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極論、あの力は・・・

カタカタとパソコンのキーを叩く音が暗い部屋に響く。

この時代になっても音声認証による入力はあまり普及していない。

いちいち正確性にかけるからだ。

ドルクは一旦手をとめ、コーヒーの入ったカップを手に取り一口すすった。

ここはこの科学者の研究室だ。ドルクはいつもここで研究を行っている。

「極論、やはり苦いものはあまり好きにはなれんな。」

ドルクはパソコン以外何も乗っていない机の上にマグカップをおいて呟いた。

みれば、彼の研究室は殺風景と言っていいほど物が置かれていない。

パソコンと机だけだ。

部屋もあまり広くは無く、たたみ四畳分くらいのスペースしかない。

それに窓があるだけで、蛍光灯が無い、まるでここは刑務所の中のようだった。

しかし、彼はそれを不便とも思っていない。武器の開発は別の場所で行っているので、彼はここで設計図だけを作ればいいのだ。

蛍光灯も夜になれば、パソコンの光がライトの変わりになる(使っていない間もつけっぱなしなので。)ので必要ない。

彼の頭脳と、コンピューターさえあれば、極論、彼はどんな状況でも研究をやり遂げる。

ドルクは再びキーボードを打ち始めた。

神谷士郎特注の兵器、彼はその構想を練っていた。

その上で、士郎の能力の正体を知るのは重要なことだった。

士郎の力の正体の仮説はもう既に立てている。

(極論、ただの人間である神谷士郎があそこまでのポテンシャルを発揮したのは、フローと呼ばれる状態に達したからに違いないか。)

フローとは人間がその時していることにのめりこみ精力的に集中している状態をさす。

その状態にはいれば、人間は自己のポテンシャルを最大限に生かすことが出来る。

(彼の力は改造兵の力と対極にあると言っていいだろう、肉体的な条件ではなく、精神的な条件によって人間としての限界を超える。)

パソコンのプログラムに例えればハードウェア(肉体)ではなくソフトウェア(精神)の性能を上げることで改造兵と言うハードウェアと同じ性能を生み出していることになる。

しかし、それだけではあの力を引き出すことは難しいだろう、とドルクは考える。

ハードの限界を超えるソフトはハードに多大な負担を掛ける。

事実、神谷士郎はその圧倒的な力がフィードバックして身体に多大なダメージを受けていた。

彼の力に彼自身の体が着いて行っていないのだ。

実は人間の体は人間自身が思っているより莫大なパワーを生み出すことが出来る、しかし、事故防衛本能がそれをセーブしているのだ。

(神谷士郎は、自らそのリミッターを外すことが出来るわけだ。)

ドルクは更に思考をめぐらせる。そして、ここまで来て、ドルクは更なる疑問を投げかけた。

しかし、ここまでの推論があたっていたとしても、それだけであそこまでの力を引き出すことが出来るだろうかと。

ただの人間一人の力などたかが知れている、だからこそエリアは改造兵を作り出したのだ。

しかし、ただの人間がもつ力を十二分に発揮できれば改造兵に匹敵するという事実は、エリアの叡智の結晶への冒とくに他ならないではないか。

ドルクは唇をかみ締めて自信に問いかけた。

人間の秘めた力はまだ奥底に眠っていたと言うのか、それとも、もしかすると、彼、神谷士郎と言う人間は・・・。

「極論、どちらにしても私がやることは一緒だ。」

ドルクは一瞬止まった腕を再び動かして、泥沼にはまりかけた思考を元に戻した。

パソコンのディスプレイには完璧に仕上げられた武器の設計図が表示されていた。

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