【150話記念】メイちゃんの野望
「ここをこうして………?………ちがうなぁ?」
グレイタス王国でマサルが混沌とした会議をしていた頃、ヴィンターリアの神殿のマサルの私室では何者かが机上で作業を繰り返ししていた。
「メイ!またお前は!兄ちゃんの部屋を勝手に使ったら怒られるぞ!」
「おにいちゃんは怒らないもん!」
「………で、何やってんだ?」
「おにいちゃんの作ったお船をみてメイも作ってるの!」
お船というのは温泉を子供たちに喜んで貰う為に作った玩具で、お湯の中の魔力に反応して船底に付いた管の中をお湯が流れる事でその反動から少しずつ前に進む魔道具である。
「で、出来たのか?」
「うんとね、おにいちゃんのマネしたけどお船さん動かないの…。」
それも当然、マサルは玩具にも搭載したが元々はお湯を高所にも自動で汲み上げる為にゼラフィティスと共同運航で作り上げた力作なのだ。そもそも魔力的な媒体として効果的なミスリルをメッキした管に細工を施すことで出来た芸当であり、子供の工作では決して成功しないのだ。
「メイ、見せてみろ………この船の底の穴の中が何か光ってるぞ?見てみろよ。」
「ほんとだ。にぃに、これミスリルだよ?」
「うげっ!ミスリルなんておれたちじゃ無理だぞ?」
「にぃに、どこかにないかない?」
「兄ちゃんの事だから何個か作ったりしてそうだけど…机の中見てみたか?」
「ううん、まだ。見てみるね。」
机の引き出しを兄妹で分担で中を確認していく。
「おっ、あったぞ!多分これだ!」
「にぃに、にぃに!これ見て!………綺麗な女性。」
「うおっ!ホントだ!兎人族の人かな?」
それは女神ヘラからこっそり貰ったビクティニアスのバニー姿の写真だ。ビクティニアスたちと私室の中は見ないという協定を結んだマサルはこの写真を私室の机の中にこっそり隠していたのだった。無論、アイテムボックスでの物のやり取りに使われた時の発覚を恐れての事だ。
「これじゃあ、アデリナ姉ちゃんは勝ち目無いよな…。」
「おねぇちゃんかわいそうなの…。」
結婚まで話に出ているとは露知らず幼子に同情されるアデリナ。比較対象が女神とは言え哀れである。
「メイ、ちゃんとその絵元に戻しとけよ。」
「にぃに、分かった。お船作る。」
「おぅ、これが多分そうだ。ちょっと待ってろよ、お風呂行ってあってるか確かめてくるから!」
「あい!」
元気よく返事するメイと、駆け出していくジータ。
「そうだ!これつけたらお船が泳ぐならお魚さんの形にしよう!」
こうしてヴィンターリアに新たなる娯楽が生まれていく。後に国認定のレースとなるミニボートレースである。規定の魔道具の管を使っての玩具の船のレースは、潜水タイプや生き物を模した様々な姿で見るモノを楽しませ、虜にしていったのである。
「おにいちゃんをびっくりさせて、メイもしょーらい王さまになるのっ!」
その夜、その話をすると「王様は遊ぶ時間もなさそうね」という母ルルの言葉にメイの野望はあっさり崩れ去ったとさ………。
遂に150話ですよ!10月6日に始めたこのお話、まだ4ヶ月…長かった様な短かったような…。
最近は、スマホでこうして毎日新話を書くのが当たり前になってきていて日常になりつつありますが、意外と新しい話を毎日考えるというのは重労働で挫けそうな時もあります…今もスマホの使いすぎで少し腱鞘炎気味で手が痛かったりします。
でも、皆様が毎日の様に読んで下さって面白いですよと言って下さる限り私もきっと楽しんでやれると思いますので今後とも応援宜しくお願いします。
追伸:150話のお祝いに皆してレビュー書いてくれてもええんやで?(笑)あ、後書きが面白いじゃなく、本編を誉めるんやで!?