第5話 "美人投票・R" ④
「勝者の人数がちょうど40人になりました。これにてゲームを終了します。」
僕は勝っていた。完全に運が良かっただけだ。このゲームの本質を早い段階で見抜けず、気づいた時にはもう手遅れ、後は、ゲームのルールに踊らされるだけ。結果的には勝っているが、内容的には惨敗だった・・・。
ゲームが終わると、スマホの電源も点かなくなった。
落ち着いてみると・・・、さっきの自分の考えが馬鹿らしく思えてきた。幸せだったあの生活がどうでもいいだなんて、どうかしている。必ず、生きてやるんだ。ついでに、10億ももらっちゃって、楽して生活しちゃおう。親孝行にもなる。
ついニヤけてしまう。これから先に希望が持てている証拠だ、僕はまだ正常でいられてる。よし、頑張ろう。
「そこのあなた。名前を教えて。」
僕のほうに近づいてきた1人の女性が話しかけてきた。年は僕と同じぐらいだろうか・・・。だが、細身でスタイルが良く、思わず見とれてしまった。髪は黒く、腰のあたりまで伸びていた。服装はやはり僕と同じでパーティーに合った感じのドレスを着ていた。そして、一番気になったところが、腕や顔にある、傷痕。いったい何をしたのだろうか、少し気になった。
「僕の名前は新田。君の名前は?」
「私の名前は宇月。覚えなくていい。今のあなたに失望したから。」
彼女の言葉は人と話しているとは思えないほど冷たかった。加えて、彼女の眼は僕を見ていなかった。じゃあ、何故僕に話しかけたのだろうか・・・。まったく意図がつかめない。
宇月は、僕のもとからすぐ立ち去って行った。
「やっぱり、知り合いがいないって結構つらいな・・・。精神的に参ってしまう。」
1人でいると、どうしてもさっきのゲームのような状態に陥ってしまう。それだけは絶対に避けたい。仲間がいれば心強いんだが・・・。
そう思い、周りを見渡してみると、見慣れた人物がいた。
「おーい!ももちゃーん!」
僕が呼んだ相手は、近所に住んでいる幼馴染の女子だ。ももちゃんがいると、本当に心強い。小さいころからいつも一緒に居ただけあって、お互いのことは熟知している。心の弱い部分までわかっている。ここでももちゃんと出会えたことも本当に良かったかもしれない。
「あ、新田ー!その様子だと、ファーストステージは勝てたみたいだね。私もだよー。」
ももちゃんは茶髪でボブ。身長は小さくて、150cmあるかないかぐらいだ。顔がふっくらしていて、かわいい。胸も・・・大きい。ゆるふわって言えばいいのかな、一緒にいると癒される。
「ももちゃん、これから一緒に行動しようよ。ももちゃんといると安心できる。」
「おっけーい。私も新田といるとがんばれる気がする!」
ももちゃんがニコッと笑った。あぁ、良いね。この笑顔も守りたい。僕のゲームに対する思いは、より一層強くなった。
「皆様、ファーストステージお疲れ様でした。」
「死ぬまでの時間は楽しめましたか?私の登場を遅らせたのですよ。」
主催者の笑う声が聞こえてくる。最初は紳士的なやつだと思っていたけど、相当性格の悪い奴だ。こいつの言葉に突っかかってたらきりがない。これからは大事な内容だけ聞いておくことにする。
「それでは敗者の方々には、罰ゲームをいたしますので、待機しておいてください。」
主催者がそう告げた刹那、パーティ会場のどこかから、急にガスが噴出した。だんだん眠くなってきた。どうやらこれは睡眠ガスらしい・・・。
目を覚ました。パーティ会場からはごっそり人が減っていた。おそらく敗者が連れていかれたのだろう・・・。僕の位置は、倒れた位置から変わっていない。ももちゃんの位置も変わっていない。勝者は、おそらく何もされていないのだろう。
急にポケットに入れていたスマホの通知音が鳴る。スマホの画面には、正方形の部屋にが映し出されていた。部屋の壁際には人、その向かいの壁にはドア、そして部屋の中心には檻があった。その檻の中には・・・
「ライ・・・オン・・・?」
ももちゃんが唇を震わせながら言葉を発した。どうやら怯えているらしい。それは当然だ。これから何が起こるか、これほどわかりやすいこともないだろう。
「それでは罰ゲーム"サファリパーク”のルールを説明します。」