迷宮の侵攻 02
所持ポイント5000
それが先日の赤竜殺しで手に入れたポイントだ。
かつてないほどの戦いを終えた後勝手に増えていたが、桁がとても多い。
人知さん曰く、『-各上の存在を倒したためだと考えられます-』とのことだ。
それだけ、あの赤竜が強かったということであろう。
確かに全ての部下が戦闘不能に陥り、俺も魔力の大半を失ったのだから当然といえば、当然なのだが。
『迷宮管理権限、迷宮管理実行!』
【迷宮モンスター一覧】
【迷宮仕掛】
【迷宮造形】
と、一覧が目の前に浮かび上がってくる。だが前とは異なり二つほど増えている。
試しに触れてみると、さらに詳しく浮かび上がった。
【迷宮モンスター一覧】
〇ゴブリン・10P
現所持数(100)
〇ゴブリンキング・∞P
現所持数(1)
〇スライム・ 5P
現所持数(0)
〇スライム王・∞P
現所持数(1)
【迷宮仕掛】
〇範囲能力低減(F)・500P
〇範囲能力向上(F)・500P
【迷宮造形】
〇岩兵(F)・1000P
〇岩狼(F)・2000P
いつの間にかに増えていたようだ。
どちらも、相当数のPが必用であるが、予算から考えると買うことができる。
だけど、赤竜の討伐に使えるかは疑問だ。
『なあ、人知さん。この迷宮造形で作ったモノを連れて行くのは可能か?』
【-迷宮内の移動でしたら可能です。ですが地上に進出は不可です-】
『あくまで迷宮内のみってことか。この迷宮仕掛は?』
【-迷宮内のモンスターの能力を変容させる空間のことです。(F)ですと、主の大きさほどかと。そこから出ると効果は失われます-】
『俺くらいってことは、迷宮内全てを埋めるのは不可能か。それに、限られた空間だけでしか効果を発揮しないということは、今の所は買っても意味無しってことか』
はあ、なんだか思ったよりも大変な気がしてきた。
今買える戦力は、軽くあしらわれたゴブリンとスライムだ。さらに言えば、少しは役立ったゴブリンキングやスライム王は∞と表示され買うこと自体が不可となっていた。
あれは、レベルアップしないと手に入れることが不可能とでもいうか、それか俺の迷宮が独特な為独自に変位したとでも考えるべきか。
どちらにせよ、今の戦力を打破できる力は買えないか。
『ほんと、どうしたことか。なあ、人知さんは何かアイデアはあるかな?』
【-岩兵や岩狼を買う選択はしないのですか?-】
『えっ? いやいや高すぎるでしょ?』
ほんと、何を言いだすのだろうか。
確かに、一度は買ってみようかと思ったが、流石に千P単位で買うのは少々腰が引けてしまう。
『でも、人知さんが言うのなら相当役立つのか?』
【-主は岩ゴーレムですので相性は抜群です。仮にも岩兵も岩狼も岩で構成されています。ですので、主の体を通せば永遠と復元し続けるかと……-】
『復元か……』
確かに体中を構成する岩々をそのまま岩兵、岩狼に譲渡できるのならば、岩々をたくさん持って行けば無限に等しい回復は可能だが。
『それって、もしかしてゴブリンたちよりも役だったりする……?』
未だに目が覚めない部下たちを横目に、小さく人知さんに投げかける。
少し黙り、場が静まった後。
【-役立つかの確約はできません。ですが、ゴブ〇ンたちを連れて行くよりは……まだ可能性は高いです-】
『わかった。岩狼を試しに一体、岩兵を一体購入、YESっと』
直後、辺りが銀色に光り輝き始め、不思議な文様が地を走る。
そして、その上を覆い隠すかの如く、黒い影が現れた。
「ギェアフア」
そう活き活きと叫ぶのは岩狼だ。
大きさは、俺の手の平に乗るほどだ。とても小さく肩にも乗りそうなほどだ。
見た目は犬に近く、口元には鋭い牙が生えていた。
『うんうん、これは岩狼か……まあ、愛くるしいかな……って!! なにこれ!』
【-岩狼ですよ? 能力値を開示します-】
【岩狼】
・攻撃値1防御値10魔力値0
・スキル《迷区の恩恵》.《岩石吸収A》
ええと、うん。
まあ、あれだ。
ペットにはいいかもしれない。
って、千Pでペットを買うとか、正気の沙汰ではない。
ならば、せめて岩兵は……。
『岩兵を一体購入ぅっと、YES! 今度こそ強い奴来い!』
今度は辺りが金色に輝き。そして地に文様が走る。
そしてその上を黒い影が覆い隠していく。
『来たれえええっ!』
「ア、ア、ア?」
『・・・・・・』
赤ちゃんだった。
岩で出来た赤ちゃんがその場で泣いていた。
それを見た岩狼が必死にあやしている。
……どうしてこうなった
あれか、俺の行いが悪いのか……?
『なあ、なんだかゴブリンよりも強くは到底見えないけど。どうすればいい?』
【-安心してください。彼らに岩を与えるのです-】
『岩を与える? それって投げるってことか?』
それは岩といえども、虐待になりそうだな。
だが、そんな考えとは裏腹に、
【-能力画面から能力振り分けが可能になっていませんか?-】
『能力振り分け? ああ、確かにあるな』
人知さんの言う通り、確かに能力鑑定を見てみたらそこには能力振分けが増えていた。
因みに、岩兵の数値は以下の通りだ。
【岩兵】
・攻撃値0防御値0魔力値0
・スキル《迷区の恩恵》.《岩石吸収A》
悲しいまでに子供であった。
まあ、子供なのだが。
『……それで、これで与える? ああ、この+を押すのか。ええと、一から百まであるな』
【-それは主の限界譲渡量ですね。百は命に関わりますので-】
『じゃあ、まずは10にするか。岩狼に10、岩兵に10っと』
直後、体中の岩岩が崩れ、パリンとガラスが割れる様に粉々に砕け散った。
そして、岩狼、岩兵の体が増幅していく。
徐々に大きくなり、岩狼の手足の爪は尖り、岩兵は立ち上がり、さらに体中を岩鎧が覆っていく。
そして、待つこと数十秒。
「ア、ハジメマシテ、イわヘイデう」
「ギュウアア!」
巨人の岩兵と巨体の岩狼が目の前に立っていた。
それは先ほどまでとは異なり、存在感に満ち溢れ。
さらに、言葉をも最初からそれなりに話すことができ。
『あれ、ゴブリンいらなくね』
と、あまりにも頼もしい援軍に感嘆し。
誰にも聞こえないほど小さく呟いてしまったのだった。