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ユリアの叫び

先日の騒ぎで聖・ルーベルハイスクールは、というよりエリアの全域の学校は、全て学級閉鎖に追い込まれた。本国にいるエリアに子供を留学させていた父兄が、子供を一斉に本国に帰してしまったのだ。

そういうわけで、ほとんどの生徒がエリアを出て行く中、ユリアはセイファの家で、沈み込んでいた。

学校が閉鎖されてしまったのも、理由の一つではある、友達と会えないのも、理由の一つ、だが、士郎と思われる、(いや、完璧にあれは士郎だった)人物を見つけて、その人物が、エリアを潰そうと、人間の敵になろうとしているのがユリアの心に深い混乱を呼び、そして同時に、深い悲しみを呼ぶ。

ユリアは、使用人がほとんど居なくなった淋しい家の中(何も、エリアから退去していったのは学校の生徒だけではない)の自分の部屋でこもりっきりで、窓から外を見ていた。

ロミオとジュリエットの最初の出会いのシーンを連想させるようなバルコニー、それがこの部屋には付いている。

だが、彼女の王子様が現れることは無い、それは足し算や引き算を解くように簡単に分かることで、

決まりきったつまらない解だ・・・。

少女は、ため息を付く今、この家にはユリアと、セイファの妻のサーシャ、それに、使用人が三人しかいない。

セイファは任務に出かけたようだ。

そんな中、コンコンとドアを叩く音がする。

ユリアは、慌てて返事をしながら、ドアの方へ歩く。

すると、ドアが開き、優しそうな顔の貴婦人が入ってきた。

高そうな寝巻きを羽織った、その女性は、サーシャだ。

「大丈夫?今日一日、全然出てこなかったから、心配したのよ?」

どうやら、心配してくれたらしい。

「ごめんなさい、お義母さん」

まだ、微妙になれない、この呼び方。

それでも、こう呼ぶと、この女性は喜んでくれる。

「学校が閉鎖されたのは残念だけど、この家はきっとお父さんが守ってくれるわ。

 あんな奴らに負けるようなお父さんじゃないから」

「はい、でも、違うんです、それが原因じゃないの」

あら、と意外そうな顔で、サーシャは呟いた。

「ずっと会いたかった、人に会えた、会えたのに、引き止めることが出来なかったんです。

 一度は振り向いてくれたけれど、すぐに行ってしまった・・・」

「そうなの、私も同じような経験があるわ」

え?と、今度はユリアが意外そうな顔をする番だった。

「お父さんよ、あの人、本当に仕事仕事でね、一時期全然帰ってきてくれなくなったのよ。

 体質のせいで、子供出来ないし、淋しかったわ、それでね、ある日・・・」

ここで口ごもるサーシャ、ユリアは先を促した。

「それで、どうしたんですか?」

「うん、恥ずかしいんだけどね、あの人が帰ってきて、また仕事に行くために出て行ったとき、私遂に我慢の限界に来ちゃって、「私と、仕事、どっちが大事なのよ!アナタ!」って叫びながら、色んなものを投げつけたの、あの時のあの人のポカンとした顔は本当に面白かったわ」

「それで、その後どうしたんですか?」

「謝ってくれたの、ごめん、時間をなるべく取るようにするからって、ペコリ、そしたら、胸の中のもやもやが、すっきりしたの。怒鳴ったせいなのか、謝ってくれたせいなのか、それとも両方なのかは、分からないけどね、とにかく、言いたいことは胸に閉まっておくんじゃなくて、吐き出しちゃうといいのかもしれないわ、参考になったかしら?」

「はい、何となく、分かった気がします」

「そう、それはよかったわ、じゃあお休みなさい、明日は学校がないようだけど、夜更かしは美容に良くないわ」

じゃあね、と言い残して、サーシャは部屋を後にした。

「言いたいことは、吐き出しちゃえ、か・・・」

ユリアは、サーシャの言った言葉を試してみることにした。

本当に、それで、胸のもやもやがとれるのか?

ユリアはバルコニーまで走っていくと、怒鳴った。

「こらー!士郎!!無事だったんなら、戻ってこーい!!

 心配ばっかりかけて!!この優柔不断!この、バカヤローーーーー!!!」

ユリアは、腹のそこから叫んだ、周囲のことなど気にも掛けない。

使用人にも、サーシャにも聞こえているだろう。

だが、ユリアは心が少しだけ軽くなったのを感じた。

ユリアの言葉は、士郎には届いていないだろう、それは確かにただの自己満足かもしれないが、それでも、少女にとっては、大切なことだった。


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