第1話 開会式
目が覚めると、僕はパーティー会場の椅子に座っていた。僕の服装もいつの間にか、タキシードに変えられていた。人は100人近くはいるし、テーブルには料理がある。これから何かを祝うのだろうか・・・。
とりあえず、身内に連絡をしようと思い、ポケットの中に入れていたスマホを取り出す。しかし、そのスマホは明らかに自分のものではなかった。スマホカバーは、目がバネで飛び出しているピエロが描かれていて、そのピエロは血のようなものが、飛び散っていた。
「趣味悪いな・・・。一体誰がこんなことを・・・。」
自分のではないが電話はできるだろう、と思っていたが、スマホの電源が点かず、今の僕は何もすることができないと悟った。
しばらくすると、天井のスピーカーから声が聞こえた。
「こんばんわ、私このパーティーの主催者です。これから皆様にはいくつかゲームをしていただきます。」
その声は、とても低い男の声で、僕の不安な気持ちをあおる。
質問したいことはたくさんある。ここはどこ?なぜ僕は呼ばれた?ゲームとは一体?しかし、プレッシャーがあまりにも大きく、その重圧に押しつぶされそうな感覚に陥った。言葉が出ない・・・。
「おい、てめぇは誰だよ!ゲームってなんだ!?」
僕の言いたいことを、誰かもわからない中年男性が代弁してくれた。やはり大人はこういった状況でも、強くいられるのだろうか。僕もああいう強い人になりたい。
「私は主催者です。それ以上あなたたちが知る必要もありません。ゲームについてですが、ただのゲームです。ばば抜きとかあっち向いてほいとか、そんなものです。」
・・・訳がわからない。頭が痛くなってきた。ただ、わかることは僕は明らかに非現実的な状況にいる。逃げ出したい。今すぐにでも、元の生活に戻りたい・・・。胸のあたりが痛くなった。
主催者は話を続けた。
「皆様がこれからしてもらうゲーム。全てをクリアした者には、賞金10億円を差し上げましょう!もちろん、家に帰ることもできますよ!」
その言葉は、今の僕にとって、希望以外の何でもなかった。鼓動が高鳴り、僕の顔が自然と明るくなっていくのがわかった。
「ほ、ほんとに10億円?」
「す、すげぇ・・・。一生遊べるじゃねぇか・・・。」
「ゲーム得意で良かった!これはいただいた!」
色々な場所から喜びの声が聞こえる。こんな状況に置かれているのだから、疑うことなんてナンセンスだと、みんな本能的に感じ取っているらしい。
「ゲームなら僕でもいける・・・!やってやるよ!」
思わず大声で叫んでしまった。それだけ嬉しかった。ただゲームをするだけなんだ。ちょっとワクワクしてきた。
「それでは、早速ゲームを始めましょうか。ファーストステージ。ゲームの名前は"美人投票・R”です」
幸せだった生活に戻りたい。その一心で僕は、ゲームへのモチベーションが高まった。絶対に勝ってやる!