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スポーツのススメ

「マサルよぅ…何してんだ?」


「ん?多分…ゴルフっぽいもの?」


丸く削った玉をクラブだけは実に精巧に作り上げたアイアンで休憩中に取り敢えず遠くに真っ直ぐ飛ばしまくる。


「誰にも当たりませんよう…………にっと!」


「ならそんな物飛ばすなよ…危ないから…。」


「ザーグもやってみる?」


クラブを持ち替え持ち手をザーグに差し出す。やはり少しは興味があったのかすぐに手に取りマサルの動きを思いだしながら素振りしていく。


「じゃあ、玉を置くから打ってみろよ。」


「おしっ!遠くに飛ばせば良いんだな!」


「う〜ん…まぁ、適当に頑張って真っ直ぐ飛ばしてみてくれ。」


「よっしゃあ!いくぜ!とりゃっ!………。」


ビュンと鋭い風邪切り音がするがクラブは15cmくらい上を通り過ぎ見事に空振りをする。どっと沸き上がり皆が笑いが巻き起こる。


「あれ?…くそっ、笑うな!次こそ!」


ビュンビュンと鋭い音をさせながらクラブを振り回すザーグとそれを面白い見世物にして笑い転げる部下達…平和である。


「…あっ。」


マサルは少しずつクラブが玉に近付いていくのを感じとりザーグの斜め後ろへと退避する、そこならクラブが飛んで来ない限り安全だからである。


「くそっ!もう一度!」


ビシッ!という音と共にザーグの正面方向に飛んだ玉は笑い転げる部下の股関へと吸い込まれる様に飛んでいく…。


「ふぎゃっ!??」


「ジョルジュ!??」


口から泡を噴いて白目をむいて倒れるジョルジュ君…玉が玉にたまたまヒット…なんて言っている場合じゃない。


「ちょっとそこをどけ!治療する!」


「えっ?あぁ、治療な治療…ズボンをまず脱がして…。」


「いらん!脱がすな!治療魔法をするだけだ!それ以上の事は俺には何も出来んから頼むから脱がさないでくれ………。」


「おっ、おう………。」


マサルの懸命の説得にちょっと引きながらズボンのベルトから手を離すザーグ。


「じゃあヒールっと…!もうちょっとかな?ヒール!もう一度ヒール!」


まだ気絶はしているが青白かった顔色が元に戻ってきてひとまずは安心する。


「ジョルジュ君…将来子供が出来ると良いね。」


マサルの言葉に何故か皆ちょっと内股になったまま祈りを捧げる。南無…。


「にしても難しいもんだな…動かないこんな玉を打つだけなのにな…。」


「あぁ、意外と止まっている物を打つのは人間難しいんだよ。ちょっとクラブ返して。」


「ほいっ………じゃあボールを………。」


ジョルジュ君にめり込んだボールを拾い上げるザーグ…ちょっと赤い…。


「いや、それはいいや………新しいの出すから。」


そんな不幸を呼びそうな魔球には関わりたくないのである。新しい玉を出して地面に置く。


「こうやって力を抜いた状態からしなやかに…打つっ!」


シュルッ…小さな打撃音で綺麗に飛んでいく木の玉…そして見えなくなる。


「じゃあ、やってみな。」


そう良いクラブをザーグに渡すと皆が顔色を変えて盾を構えたり離れたりする。


「じゃあ、いくぜ!とりゃっ!」


ザーグの渾身の一振りでビシッ!と打たれた玉は先ほどのショットで既にダメージを受けていたのか真っ二つに割れて、1つはザーグの…そしてもう1つは先ほどから気絶しているジョルジュ君の股関へと吸い込まれる。


「ぎふっ!??」「ぐはっ!??」


倒れるザーグと再びの悲劇に変な汗をかき出すジョルジュ君。


「「「「「「………………。」」」」」」


その場にいる全員が自分に当たった訳でもないのに自分の股関を押さえる。


「これは危ないから没収だな…。」


ザーグの足元に転がっていたクラブをアイテムボックスにしまい、2人にヒールをかけてから2人をそっと馬車に乗せてノームの集落へと向かう。到着するまでのそれまでの間、誰も口を開くものはいなかった。

絶対に痛いですよね…ジョルジュ君はきっと今回で出番終わりですが、きっと将来はちゃんと子供が産まれ良いパパになるでしょう。

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