プロローグ 賭け事は程々に
「はい、これでチェックよ〜終了ね」
「ちょっ!それ待った!マジでっ!飯でも何でも奢るから!」
「駄目よん。勝負は勝負だからね。それよりホントにアレ賭けて大丈夫だったの?上司が知ったら怒られるわよ?撤回させる気はないけど♪」
広大な真っ白な空間で男女は小さなテーブルとイスでチェスをしている。高位の聖職者の様なローブを着た白髪でヒゲのダンディーなおじ様といった風貌の男性は、スーツを着込んだ黒髪の利発そうな大学卒業したてくらいに見える女性相手に少し涙目で項垂れている。
「えっと、わたしの勝ちはスキル付与券が8枚とそっちの住人を誰か一人ね。なんか英雄でも召喚出来ちゃいそうよねぇ〜」
ニヤリと少し悪く笑う女性に対し男性の顔色はとても悪い。というか瀬戸際だ。
「あのぅ、やっぱり住人は勘弁して貰えませんかね?…スキル付与券ならあと8…いや、10枚付けちゃうからっ!」
「駄目よん。うちの子達はまだ文化とか色々育ってないし、もう400年くらい色々と停滞してるの…はっきり言って見ててつまんないのよね。だから文化や技術の起爆剤になるような子が丁度欲しかったの。だからダ〜メ!」
「…うぐっ…絶対怒られる…上司っていうより妻に絶対怒られる…。」
女性はばっさり交渉は終わらせ少し何か考える様な素振りの後、右手を軽く振るとテーブル上からチェスは消え1枚の紙とペンが現れる。
「じゃあ、そっちから貰う子はそうね…地球の日本からで最低でも高校は出た成人した男の子ね。年寄りは駄目だからね、うちの世界じゃあ生きていけないから…ちゃんと今回巻き上げたスキル付与券はその子に使ってあげるからね。自分ところから送った子がすぐ死んじゃったりしたら嫌でしょ?」
「そ…そうだな。大事にしてやってくれよ?ある程度頭は良くて病気とかじゃない子を条件指定して選出しとく。どうせ1人ずつ見て選んでも決められないからランダムで良いな?一応、逮捕されてるされてない関わらず犯罪に縁のない子にしとくな…。」
「そうね。じゃあ宜しく〜適当に受け入れの準備してるわ」
そう言って空間に溶ける様に消える女性。その場に残された男性はさっき話した内容が書かれた紙を見て溜め息1つを残し彼女と同じ様に消えていくのだった。