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テロ組織

セイファと士郎の二人は、エリアの日本支部にヘリで着陸した。

エリアは全世界のエリアを支援している国、約百十カ国に支部を置いている。

支部といっても直接的な戦闘能力を持つ兵士は存在せず、主に現地でsinや今回のようなテロリストの活動、それによる被害状況をまとめてエリアに発信するという業務を行っている。

何故この支部直接的な戦力を持たせないのかと言うと、一つはエリアの科学技術を漏洩させないためだ。例えば、武器一つでも、最新テクノロジーを使っているエリアの軍隊はその辺の情報を繊細に扱っている。もう一つの理由は、現場で勝手に判断され、入念な準備もないまま戦闘し、被害が出ることを裂けるためだ。と、表向きにはそう言われている。一つ目の理由は納得のいくものだが、二つ目の理由は少し曖昧な感じもする。何故なら、例え離れていても、情報化が進んだ今、作戦プランを練るのはそう難しいことではないからだ。それに、百聞は一見にしかずという古事があるとおり、現場の人間のほうが、リアルタイムの情報を手にしているはずだ。だから、戦力を分散させて、各国に置くほうが効率は良いように思える。

エリアは、もっと何か別の事を隠したがっている、という人間もいる。

エリア本国の戦力を分散させずに、他の国家からの攻撃に備えているという説もある。

だが、前者の意見は一つの大きな組織としては隠しておきたい秘密があるのが当たり前であるため、いまいち説得力が無い。

後者の意見は、エリアを今攻撃すれば世界は確実に破滅するのは明白であるために、やはり現実味が無い。

それでも、エリアという国家に、色々と不穏なものがあるのは確かだ。

だが、士郎は完全にエリアという国家を信用しきっていた。

かつてエリアの科学技術によって大切な人を助けられた経験がある以上、疑えと言う方が難しいのかもしれない。

士郎はルシフェル。スキアーを携帯し、セイファは長い刀のような武器を持っていた。

そんな二人に、日本支部の局長と思われる小太りで頭が剥げた中年の男が駆け寄り、丁寧な口調で話始めた。

「ようこそ、いらっしゃってくださいました。私はこの日本支部の局長を務めております。渡来ともうします。

 ささ、こんなところではなんですから、中で話しましょう。」

中年の男が指差したのは、体育館ぐらいの大きさの建物。

屋根には、日本の国旗と、エリアのシンボル、ドラゴンのような生物を上から巨大な剣で、串刺しにしているマークが並んでいる。

sinという生物の駆逐を表していると言われているそのデザイン、ドラゴンは、sinの中でも割とスタンダードな形態なので、このマークに使われた。

士郎はしばし、それを見つめていた。そんな、士郎に、渡来は笑顔で語りかけた。

「勇壮でございますよね、このエリアのシンボルは、sinを駆逐するという意思のこもったエリアの覚悟の象徴、如月総司、エリアの創設者が考案したというマーク、同じ日本人として誇りに思いますでしょう?」

「如月、ですか?」

士郎は聞き覚えのある苗字にピクッと反応した。如月ユリア、彼の幼馴染の名前。

「ええ、おや、知らないのですか?エリアを創設したのが如月総司という、各方面で、非凡な才能を発揮し、レオナルド=ダ=ヴィンチの再来とまで言われた天才を。

sinの脅威をいち早く察知し、改造兵やあなた方の持っている武器の仕組みを考案したのも全て彼です。

 しかし、惜しい。あの人が亡くならなければ今頃、もっと簡単にsinを駆逐できていたかも知れないのに。天才薄命とでも言いましょうか、本当に惜しい方をなくしたものです。」

