【side story】とある貴族お嬢様の…。
とある貴族邸の一室にて…。
「お嬢様、ザーグ様がお戻りになられました。一兵も欠ける事無く堂々の凱旋だったそうです。」
「そう、セバス。で、あの婚約者とやらはいつわたくしに会いに来るのかしら?」
「本日は王への謁見と報告の業務にお忙しくしてらっしゃいますので、早くて明日かと…。」
「そう、またあの婚約者とやらは昇進するのかしら…わたくしに釣り合いが取れる程度にはなって貰わないと困るのですけど?」
「はい、今の時点では騎士団の将軍位に最も近いと噂されております。」
「精々、わたくしの為に稼いで何処かで亡くなって頂ければ嬉しいのですけどね。ままならないわ。」
「お嬢様、ご冗談でもその様な事は………。」
「わかっているわよセバス、もう良いわ行きなさい。」
セバスと呼ばれた老齢な執事服は小さくお辞儀してから、物音1つたてず部屋を後にする。
「まったく、戻ったら真っ先にわたくしに挨拶に来るのが婚約者としての責務でしょうに!」
いつの事だったか、宰相の3番目の弟である父から婚約者を言い渡されたのは。それは騎士団の騎兵部隊の男で将来有望だと言われていて鋭い目が好きになれなかった。実力は指折りらしいのだが何せ貧乏騎士なのが気に入らない。しかし、彼はすぐ様にその実力で一角の魔獣の捜索の任に就いた。
「大きな部隊がいても、たくさん死者が出たんでしょ?しかも命からがら逃げ出したらしいじゃない…そんなのを3人で探しに行かされるなんて生きて帰るわけないわね!」
そう思っていたのだが彼は生きて帰ってきた。一角の魔獣の亡骸と共に…そして彼は王の近くで働く様になり、あっという間に外国の緊急支援部隊の長として出兵する様になった。
「今度こそ生きて帰って来ないわね!何せバゼラールカの王都を壊滅させた恐ろしい魔物の討伐に行くんでしょ?」
しかし、またしても彼は帰って来た。しかも、一兵も死なせずにという快挙の実績を叩き出しての帰還だ。
「仕方ありませんわね。あの男を婚約者として認めましょうか…前回帰ってからはあの男も何だかんだで柔らかい雰囲気になって、きっとわたくしの魅力に気付いて接する様になったのだし…。」
ザーグに興味がなかったお嬢様には、家族のゴタゴタが片付いただけとは知る由もない。
「お嬢様!大変で御座います!」
「何よ!?セバスらしくない、大きな声で…。」
バタバタと足音を立てて慌てて部屋にノックもせず入ってきた執事にドン引きである。
「お嬢様とザーグ様のご婚約が解消されました。」
「ぇっ!!ど…どういう事?」
「ザーグ様は別の方との結婚が決まりました。」
「そんなの許される訳ないじゃない!宰相である叔父様が見過ごすハズないわ!」
そうよ許される訳がないわ!婚約者だっているのよ!
「それが………王国の会議の場で決定が下され。宰相閣下も反対なさらなかったらしいのです。」
「はっ?…王国会議の場で?相手は誰なのよ!」
「他国の女王の王配として迎えられるとの事で…。」
「女王の王配?何よそれ…。」
「しかも、神々が直接命じられ決まった結婚だと…。」
「えっ?神々って…あの神様?」
「………はい、そのようです。」
そんな事って…せっかくわたくしが婚約者として認めてあげようと………。
「むぃきゃぁぁあぁぁぁっっ!!」
「お嬢様!??お嬢様!!しっかりして下さいませ!」
こうして奇声と絶叫は夜遅くまで響いていたのであった。
ザーグの婚約者さんのお話でした。
去年までは好きな人にフラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーとチョコやお酒にメッセージカードを付けてバレンタインに愛を伝えていましたが今年から送る予定は無いし、貰う予定も中学生1件のみです。
え?お相手?結婚しましたけど何か…。