第7話 "大富豪" ①
「皆様、これよりセカンドステージを始めます。」
主催者の声を聞き、僕は息を呑む。いよいよ、セカンドステージが始まる。死という文字が頭の中を動き回る。不安で胸が押しつぶされそうだ。
僕は手を強く握り、自分はできると信じることにした。そうする以外に、落ち着くことができないと思った。
セカンドステージ・・・。今のプレイヤーの人数は40人。ここから何人が減るだろうか。
「なんだか緊張するね・・・。どんなゲームなんだろ。」
ももちゃんが不安げな顔で、僕の方を見る。そうだった、死ぬのが怖いのは当然僕だけじゃない。
「一緒にがんばろう。そして一緒に生き残ろう!」
「うん!」
強ばっていたももちゃんも、少しはリラックスできたようだ。僕も、さっきよりは体が軽くなった。よし、今の僕はいい感じだ。
「セカンドステージの"大富豪"について説明します。先ほどのゲームと同じく、スマートフォンにルールを表示します。」
大富豪・・・中学校の頃にクラスで流行ってて、結構遊んでいたゲームだ。割と得意な方だが、今回の大富豪は、普通の大富豪とは違ったルールなのだろう。
ふと横にいるももちゃんを見ると、かなり青ざめた様子で手もかなり震えていた。心配なので、声をかけることにした。
「どうしたのももちゃん?何かあった?」
ももちゃんは、僕の声が聞こえていないのか、ルール確認もしようとせずに、ただ立ち尽くしているだけだった。
「ももちゃん!」
「あ、ご、ごめん!」
大声で呼ぶと、さすがに反応した。
「何かあったの?大富豪にトラウマ?」
「これってさ、プレイヤー同士で戦うゲームだよね・・・、きっと。」
ももちゃんのその言葉を聞くと、一気に胸がえぐられたような気持ちになった。プレイヤー同士で戦う。それは殺し合いと何の変わりもない。僕は、人の命を自分の手で殺すことができるのだろうか・・・。
「もしかしたら、私と新田が・・・」
「とりあえずルールを確認しようももちゃん。」
ももちゃんの言いかけたことを即座に止めた。ももちゃんが言わんとすることは聞きたくなかった。そんなことを考えても仕方がない。ひとまずルールの確認をしなくては。
"大富豪"
・皆様には大富豪をしてもらいます
・1グループ4人です
・ポイント制です
大富豪 2ポイント
富豪 1ポイント
貧民 0ポイント
大貧民 ゲーム敗北
・先に5ポイントためた人のみが、勝利です
・同時に5ポイントたまった場合は、そのときの大富豪が勝利です
・また、敗者が3人出た場合は、残りの1人が勝利です
・ゲーム敗北になった場合でも、勝者が決まるまで、敗者はゲームを続けます
・都落ちはありません
・プレイヤーは、対戦相手がイカサマをしたと思えば、ジャッジを申し立てることができます
・ジャッジはスマートフォンの画面にジャッジボタンがあるので、それをタップしてください
・ジャッジは各グループに1人配置します、ディーラーが行います
・ジャッジに成功をすれば、イカサマをした人が強制的に大貧民。失敗すれば、ジャッジを申し立てた人が強制的に大貧民です
・敗者は、ジャッジを申し立てることができません
・状況が明らかに変わった後に行うジャッジは無効となります。その判断は、ディーラーが行います
やはり対人戦だったか・・・。プレイヤー同士でのつぶし合いが生じる。けど、そんなこと気にしている暇はない。ゲームにしゅうちゅうしないち。
ゲームについて、最初に気になったこと。それは、あまりにもルールが曖昧なことだ。大富豪はローカルルールが多数存在する。だのに、こんな状態だったら、大富豪をしてくださいって言われても、グダグダになるに違いない。
「あの・・・、ローカルルールとかってどうなりますか?」
やはり、質問する人が出てきた。僕も主催者に聞こうとしていたところだった。
「今回のルール説明では、質問を受け付けておりません。ご了承ください。」
質問をした人は、それを聞いて大人しく食い下がった。絶対的な主催者に逆らうことはできないことを、主催者が見せつけているようにも見えて、不愉快だ。
しかし・・・ローカルルールもわからない状態で、大富豪は果たして成立するのだろうか。前回のゲームと違って、何をすればいいのかもわからないまま、手探りでゲームを進めることになるのだろうか。今はいくら考えてもわからない。
「ねぇ、ももちゃん。ローカルルールが決められてないことについてどう思う?」
「ご、ごめん。私もそれについて考えてたけどわからない・・・。」
ももちゃんが申し訳なさそうな顔でこっちを見る。僕も申し訳なくなったのでとりあえず謝った。
ももちゃんも僕もわからない。このままでは、普通の大富豪をしてしまうことになる。本当にそれで大丈夫なのか・・・?今回のゲームも、大富豪とはいえ、一筋縄では行かない気がする。