第6話 "サファリパーク"
「"サファリパーク"のルールを説明します。簡単です。檻の中にライオンが20頭います。生きて反対側のドアまで走ってください。ドアを開ければ、ライオンに追われることはありません。それでは、頑張ってください!」
主催者の声は、いつもより明るかった。この罰ゲームを楽しみにしているというのか・・・。狂っている。
「ごめん、新田・・・。私ちょっと、トイレ行ってくる・・・。」
ももちゃんの顔色が相当悪くなっていた。これから起こることを想像したら気持ち悪くなったのだろうか、無理もない。ももちゃんは口を手で押さえながら、走ってどこかへ行った。
「それでは、スタート!」
主催者の合図と同時に檻が開き、ライオンが出てくる。
人間は散らばって、ライオンの外側を回っていこうとするが、いかんせんライオン側の数が多すぎる。多くの人がつかまって、爪で肉をはがされ、牙で体を噛み千切られ、その部屋は、人間の叫び声と血の赤で満たされていった。
「うっ・・・、なんて残酷な・・・。」
ゴールにたどり着いたものは数名いた。だがそれも両手で数えられるほどで、ほとんどの人がライオンに殺された。
ゴールにたどり着けた人はきっと、生きたいと思うことで自分の全力を出し切って逃げたのだろう。僕も彼らのように、強い意志を持っていきたい・・・!
ゴールにたどり着いた人たちは、みんな笑顔でハイタッチをしたり、ハグをしたりしている。生き延びたことが相当うれしかったのだろう。
ライオンのいる部屋から生きている人間がいなくなってまもなく、主催者が話し始めた
「おめでとうございます!まさかあの数を切り抜けて、生き延びた人がいたとは!いやいや、素晴らしいです。」
主催者の賞賛に喜ぶものはいなかった。全員険しい顔で主催者の声を聞いている。
「皆様、ライオンがトラウマになっちゃいました?でも、もう襲われる心配はありませんよ!むしろいい機会でしたね。あっはっは!」
主催者は大きな声で笑った。ジョークのつもりらしいが、笑っているのは主催者1人だ。生き延びたやつを早く帰してやれよ。お前のつまらないトークはどうでもいいんだ。
「さて、それでは第2ラウンドに移りましょうか。」
は・・・?第2ラウンド?またライオンに襲われるのか?
「お、おい!どういうことだ!俺たちはちゃんと逃げ延びたぞ!ふざけるな!ライオンに追われることももうないんじゃないのか!?俺たちを解放しろ!」
ゴールにたどりついた人のうちの1人が、青ざめた顔で主催者に向かって叫ぶ。他の人たちも、顔が青白くなっていき、もう言葉を発することはできなくなっていた。
「くっくっく・・・、やはり敗者はおろかだ。知力もろくに持たない単細胞め・・・。誰が生きて帰すといった!?誰がゴールにたどり着けば終わりといった!?貴様らの妄想を現実に持ってくるな!馬鹿が!」
主催者が本性を出してきた。やっぱり、こいつは最低なやつだ・・・。どうしても、こいつの言葉に反応して腹が立ってしまう。自分が何もできないのが悔しい。
「それでは、皆様。第2ラウンドの開始です。20頭のチーターから逃げ切ってください。」
罰ゲームが終わり、敗者全員が死亡した後、主催者から1時間の休憩が与えられた。その間は、テーブルの料理も自由に食べていいらしい。しかし、あんなものを見せられた後では、当然喉には何も通らない。
「新田・・・。終わった?」
「うん、終わったよ。」
ももちゃんが帰ってきた。幼馴染というのはここまでメンタル面において、支えになるものなのか・・・。さっきまで感じていた怒りが少しおさまった。
僕の目標が1つ増えた。元の生活に戻る。ももちゃんを守る。そして、主催者に何とかして一泡吹かせてやる。
そのためには、全てのゲームをクリアしなければならない。難しいことだと思う。実際にファーストステージは危なかった。だけど、僕にはできるような気がしてきた。目標が多ければ、意志が強くなる。意志が強くなれば、自分自身も強くなる。そう信じているから。