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続・お風呂回?

風邪を引いて寝込んで2日…熱も引き、体調は戻ったのだが汗もかいて気持ち悪さを感じ浴場へと向かうマサル。


「今度は使用中の札も作ったし、鍵が出来るまでは何とかなるだろう…。」


タオルを肩にかけ、即席で作った手拭いの様な腰巻き風の湯着を片手に浴場の前まで来ると何故か中から小さくバシャッバシャッと水の音がする。


「何だ?この時間帯はみんな仕事してるよな…男共は狩りか見回り、物作りしてるハズだし、女性たちは狩りや別の仕事をしてるよな…子供たちだけでお風呂に入ってる訳ないし…。」


そっと扉に手をかける…。


「まさか…………ビクティニアス?…いやいや、そんな訳が………。」


ごくり、と喉がなるのを知覚しながら静かに扉を持つ手に力が入る…。



………………………………………………………………長い沈黙。



「はい?」


そこでマサルが見たモノは…。


一匹の魚が浴槽の外でビチビチと跳ねて死にかけている…その向こうでは浴槽の中で温泉のお湯で湯がかれ死んだ10匹程の魚たち。


「これって…街の外の川にいる魚だよな?なんでこんな所に………ってか臭っ!?」


死んだ淡水魚がお湯で熱せられ凄い臭いを醸し出している。


「おにいちゃん?」


後ろからかけられた声に飛び跳ねるマサル。


「なんだメイか…どうしたんだこんな所で?」


「ここでお魚さん飼ってるの!」


「えっ?」


「向こうにいたお魚さんが淋しいだろうからお友達を増やしてあげようと思って…。」


「という事は…ここのお魚さんはメイが?」


「うん!ハイトさんに獲ってもらったの!」


「そっ…そうか…あのなメイ。このお魚さんたちはお湯の中では生きられないんだ。」


その言葉にメイは驚き浴槽の中を慌てて覗き込む。


「…あのね、お魚さんは水の温度が少し変わっただけでもとても困るんだ。このお湯は凄く熱いだろ?だから生きられないんだ。」


「でも!向こうのお魚さんはっ!」


「あのお魚さんは逆に熱いお湯の中でしか生きられないんだよ。ごめんね、ちゃんと教えてあげられてなくて…。」


「…じゃあ、このお魚さんたちは…。」


「一緒にごめんなさいして、お墓作ろうか。」


「………うん。」


そうしてメイと2人で魚たちの墓を作り、浴場の掃除をしっかりする。子供たちの優しさはとても素敵で素晴らしいものだが、それは正しい知識や経験が必要で今回は仕方ない事故だった。


…しかし、今回は明らかにこのまま許してはいけない人物もいた。


「やぁ、ハイト今日の狩りの成果はどうだった?」


「今日は凄いぞ!見てくれよこの白鹿!年に1匹獲れるかどうかのご馳走だぞ!今日の晩のメインはコイツで決まりだな!」


兎人族で一番の腕をもつ狩人のハイトは満面の笑みで担いだ白鹿の自慢をしている。


「向こうで長たちが待ってるぞ?今日の主役はハイト、君が総取りだな!」


おだてながらハイトを連行していく、周囲には悟られぬ様に、逃げられぬ様に腕利きの狩人たちが包囲を固めていく。


「ほら、獲物は子供たちに任せて長のところで大切な話があるんだ…ほら、子供たち!みんなで白鹿を調理してるところまで運んでくれよ!」


そう言って子供たちの退避も忘れない。


「…………………………えっ?何か皆さん怒ってます?」


やっと周りの雰囲気に気付いてキョロキョロとしだすハルト…そこを狩人たちが腕を掴み長の前まで強制連行する。


「まぁ、ハイトよ…そこに座れ。」


指されたのは石畳の上である。そっと胡座の姿勢で座ると、


「正座に決まってるでしょ!」


とご婦人方から声がかかった。仕方なく正座に座り直すハイト。


「メイに頼まれて魚を捕まえたよな?お魚さんたちのお友達が欲しいって言われて。」


「えっ?あぁ…確かに捕まえたが?」


「それはどうなったかなぁ?」


「えっ?お魚のお友達が出来た?」


「ぶぶ〜!不正解です。答えは泣きながらお魚さんのお墓をメイが作ったでした。」


「…えっ?」


ヤバいと顔色を変えて狼狽えだすハイト。


「温泉のお湯で川の魚が生きられる訳がないだろ!バカ!」


えっ?そうなの?という表情をしたハイトに逆に周りの大人達全員の表情が驚愕のまま凍りつく。


「マジか…。」


周りがざわめき出した。


「………えっと………どういう事?」


「馬鹿もん!狩人ともあろうものが生き物の事をそれほど知らぬとは何たる事じゃ!その頭の中には何が入っておる!!」


何が何だかわからないといったハルトに、頭に血管を浮き上がらせながら激怒する長。それからは長くなるので割愛するが夕食でとっくに白鹿がなくなる迄ハイトは代わる代わるに様々な人に怒られ続けた。


夕食後の団欒の片隅で浮かない表情をしているメイ…。


「どうだった?白鹿美味しかったか?」


「あ、おにいちゃん…ううん。あんまり覚えてない。」


「落ち込むのは分かるけどさ、お魚さんも夜に食べた白鹿も同じなんだよ?」


「…同じ?」


「そう、同じ様に生きていて同じ様に存在した命…。お魚さんにごめんなさいって言った様に白鹿さんには美味しかったよ、ありがとうって食べてあげないと可哀想だろ?俺やメイやここの皆が生きる為に命を分けてくれたんだからな。」


「ありがとう?」


「そう、食べる前にいただきますって言うの教えただろ?あれは命を分けてくれてありがとう。命を大切に分けて貰いますって事なんだよ。」


「だから食べる時には美味しいです。ありがとうって感謝を忘れちゃいけないよ。」


「そっか、おんなじなんだ!ありがとう、おにいちゃん!」


何とかメイに笑って貰い一安心するマサルであった。




結局、サービスはゼロなのでした。

本当にサービス回はあるのかって…?さぁ…?

神のみぞ知るってヤツですね。

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