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ニューリーダー

消えてしまったビルの最上階、そして、文字通り、跡形もなく消えてしまった、エリアのトップ。

ハザード=クライシスの暗殺、というよりはある種正々堂々といえるまでにあっさりと正面からの殺害により、統括理事会はてんやわんやだった。

新しいリーダーを決めなければならない、だが、こんな状況でそんな役割を率先してやろうという人間は、余程の物好きだろう。エリアのモニターを全てハックし、なおかつ未確認生命体を操る力を持ったテロリストが、一ヵ月後にやってくるというこの状況でだ。

だが、その物好きは、偶然にも居た。

若い青年といっても過言ではない齢、モニターの前の女性を虜にするその男、サイモン=ロードは、熱く意気込みを語っていた。エリア全域に、その熱意を波及させるように。

『皆さん、あのテロリストによって、私たちは偉大なる指導者、ハザード=クライシスを失いました。

 私は、テロリストの傍若無人な態度に、憤りを隠せません、何故、あの方が死ななければならなかったのでしょうか?』

真摯な態度で臨む、彼の演説は、聴衆を惹きつけ、それからしばらく、彼の言葉は続いた。

『私は誓おう、私たちエリアはテロになど屈さない!

 私は誓おう、これまでのように、そして、これからも、私たちエリアは世界の敵を打ち倒すため、全力を尽くすことを!!』

大きな拍手が巻き起こった、エリアに残った信念の強い兵士や、住民達の熱狂。

若く、情熱的な新しい指導者は、住民達をたき付けるのに十分な成果をもたらしたようだ。

サイモン=ロードは、統括理事会擁するセントラルエリアの前で胸を撫で下ろした。

どうやら成功したようである。

「有難う、有難う」

そう、甘いマスクで周囲の聴衆に笑いかける。

そして、黒塗りの高級車に乗って、ある場所へ向かう、外に手を振りながら、笑顔を振りまくそんな彼に付き従っていた秘書が彼に問う。

「よろしいのですか?こんな時期にこの大役を買って出て。

 統括理事会の職員の顔は、まるで自殺志願者を見るような顔だったじゃありませんか」

「誰かがやらなくてはならない、それに、一ヵ月後の防衛線を守りきれなかったとしたら全員どうせ死ぬんだ、なら責任どうこうの問題じゃないだろ?アリア」

それは、と口ごもる秘書に、サイモンは続けた。

「大丈夫だ、このエリアの軍事力は君や聴衆、それに軍事兵器を造りだしている科学者自身、そして、戦っている兵士すらも想像がつかないほどの力を持っている、向こうがsinを総動員して戦うような化け物でも、そう簡単に負けはしないさ、今、あのテロリストが使ったおかしな力の解析も進んでいるようだし」

「次は、その兵器開発部門の視察に行くのでしたね」

「ああ、私が出ることで、勢いが少しでも増すことになればいいのだが」

サイモンの秘書、アリア=セルシウスは心の中でため息をついた。

この若い新リーダーは、兵器開発をスポーツか何かと勘違いしているのではないだろうか?

応援の無意味さを全く理解していない。あの研究者達は、少なくともそんなものより、新しい予算を欲していることだろう。

そうこうしているうちに、車はエリアお墨付きの総合研究開発所についた。

自動ドアの前にあるセキュリティシステムにカードを読み込ませ、中に入るサイモン、それに付き従う秘書は、スケジュール表のようなものを持っている。

「あまり、ここには時間が掛けられませんよ」

「分かっている、顔を出すことに意味があるんだ」

ここでも秘書は、この新リーダーの子供っぽさに呆れてしまう、子供のように単純で、だからこそ、聴衆には受けたが、彼はエリアの職員や、研究者には、あまり好かれていない。

そのままズンズンと兵器開発部門の場所へ進むサイモンの背中を追いかけながら、秘書はそんな事を考えていた。

その頃、研究室ではというと、

「うーん、やっぱりあの時のテロリストの出した粒子と、ドラゴンの出した粒子、それにニルヴァーナの際に改造兵が発する粒子は同一の物みたい。」

「と、なると、この粒子を解析すれば、こちらもあの粒子を使った攻撃や、電波妨害、電子機器の機能障害にとどまらず、電子機器の外部からの支配まで可能になるということですね?」

「そうね、問題はこの粒子をあのテロリスト達はあれだけ自由に使いこなせるというところだけど、あれだけ使用用途が広いなんて考えられない、今までだって電波障害を起こすためのチャフなんてものを開発した時代もあったようだけど、あの粒子の力、万能性に比べたら玩具同然、本当に予想外だわ」

真剣な様子で、ミーナを含む研究員たち話し合っていた。

「そうそう、素粒子工学を担当していた部門の連中が泣いてましたよ、あんな粒子が存在していいはずがないって・・・」

少し、話が脱線したようだが。

「それだけ、未知の新しい分野に俺達は踏み込まなきゃならないんだって事だな・・・。

 ドルく元局長が居てくれれば・・・」

「無いものねだりしてる時間はないわ、とにかくニルヴァーナを使える改造兵を呼んであの粒子を採取してみましょう、場合によっては、武器に粒子を操るためのギミックを積むことになるかも、新しい武器を造ることになるかもしれないわ」

「おそらく、改造兵はすぐに来てくれると思います、局長、あの事件以来、世界中で暴れまわっていたsinが、一切動きを見せなくなったんです」

まるで、それは嵐の前の静けさのようで、研究員たちは、生唾をのんだが、ミーナがその悪い空気を断ち切るように言った。

「とにかく、改造兵を総動員してでもこの問題に取り組まなくちゃ、そうしないと勝ち目は限りなくゼロに近いわ」

言い終わったミーナに、後ろから、若い男の声が掛かった。

「その役目は私が引き受けよう」

慌てて振り返るミーナ、声の主の姿を見ると、姿勢を正した。

「これは、サイモン理事長、こんな所まで来ていただけるとは、予想外でした」

ミーナの挨拶にサイモンは首を振りながら、答える。

「いや、邪魔をして悪かったね、君たちがあまりに熱心に討議しているものだったから、退室しようとも思ったのだが、君たちが改造兵の実験データを欲しがっているようなので、第一小隊のセイファ隊長には私から声を掛けておこうと思ったのだが、いらないかな?」

「いえ、助かります、有難うございます。」

ミーナはにこやかに答えた。

「そうか、ではそろそろ退室しよう、では皆頑張ってほしい、エリアの未来は恥ずかしながら、私ではなく、君たちに掛かっている。」

研究者達は、それぞれ会釈をしたり、感謝を述べたりして、去っていくサイモンを見送っていた。


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