「なるほど・・・。」

士郎は自分の不勉強を悔いつつ、感慨深げに頷いた。

「まあ、無理も無い。ほとんどの人間が今のトップ、ハザード=クライシスの功績だと思っているからな。」

ここで、セイファが口を挿んだ。

「ええ、そうでございますね。それにしましても、セイファ隊長はなんでも如月総司氏とハザード=クライシス氏のご友人でしたとか。」

「・・・ああ、その通りだ。」

しばらく間をおいて、答えるセイファ。

「高名なご友人を持たれるというのは何とも羨ましいものですなあ。」

そういう、渡来の表情にも仕草にも嫌味っぽいところは一切無く、純粋に羨ましがっているのが見て取れた。

お世辞を使わずに相手を褒めている、気付いたらそうしている、裏表のない好人物だと士郎は思った。

「まあ、無駄話ここまでにして、中に入って仕事の話をしようか。」

セイファはこのままでは一日でも喋り倒しそうな渡来を制して、半ば強引に現実に連れ戻そうとした。

渡来はまだもうちょっと喋りたそうに、少し残念そうな顔で、「ああ、そうですな、さ、どうぞこちらに。」と言って前を歩いていった。


渡来の後を追い、ガラスの自動ドアを潜り抜ける、そして、その先にはカードを認証する型のセキュリティドアがあった。おそらく部外者を立ち入らせないためなのだろう。

渡来はいそいそとカードを黒いスーツのポケットから取り出しその機械に読み込ませた。

ピーッという電子音が鳴り響き、ドアが開く。

「さあ、どうぞお入りください。」

渡来がにこやかに二人に言った。

セイファが先を行き、士郎がそれに続く、渡来が最後についていくという構図になった。

そして、ドアが閉まる。

一歩踏み入れれば、そこはさすがに支部といえどもエリアの施設だけのことはあった。

多くの役員がせわしなく動き、多くの作業をこなしていた。

コンピューターがものすごい量あり、その全てが、休むことなく操作されている。

いそがしそうなのは一目で分かる。

「例のテロリストの件で大分手を焼いておりまして・・・。」

渡来が言い訳のように二人に呟いた。

「まあ、その為に私たちは呼ばれたのだがな。」

「ええ、一刻もはやく事態を収拾せねばなりますまい。」

二人はしばらく渡来についていき、別室へ通された。

座り心地のよいソファーに二人が座ると、渡来が向かい側に座り話し始めた。

「さて、テロリストの制圧作戦のプランの方は聞いております。

 彼らは現在東京の渋谷に潜伏中です。ここに本拠地を構えており、フレイ=ヴァナディースもここに居るようです。」

ラグナロクは本拠地を次々に変え、今狙っている国家の主要な都市で本拠地を構え、信者を増やす。それにより、エリア反対派の暴動が今まで小規模ながら起きてきた。

そのほとんどは鎮圧され、事なきを得ているが、今回の日本では信者の数が膨れ上がり、終末思想を実現させようとする大規模な暴動が起こっている、それが渋谷だ。

テロリストの脅威だけでなく、操られ、いいように使われる市民、それは、エリアにとってはsin異常に厄介な敵かもしれない。しかも、フレイ=ヴァナディースという改造兵が向こうの見方についている。

「彼女が矢面に立って暴動を扇動しているようです。

 警察も彼女の前では無力ですからな・・・。」

もちろん、彼女とはフレイのことだ。

「とにかく、渋谷での暴動を扇動しているフレイ=ヴァナディースはこの神谷士郎に任せます。」

「彼にですか?」

渡来はセイファの言葉に、驚きを隠せなかった。

確かに、士郎はまだ子供にしか見えない。実際16歳の子供なのだ。

「彼たっての願いです。どうか、認めて欲しい。」

「・・・わかりました。彼に任せましょう。

 では、テロリストの本隊は貴方が叩くのですな?」

「ええ、彼らは恐らくはこの暴動を囮にして、国会議事堂をのっとる気でしょう。

 士郎には囮の相手をしてもらい、私が本隊を叩きます。」

セイファは淡々と語った。渡来は神妙な面持ちで頷き。

「分かりました、ご武運を!」

その姿には似つかわしくない、敬礼をした。

士郎は少し吹き出しそうになりながらも敬礼を返す。

セイファは無表情に同じく敬礼を返した。

作戦は始まる、裏切りと、信頼、それぞれの思いを胸に・・・。


 

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