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Love me, Kitty!!  作者: りほ
5/6

What should I do?

未成年の飲酒はダメ絶対!

グラスを揺らすとボール状の氷がぐらぐらと音を立てる。氷を浸している液体は見てるだけで酔いそうなほど濃い色だ。だがこれくらいでなきