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陰謀

国土面積が北海道に満たないエリアという国家、だが、世界をリードする立場として申し分無い勢力を持っている。その中心に高くそびえる巨大な建造物がある。

エリアの統括理事会本部だ。その最上階の一室、壁一面がガラス張りで、ここからエリア全てを一望できる。中央に巨大なコンピューターが設置されており、エリアが受諾している仕事の全てのリアルタイムの情報が次々画面に浮かび上がってくる。

今日の更新時件数は百十二件、その内七十二件が処理されている。

「いいあんばいだ。」

エリアの事実上のトップ、ハザード=クライシスは椅子に腰掛け、セイファに呟いた。

「何故、私が呼びされたのでしょうか?」

そんなハザードに、セイファは単刀直入に尋ねる。

「分かっているだろう?」

白々しい、とでも言うようにハザードはセイファを咎めるように答えた。

「ええ、大体は・・・。」

セイファは少し曖昧な返答をした。

「まあ、気が進まないのは分かるがね。

 かつての同僚を殺さなければならない、これ以上に辛いことはあるまい、君の性分からしてね。」

「まあ、彼女を倒せるのは私だけでしょうから、これにテロ組織も手を組んでいるとなると多少厄介かもしれませんがね。」

「反エリア組織ラグナロク、か。

 sinの襲来は神が決めた終末だとし、世界の終わりを受け入れるために我々の動きを邪魔する狂信者共だ。最後の審判の日は近いだとか何とか言う。

そんなオカルト集団が君の敵になるとは思えんがね・・・。」

「オカルト集団だから怖いのです、奴らは死を覚悟している、何をしでかすか分からない。」

しばし筋肉質な腕で、顎鬚を撫でながら思案するハザード。

「・・・君の口からからそんな弱音が出るとはね。

 いや、遠まわしの拒絶と言うわけか、彼女に手をかけるのはやはり忍びない。」

その通りだった、かつての同僚を斬る事に、セイファは躊躇いを感じている。

彼女に負けるとも、狂信者集団に負けるとも思わない。だが、一番心に重くのしかかっているのはそれだった。

「・・・・。」

あえて無言を貫くことで肯定の返事を返すセイファ。

「図星か・・・。」

その意図は正しく伝わったようだ。

「ならば、神谷士郎を向かわせよう。彼なら躊躇しまい。」

「彼は精神的に未発達な子供です、ますます現実味が薄い作戦です。

 それとも、まさか・・・。」

ハザードは薄く笑った。

「そのまさかだよ。

 彼には死んでもらう。ドルクは確認をするまでその決断を先延ばしにするつもりだったらしいが、科学者というのはいかんな、確証があるまで動こうとしない。その事実に関わらず葬ればいいものを。

 不確定要素は排斥する。彼とフレイ=ヴァナディース逃亡兵をぶつけ、その間に第四小隊を投入する。」

「つまり、エクスターミネートコマンド(撲滅指令)を出すと言うことですか?」

「ああ、そうだ。エリアにあだなす不安分子は即刻排除せねばなるまい。

 今回の作戦に失敗は許されない、不穏分子三つの排斥が目的なのだから。」

ハザード=クライシスは残忍に笑った。狡猾にして不敵な初老の老人。

表の顔は、スポーツマンで頭脳明晰、事実上エリアの指揮を任されたさわなかなリーダー。

だが、裏ではエリアに仇名す者は全て排除すると言う冷徹なまでの覚悟を持った独裁者だ。

周りにそれが独裁であることを悟らせない、周りは心から自分の命令に従っているのだと信じ込ませる、それが真の独裁者だと、ハザードは考えている。

「如月の計画を実行し、世界に安定をもたらすのだ、その為に君には汚れ仕事をやってもらう。

 頼む、死んでいった如月のためだ。」

この言葉も、悲しそうな表情も、全ては欺瞞に満ち溢れたものだ。

それでも、彼の演技には穴が無い。セイファは簡単に篭絡される。

「分かりました。三つの不穏分子の排斥、必ず成し遂げましょう。」

セイファの顔は今ひとつ優れないものだったがハザードは気にはしなかった。

首を縦に振ればそれを絶対にやり遂げる、彼はそういう男だと知っていたからだ。

セイファが部屋を去った後、ハザードは一人、ほくそえんだ。

「安心するといい如月、君の計画は着々と進んでいる。

 そして、私にはその先の物が見えている・・・。」

ハザードは高笑いした。事実上の世界のトップであるこの場所、この地位で、世界を今動かしているという確信を、彼は今持っている。

ディスプレイに、眼をやり、新たな情報を頭に入れながらハザードはその確信をさらに強めていた。

期日は四日後、その日に神谷士郎も、フレイ=ヴァナディースも、ラグナロクも、全ては消える。



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