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ニルヴァーナ

テイルズは剣を幾度と無く振り下ろし、またなぎ払った。

一メートルほどの大剣でも振りつづけることに造作は無い、しかし、テイルズは何故か焦りを感じていた。

確実に勝っているのはテイルズでありその攻撃は間一髪の所で避けられているものの相手を防戦一方に持ち込んでいる。

(くそっ、一般兵にしては確かに素早い、攻撃が当たらない。)

それでも、自分の攻撃を、確実に当てられるとふんだ攻撃さえも士郎は避け続けている。

今もテイルズが放った突きを士郎は銃剣を横から両手で叩きつけ軌道を反らした。

が、ここでテイルズは士郎の隙を感じ取った。士郎は次の攻撃、すなわち剣による斬撃を警戒していた。しかし、テイルズは反らされた攻撃の勢いをそのまま利用して渾身の左拳を士郎に放った。

腹に衝撃が走る、口から嗚咽が漏れ、そのまま士郎は吹っ飛んだ。

さっきの吹っ飛ばされ方とは違う、確実に攻撃はヒットして、士郎を華奢な体を交通事故にあったかのような衝撃が襲った。

テイルズは完全に勝利を悟った。これが士郎の力を引き出す結果になるとは知らないで。

吹っ飛ばされた士郎の体に死の予感が迫っていた。それはバーチャルリアリティが生み出したにすぎない架空の感覚だったが、体はそれを理解しないストレートにそれを自分自身の死が近づいているのだと錯覚する。

その瞬間、士郎は今までの自分とは違う別次元に立つのだ。

またも木に叩きつけられそうになったところを士郎は身をひねって大木の方に体を向けた。

ぶつかりそうになる直前に銃剣を木に差し込んで衝撃を緩和した。


その頃、この光景を見ていたメンバーはそれぞれ異なった反応を見せていた。

「ニンジャ?もしかしてシローさんってニンジャの末裔なの?」

「いや、それは無いんじゃないかなサラ、彼は風魔ってい言う苗字でも甲賀って言う苗字でもないだろ?」

「それなら天狗なんじゃないかニャー、聞いたことがあるぜい天狗はあんなふう木に張り付くんだ。」

「いや、確かテングはもっと鼻が長いはずだ。」

あーだこーだと言い争っているメンバーをよそにドヴェルグは冷静な科学者としての眼で士郎の様子を見守っていた。

彼はパソコンをシュミレーションシステムにつないで士郎の脳波、血圧、脈拍などのあらゆるデータを閲覧していた。

「すばらしい。」

ドヴェルグは笑った。彼の、神谷士郎の力を使えば目的が達成できるかも知れない。

士郎の力を、ドヴェルグはその正体までを見破った。

モニターを見るその眼が怪しく光る。セイファはそんなドヴェルグの様子をじっと見詰めていた。


 士郎の反撃が始まる、士郎は今、怖いくらいに落ち着いて傲慢なまでに自信に満ち溢れていた。

負けるわけが無い、士郎の体から湧き上がる自信と力が士郎にそう思わせた。

剣を木から抜きさり、、士郎は飛び降りた。

テイルズは驚きを隠せないようで、士郎のそんな姿をまじまじと見つめていた。

それでも自分を見失わない程度には精神力があったのでテイルズは剣を構えなおした。

正眼に構えた切っ先を士郎に向ける。

が、次の瞬間、士郎の姿はその切っ先の先から消えていた。

「何?」

銃剣がテイルズの左の側面から突き出された。

もちろんそれは士郎の放った突き、それがテイルズの腹部を狙った。

テイルズは剣でそれを防いで振り払った。

(今の軌道、急所は外していた、なめやがって。)

今の士郎が急所を外すとは思えない、バーチャルリアリティの中での怪我は現実世界にもフィードバックするが再起不能の状態になるほどの怪我はしない。

にもかかわらず士郎は急所を外してきた。テイルズはその事実に異常に腹がたった。

「ふざけるな!!」

剣を振りかぶって士郎に突進する。その攻撃には精細が無かった。

士郎は簡単にそれを避けると、再び銃剣を突き出した。

今度は首筋に後一歩ののところで銃剣が刺さるという直前まで迫っている。

テイルズの心臓が早鐘のようにうった。

ドクッドクッと言う音がテイルズの耳に聞こえた。

突きつけられた切っ先、向けられた銃口、この距離ならどちらが襲ってきてもテイルズは死ぬだろう。

これが現実世界ならば、だが。

テイルズは唇をかみ締めて、それでも負けを認めようとしなかった。

剣で士郎の銃剣を振り払い、もう一度剣を振り下ろす。

(負けるものか、絶対に、そうでなければ俺は、俺がいる意味は、ない。)

三年程前の話、この日テイルズは改造兵になる事を決めた。

親しい人の死が彼をそうさせるにいたった。だから強くなる、そう決めたのだ。

テイルズは一旦距離をとって剣を目の前で横にし、もう片方のてでそれを支えるように持った。

「フランベルジェ。」

テイルズはそう呟くと、剣が赤い光に包まれた。

それは拡散するように全体に飛び散った。士郎はその眩しさに眼をそらした。

光が収まると、テイルズがそのままのポーズで立っている。

しかし、一つだけ違うのは、テイルズの体が赤く発光していることだ。

「ここからが俺の本気だ。」

テイルズは動き出した。蛍光灯にはやや届かないくらいの明るさの光が残像をのこして、高速で動いた。士郎はその美しさに眼を奪われ、固まった。決着は付いた。

士郎の意識は次の瞬間消えていた。

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