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最初の目覚めと訓練と・・・。

昨日のように士郎は全く同じ時間、時刻でシミュレーションルームへ向かっていた。

しかし、士郎はイグナが本当に来るか半信半疑だった。

なにしろ、口約束だったし、軍の階級で言えばイグナの方がずっと上なのに、下っ端の士郎に構ってくれるとは思えなかった。

(まあ、イグナさんが居なくても、いつもどおりトレーニングすればいいか。)

と、人事のように考えながらシュミレーションルームの自動ドアに足を踏み入れると人の気配がした。

まさか、と思い部屋を覗き込むと、そこにはイグナがちゃんといて、士郎に気付くと親しげに話しかけてきた。

「おお、シロー遅かったじゃねえか。」

「イグナさん、来てくれたんですか?」

「来てくれたんですか、って、なんで?」

「ああ、いえ、なんでもないです。」

イグナの問いかけに、士郎は適当に言葉を濁した。

まさか、貴方が約束を守るとは思えませんでしたから、などど言うことは出来なかった。

それ以上に、イグナに対して疑念を抱いていた自分を、士郎は恥ずかしく思っていた。

「ところで、それは何ですか?」

士郎はそんな思いを誤魔化す為に、イグナの持っているヘルメットのようなものを指差し、尋ねた。

軍の物ではない、そのヘルメットのようなものには英語のロゴでバーチャルプレイヤーと記載されている。

「ああ、これはな、昨日、俺達強化兵士専属の科学者に特急で作ってもらったんだよ。」

「あの、話が見えないんですけど。」

イグナの説明になっていない説明に士郎は突っ込んだ。

「うーん、要するにだ。そこのシミュレーションシステムとリンクして、二人同時にバーチャルシュミレーションを体感できるようにしたんだ。」

なるほど、と士郎は嘆息するようにイグナの持っているヘルメット改め、バーチャルプレイヤーを見つめた。

そして、イグナの体をよくよく見ると、昨日とは違う、所々に機械がついた体全体を覆うような黒いスーツを着ていた。

「じゃあ、そのスーツも?」

「ああ、そうだ、これもリンクのための物。」

イグナは早速やってみよう、と士郎を促して、昨日のようにシミュレーションシステムに待機させる。

そして、なにやら、設定の画面で、なにやらコードを打ち始めた。

画面にcertify(認証)の単語が浮かび上がった。

「それじゃ、待ってるぜ、士郎。」

イグナはヘルメットを被り、士郎にそう告げた。

士郎もバイザーを装着し、眼を閉じる。その瞬間、意識が大量の電子情報の中へ融けていった。


 吹きすさぶ風、照りつける太陽を感じて士郎は眼を開けた。

目の前に勇壮な景色が浮かぶ、大草原だ。草が青々と茂っている。空は青く、雲ひとつ無い。

「どうだ、いいとこだろ?」

不意に後ろから声が掛けられる、当然ながら、イグナの声だ。

「初めて見るシュミレーションステージですね。」

「俺専用に作ってもらったんだ。」

感嘆の声を上げる士郎にイグナは得意そうな顔で答えた。

「ここなら、ある程度現実でやり合うよりはダメージが少ない、まあ、無傷は無理だけどな。

でも、修行にはピッタシだろ?。」

「ええ、でも、なんで僕のことをここまで?」

「言ったろ、妹が日本大好きなんだ。もちろん俺も、たこ焼き?は、美味いし、忍者もメチャクチャクールだ。侍ダマシイも捨てがたい。」

イグナは嬉々としてそう語った。

が、それはおいといて、とイグナは話を一旦打ち切ると、拳を構えた。

「やりますか。」

「武器は持たないんですか?」

見ればイグナは何の装備もしていない、さっきのスーツを着用しているだけだ。

「武器?おいおいシロー、いきなりそれはねえだ、ろっ!」

言い終わらないうちにイグナは地面を蹴り、一瞬で士郎との間合いを詰め、拳を振り上げる。

士郎はかろうじて武器を盾にして拳を防ぐが、武器ごとそのまま吹っ飛ばされた。

「士郎、お前の実力じゃ、まだ俺に武器を使わせるのは早い。だけど、この一撃が防がれるとは思わなかった。お前の今までの努力は無駄じゃなかったと思うぜ。」

イグナはニ、三回首を回して、倒れた士郎に微笑みかけた。

「シュミレーションじゃなければ、武器が壊れてましたよ。今ので。」

士郎はなんとか立ち上がり、イグナはそんな士郎を賞賛するように口笛を吹いた。

「どうだ、まだやるか?」

「愚問ですね。」

士郎は軍服についた土ぼこりを払いながら答えた。(シュミレーションの中なので実質意味は無かったが。)

イグナは今度も真っ直ぐに直進してきた。今度は不意打ちでない、正々堂々とした一撃だ。

士郎は横に移動しながら銃を撃った。その銃弾程度で、ましてやシミュレーション内で傷付く相手ではないと悟ったからだ。本気でやらなければこちらが命の危険を冒すだろう。

案の定、銃弾は全て、避けられた。蛇のようにしなやかな動きで、紙一重で、イグナは銃弾を回避する。

そして、イグナの蹴りが放たれた。横っ腹を叩く一撃。士郎の口から、うめき声が漏れる。が、それにとどまらない、士郎の体は宙を舞った。この瞬間、士郎の本能が擬似的な死を予感していた。

それは、シュミレーションのリアルさに本能が騙された結果だった。

直感的な死の直前に、士郎の意識はクリアになり、全てがスローモーションに見えた。

士郎は宙を舞いながら、その感覚に酔いしれていた。

地面にぶつかりそうになる直前、迫る地面に片手を付き、落下を阻止する。

そのまま、片手で全体重を柔らかく受け止め、ハンドスプリングをし、とうとう体が地面にぶつかることは無かった。だが、ここで終わりではなかった。本能が敵を倒せ、と士郎に命令を出す。

士郎は本能が命ずるまま、身を翻して、イグナに突進した。

イグナはこの突然の動きに面食らって、一瞬、どう動けばいいのか判断できなかった。

しかし、その間にも、士郎の放つ白刃がイグナの喉元を狙う。

イグナは直前で身をひねり、銃剣を受け流して、士郎の腹部に、軽い手刀を食らわせた。

士郎の意識は途切れ、大量の電子情報の渦から離脱していった。


 この時だ、この時感じたんだ。なんだか思考がクリーンになって、状況を全て自分が支配しているような、奇妙な感覚。

それでいて、僕は怖いぐらいに落ち着いていた。でも、自分自身が制御できないっていうか。

この時の記憶はあまり無いんだけど、度々、こういうことが起こるようになってさ、自分で自分自身が怖くなったのを覚えてる。

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