終
金色の閃光が身体を貫いた。
「がっ?」
うめき声を上げ、士郎の身体が床に転がる。
だが、士郎の身体が射抜かれたわけではない。
貫かれたのはイグナの身体だ。
士郎を庇い、前に進み出たイグナが一筋の金色の閃光がイグナの肩の辺りを貫いていた。
「くっ!」
イグナは、肩膝を床につき、傷口を押さえながら痛みに耐えた。
ハザードは、顔を歪めながらイグナが苦痛に呻く様子を見て、もう一度金色の閃光を射出した。
今度は、イグナの足に当たる。
「がっ!?」
今度は、左足が血にまみれていた。
「やめろ!!」
士郎が銃剣を持ってハザードに向かっていく。
ハザードは、更に光線を撃とうとしていたのを中断し、士郎が向かってくるのを向かえ討った。
この瞬間、士郎はトランスした。
身体が覚えている細胞変異のパターンを読み取って、遺伝子情報を書き換える。
身体に書き込まれた遺伝子情報が身体を変化させ、士郎の身体を強化する。
メキメキメキッ!!と白い翼が士郎の服を突き破り、現出する。
そのまま、ハザード=クライシスの身体に剣を突き立てて、直進する。
現出した翼で推進力を生み出し、ハザード=クライシスを刺し貫いたまま、ビルの最上階のガラスをぶち破り、彼を地面に叩き付けた。
地上百メートルはあろうかという場所からハザード=クライシスは、斜めに物凄い勢いで地面に叩きつけられた。
地面にクレーターのような跡が残り、その中心で、怪物と化したハザード=クライシスが存在していた。
立っている、微動だにせず、その場に君臨している。
士郎は、更に追い討ちを掛けるべく、急降下した。
ハザードと士郎の交差は一瞬だった。
金色の光を纏ったハザードが跳びあがり、空中から急降下した士郎を迎え撃つ。
空気を切り裂くような轟音を辺りに響かせながら士郎はハザードと激突した。
交差する刃と刃。
異様な唸りを上げる二つの刃が激突する。
士郎は、地面に着地した。
ハザードもまた同じく。
そして、お互いに背を向けたまま、ハザードと士郎は言葉を交わした。
「何故だ、何故?」
「貴方のやり方は間違っていた、いや、貴方達のやり方は、だから失敗したんです。
かつての僕のように・・・」
その言葉が終わると同時に、ハザード=クライシスは崩れ落ちた。
「ウロボロスを縛る私の力は失われた。
君は世界を滅ぼしたのだ。君にはウロボロスを操ることができない。
ウロボロスには安全装置がついている、私の言うことしか聞かないようにな」
「それでも、止めてみせる」
静かに、士郎は呟いき、大きくその場で羽ばたいた。
ある程度の高度まで上ると、物凄いスピードで空を駆け抜ける。
向かう場所はアメリカ・カリフォルニア湾。
マッハを超えるスピードで、士郎は前へ前へ進んだ。
ウロボロスの無数の首を撹乱しながら六人と一匹は戦っていた。
主な攻撃の主軸は、ロトだ。
ケルベロスを乱射しながら、ウロボロスに捉まらないように、横に走るが、その動きをロトは中断した。
無数の首と格闘していたサラが砂に足を取られ、今にもウロボロスの攻撃を受けそうになっているのだった。
「サラ!!」
ロトは慌ててサラに向かって伸びるウロボロスノ首にケルベロスの弾丸を発射した。
ウロボロスの首が銃の弾丸に連動して不気味に振動した。
だが、それでもサラに向かっていく首は止まらない。
そして、サラを丸呑みにしようと、無数の首がガバッ!と口を開けた。
その瞬間、その無数の首が切り裂かれた。
「何?」
サラは、覚悟して瞑っていた眼を開けてみた。
白い翼が生えた人間が、サラに背を向けている。
そして、その人物が叫んだ。
「グレン、トランスだ!!」
その瞬間、黒い物体がその人間の下に飛来する。
その黒い物体に一瞬手を触れた。
神谷士郎の姿が変わっていく。
白い翼から、コウモリのような翼へと、背中についたそれが変わっていく。
白い肌の所々に黒い鱗が浮かび上がり、その眼は射抜くような厳しさ帯びていた。
「行こう!グレン、竜の息吹を放つ!!」
ウロボロスの首が再生している間に、一人と一匹は空へ舞い上がった。
身体から、大量の粒子が放射されていく。
それがエネルギーの塊になって、一転に集まっていく。
青い閃光が、その場の色を塗りつぶした。
