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憤懣

月が映えるような、雲ひとつ無い夜、だが、青年の心は晴れない。

その青年は、憤懣のやり場の無さから、剣を振るっていた。

木々がうっそうと生い茂る森の中、敵は跋扈していた。

フェンリル、北欧神話の主神オーディンを丸呑みにしたといわれている巨大な狼。

イグナは、その名を冠する未確認生命体sinを相手に怒りをぶつけていた。

普通の狼の二倍はあろうかという巨体が、イグナを捕らえようと、複数、襲い掛かってくる。

まずイグナの真正面に居た狼が、身を小さくかがめ、全身のバネを最大限まで縮め、砲弾に近いスピードで、イグナの喉元を狙う。

大剣を斜め一閃に振るうことで、イグナは一匹目を一刀の元に真っ二つにした。

続いて、二匹目三匹目がその隙を突いてイグナに襲い掛かる、後ろと斜め前方からの奇襲。

だが、イグナの動きは遥かその先にある。

イグナは大きく上に跳びあがり、斜め前方から襲い掛かってきた真下の狼に、大剣セラフィー・ブロクスを投槍のように投げつけた。大剣が狼の背中から突き刺さり、腹を突き破って串刺しにする、跳躍していた狼は、バランスを崩し、地面に剣と一緒に叩きつけられ、あえなく息絶えた。

空中に浮いたままのイグナは、もう一匹跳びあがってきたフェンリルと空中で取っ組み合った。

グググットフェンリルの首を絞めて、息の根を止めようとするイグナ、それでもなんとか牙をイグナに突きたてようとするフェンリル、一人と一匹が地面に降りたのが集中砲火の合図だった。

四方八方から、血に飢えた怪物がイグナを捕らえようと襲い掛かってくる。

イグナは、フェンリルの首を締め上げるのを諦め、空中のフェンリル一匹に投げつけた。

空中にいたフェンリルは、突然の飛来物に反応できず、そのまま衝突し、地面に、投げつけられた狼共々転がった。

しかし、他の狼達の攻撃の手は緩まない、まずは三方向から、左斜め後方、右の真横、右斜め後方。

一番近いのは、左斜め後方、イグナは後ろ回し蹴りで、狼の大きな頭を捉えた。

グシャッと言う音とともに、狼の顔の形が変形していた。

次に同時に襲い掛かる二匹、イグナは、跳びかかってきた二匹の首をそれぞれ掴んで、その二匹の頭蓋と頭蓋を叩きつけるように、空中でもがく狼をぶつかり合わせた。

ゴキッと嫌な音がする。二匹は遠吠えに近い呻き声を上げて、絶命した。

イグナは、その手に残った残骸を他の狼達に投げつけた。

さすがに、怯むぐらいの効果はあったのか、狼達の動きが一旦ストップした。

イグナは、ゆっくりと剣を先程倒した狼の体から引き抜くと、雄叫びを上げて、狼達に斬り込んで行った。

「ウオオオオオ!」

鬼のように、ただ斬り続ける、返り血も、傷も、全てはどうでもいい。

この心の空虚さが癒えるまで、イグナは剣を振り続ける。

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