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敗北感

電子情報の渦から脱した意識が現実世界に戻ってきた。

士郎は苦い敗北感を味わっていた。そして、テイルズも同じようにまた・・・。

バイザーを二人とも外し、立ち上がると自然とお互いに向き合うかたちになった。

「はい、テイルズの反則負け~。」

「ていうかその前に決着は付いてたんじゃないかニャ~。」

ロトとノアが向かい合う二人、というよりテイルズにまくし立てた。

「ああ、俺の負けだ、神谷士郎、お前の入隊を認める。」

「待って下さい、僕は負けたじゃないですか!」

敗北を認めようとするテイルズに士郎は必死で反論する。

「いや、最後のあれは本当に反則のようなもので、あの武器の性能が俺の力を向上させた。」

「・・・。」

士郎は黙りこくった。

「あれはニルヴァーナといってな、極論、私が発明した兵器の特殊能力のようなものだ。

実はあれは生態兵器なのだが、所有者の細胞を喰らい・・・。」

「所有者の細胞を喰らい、別の新しい細胞に作り変えて全身に増殖させる。

書き換えられた遺伝子情報は所有者の能力値を根本的に変えて、更なる高みへと引き上げることが出来る。ただし、体中が書き換えられた遺伝子情報に拒絶反応を起こすので使えるのは今のところごく短い期間だけ。この期間が終了すると同時に新しく作り出された細胞は死滅する。」

説明しようとする科学者の言葉をさえぎり、士郎は続けた。

「その通りだ。極論、君は知っていたのか?」

「はい、イグナさんから教えてもらいました。」

科学者はイグナの方を向くと、気に入らん、と言うような顔でにらみつけた。

「極論、極秘事項を・・・。」

「ははは、ほら士郎も一番小隊に入るんだからよ。」

「ふん、まあいいとにかく、あの能力を使った時点で君が勝てるはずは無かった。

ゲームで言うならキャラクターのパラメーターを直接書き換えるようなものだ。

極論、レベルで言うならレベル99から一気にレベル150、限界を軽々と超えることが出来る。」

「それでも、僕は負けました。」

士郎は最初から一番小隊に入ることを望んではいなかった。

敗北も簡単に認めることが出来る。

「いや、反則以前にお前は俺を一度倒そうと思えば倒せる状態にあったはずだ。

俺の負けだ。」

テイルズもまた食い下がる。

「いいえ、僕は確かにあの技で負けたんです。それにあの技を使われることを望んでいました。

それでも勝てるとふんだんです。」

「それでも反則は反則だ!俺の負けだと何度言ったら分かるんだ?」

二人の意地の張り合いは口論に達した。

あーでもないこーでもないと泥沼の口論は他のメンバーが呆れて外に出てからもしばらく続いた。

「で、結局どうなったんです?隊長。結局士郎は入るんですか?」

帰り際にまだ口論の声が騒がしく聞こえるガラスのドアを背にイグナはセイファにたずねた。

「こうなれば本人の意思しだいだ。もっとも彼は元々あまり乗り気では無かったみたいだから。

どうなるかは大体予想が付くが。」

「そうですか。」

イグナはちょっと片を落とし、サラもまたうなだれた。

「そんなに彼をこの小隊に引き込みたいならあの口論に割って入ったらいいんじゃないかな。」

そんな二人にサクヤが声を掛けた。

「あの中に入っても無駄だよ、サクヤ。」

「そうですよサクヤさん。」

「ま、確かにそうだね。」

そういい残して、サクヤは去り、他のメンバーもその場を後にした。

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