一人と一匹の放った閃光が、壮大な光を放ったのだ。
そして、ウロボロスに直撃する。
全長百メートルはあろうかという、ウロボロスの身体が、消し炭になっていく。
それを知覚出来た物は居なかったが、確かに、ウロボロスの身体は完全に消し炭になった。
しばらく、静寂が訪れ、直後、全員が、勝利を悟った。
ウロボロスは、完全に跡形もなく消えた。
エリアのセントラルエリアで、ハザード=クライシスは完全には意識を失わず虚ろな表情で空を見ていた。
「ハザード=クライシス、貴方の計画、いや、如月総司の計画はこれで終わりです」
そんなハザードに誰かが話しかけた。
「サイモン=ロードか・・・」
スーツを着た、若い男は答えた。
「ええ、その通りです。」
「どうやって、あの場所から外に出た」
「今回、貴方はやりすぎました。さすがに、私が世界に喧嘩を売るのは考えづらかったのでしょう。
エリア上層部が乗っ取られている可能性を考えた人間が、私を助け出してくれました」
そして、つかつかと、サイモン=ロードはハザード=クライシスに歩み寄った。
「貴方が例のテロリストの身体を乗っ取ったというのは、未だに信じられませんが。
しかし、どちらにせよ私は貴方をこの手で抹殺する必要がある」
そう言って、サイモンは懐から拳銃を取り出した。
「君は、この計画の真意を知ってなお、そんなことが出来るのか?
このままでは世界は滅ぶぞ、ウロボロスによってではなく、如月の予見した世界の敵の手によって・・・」
「ええ、ですがその心配はありません、ホムンクルス1stコピーがいるのだから。
彼がウロボロスを倒しました。つまり、ホムンクルスは、ウロボロス以上のポテンシャルを秘めた存在だということ。ならば、ウロボロスなどに頼らなくても、ホムンクルスを創り出したほうがいい。
貴方が言っていた世界の敵にも、ホムンクルス3rdを創り出せば、対処できるでしょう。
こうなれば、貴方は用済みだ。さようなら、ハザード=クライシス」
銃声がこだました。
ウイングスは、永い眠りから目を覚ました。
身体を起こし、辺りを見る。
実験施設だ。
いつもの実験施設。
だが、決定的に違うことがある。
身体が、変わっていた。
人間の身体に、変わっていた。
人間の姿、人間の心、人間の感覚になっていた。
「遂に、私は・・・」
ウイングスは、自分の手を見つめながら、呟いた。
「おはよう、ウイングス、他のみんなはもうすでに起きてるよ」
「ホムンクルス1st!願いを叶えてくれたのですね!!」
「うん、君たちの記憶を、普通の人間の身体を創り出してその空の器に注ぎこんだ。
君たちは普通の人間になった、だから、好きに生きるといい。」
「私は、ずっとレナ様についていきますよ、そして、貴方にも」
「そっか・・・」
ウイングスと士郎は笑いあい、ウイングスは立ち上がった。
「本当に人間になれたのですね、レナ様と同じ」
「そうだよ、夢じゃない、レナと話したいだろう?行ってきなよ」
はい、と頷き、ウイングスはレナを探して歩き出した。
まだ、どことなく自分の体に慣れていないようで、その動きはぎこちないが、すぐに慣れるだろう。
「ねえ、士郎?」
ウイングスを見送っていた士郎に、後ろから声が掛かった。
「ユリア、何?」
少年は振り返る。そこには、幼馴染が立っていた。
「これが、士郎のやりたかったことなんだ?みんなを人間にしてあげること」
「うん、みんなの願いはいつもそれだった。これからはみんな思い思いの行き方をして、それぞれ人間として生きていけると思う、グレンは人間になることを望まなかったけどね・・・。
いつでもレナを守れるようにって、力を落としてまで、人間にはなりたくないみたい」
「そっか、じゃあ、士郎も普通に暮らせるよね?今までと同じく、幸せに暮らせるよね?」
「うん、家族も増えたしね、レナにウイングス、他のみんなも家族みたいなものだからさ」
「じゃあ、約束してよ?」
「うん」
二人は、指切りをした。
そして、そっと顔を近づけて眼を瞑った・・・
こんな駄作を最後まで読んでくれて有難うございました。
何人くらいこれを読んでくれているのか正直分かりませんが。
本当に有難うございました。




