日常
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴp
外は快晴。カーテンの隙間から入ってくる陽射しが眩しくて俺は布団を盾にするかのように深く潜り込む。隣でやかましく音を立てる目覚ましなんて全力で無視だ。
俺は1分1秒でも彼女(布団)と愛し合っていたいんだ、構ってられるか。しばらくすれば俺と彼女を引き離す音だって止まる。そうか、これは試練なんだ。
馬鹿なことをつらつらと考えながら布団にくるまりなおす。
春とはいえまだ寒さの残る朝。誰もを虜にする布団の魅力に当然のことながら俺は逆らえず再びまぶたがくっつきそうになる。さぁ、そろそろ意識を手放し―
「おっはよーーー!!!!!」 ガン!!
そこねた俺は今日も来たかと布団の中で項垂れた。
存在が邪魔だと言いたいかのごとくドアを開けた俺の妹―海人(略して海)は勢いを止めることなく俺のベットへダイブした。
「ほぐぅ!!!!」
潰れた声が喉から出るがそれどころではない問題が一つどころか複数とある。
まず一つ目。ダイブした勢いで海の足がみぞうちに入った。なるほど息ができない。
二つ目。何を思ったか俺の上に正座をし始めた。やっぱり息ができない。
三つ目。その体勢のまま首にしがみついてきた。総じて息ができない。
「流石私の兄さん!どれだけ世界中の財宝を集めても兄さんの輝きにはかなわないね!!」
四つ目と五つ目。妹が朝からキモイ&そろそろ死にそう。
というかてめぇ今日まだ一回も俺の顔見てねぇだろ。布団から溢れ出る俺の輝きってまったくもって意味わからん。てかはよ退け。
「そういえば兄さん、学校遅刻するよ?」
海は言うなりベットから降りる。
圧迫感が去り、かわりにやってきた開放感に洋は大きく息を吸った。体中に酸素が行き渡るのがわかると同時に脳もはっきりとする。今日も今日とて快適な目覚めだよくそったれ。
「…今何時?」
先程の文句は喉の奥に引っ込め思いっきり顔をしかめながら海に訊ねる。文句を言ってたら飯食う時間がなくなる。
それらを綺麗にスルーして海は真顔で言った。
「8時15分」
「……え?」
学校が始まるのは8時30分。家から学校までかかる時間は約35分。
結局俺に飯食う時間なんてなかった。
「遅刻うううううううううううう?!?!?!?」
焦りで声が裏返ったがどうだっていい。なんでまだ海が家にいるのかも俺が着替えてるのに出ていかないことさえどうだって…よくねぇな。特に後者。
とりあえず海を追い出し、今出せる最速のスピードで身支度を整え家を飛び出す。
そのまま勢いを殺さず愛車のチャーリーに飛び乗り全力で漕ぎ出す。
「うほほほほ~!!兄さん早い!凄い!!」
なんでてめぇは後ろに乗ってんだよゴラ。降ろすにしても時間が惜しい。もうこのまま行くしかないと俺は腹をくくりまっすぐに前を見る。
「やってやらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の気合もしかしてご近所迷惑だったんじゃ…なんて気づいたのは汗だくになって学校についたあとだった。