バゼラールカ王都の真相
『マサルにはバゼラールカの王都に生きている物を全部殺して欲しい。』
(第96話 真夜中のお茶会より)
マサルの脳裏に蘇るビクティニアスの言葉…。
そう彼女が言ったのは魔物をではなく『生きている物』なのだ。マサルはその言葉を正確に把握し、全てを殺す気で行った魔法だったのだ。
勿論、王都の建物が全滅するとまでは思ってなかったのは本当なのだが、王都の瓦礫を片付けている最中にビクティニアスの言葉の意味を知る事となった。
「なっ……なんだこれは……。」
瓦礫の中から見つかった遺骸は勿論、魔物のものだけではなかった。
それは元人族だったモノ…。肌は固く黒く変質し、所々から何やら触手の様なものや昆虫の様な脚らしきものがはえていた。しかし、着ている服で間違いなくこの王都に住んでいた人だと判断出来る。
そんな遺骸は王都中に何百も存在していて、人だったり馬だったり飼われていた鳥だったりした。それらは一様にマトモな生物に見えず無理矢理に何かに変化した様だった。
マサルはスレイとナックルに気付かれぬ様にその全てを魔法を司る神ゼラフィティスの指示で燃やしていったのだ。
…神々とマサルだけは知っている…あの時、魔物だけではなく変異して人ではなくなっていた何かが間違いなくバゼラールカの王都に生きていた事を…。
…神々とマサルだけは知っている…その命を手にかけその全てを刈り取った事を…。
だからこそマサルはあの魔物の事の詳細を聞いていない…ただただビクティニアスたちの力になれれば良いと思っている。
それはただ見たくない物を見ないだけかも知れない…力を行使する責任から逃れているだけなのかも知れないと思いながらもマサルには何もする事が出来ないのであった。
それは彼が何処までいっても1人のただの人間だから仕方ないのだが、本人はそれが割りきれず心の奥に何かが溜まっていっていたのだ。
しかし、それすらもマサルは気にしていられなかった。あの事件はまだ始まりに過ぎないと気付いていたからだ…今は何をすれば良いかわからないが彼には今後に片っ端から色々と備えるしかなかった。
高い能力を得ても、特殊な能力があっても人が1人で出来る事なんて知れているのでしょうね。




