを食べたり出来ないの。一番硬い黒パン1つを具なんて殆ど無い薄いスープでふやかしながら食べるの。」
「病気や戦死を除いた時に平均寿命が明らかに低いのも農民だけだ。これは食生活もそうだが、まともに金銭が得られない為に医者などにかかれないのが原因だ。因みに、農民だというのを理由に医者に診て貰えないという事例もある。」
「………まさか、その様な事が………。」
アクシオンは本当に農民の生活の実体を知らなかったらしく顔色がどん底だ。
「で、そんな農民が豊かになるとだな…まず食べ物を買う。楽な作業をする為に道具を買う。そういう物が揃ってくると農地を広げようとする。………つまり、食べ物や道具を作る工房や販売する商店にお金が入り、その人達も潤う。つまり、職人的や商人だな。土地の開発が進むと護衛などが必要になり、そういう人たちも潤う…勿論、その時には土建屋に話が行く事もあるだろう。作物が増えれば運搬業の人も潤うし、そういった人が潤うという事は最終的に税金が増えるんだ。」
「なるほど…広い層にお金が回るわね。」
「そうだな…逆に上が潤っても一部の商人や貴族が総取りなのが現状さ。他に使うところが無いし、工夫しなくても同じ様に金がくるから新しい技術を必要としない。」
「考え方や技術の停滞も起こしているのか…。」
アデリナもアクシオンも人の上に立つには珍しい程に人柄が良いし、人の意見を聞き入れる体質をしている…だが、
「ただ知らなかった………が許される立場では許されないもんな王様は。」
マサルの放った特大の釘は深くアデリナとアクシオンの胸に突き刺さる。
「まぁ、そういうのも含めて教育や研修制度、技術開発、人材派遣業務をヴィンターリアで始めてみるから宜しくって感じでまとめかな。」
「はぁ…最後は宣伝なのね?」
「うん、宣伝だね。必要性を説いてお客さんに来て貰わなくっちゃ。」
「くそっ…最後の最後でありがたみも何も全て吹き飛ばされたぞ…。」
結局、最後は適度に弛んだ空気で会談は終わるのであった。
149部の続きですね。
もう少しだけ踏み込んだ話をしてみました…というかこっちの話をしようとして脱線したのが149部だったりします。
今日はたい焼きを買いました!
寒い日には美味しいですよねぇ〜♪
まずは焼きたてのを背鰭の部分からパクりと咥えて、そのまま車の運転…少しずつ崩れていくたい焼きを少しずつ咥え直しながらドライブ…最終的には運転中に足下にポトリ。
悲しみに暮れながら祖母の家の庭でたい焼きを片付けようとすると、野生のタヌキが!そっと地面に置いて下がると美味しそうに食べ始めたので、わたしも残ったたい焼きを出し外で一緒に食べました。タヌキってたい焼きも食べるんだね。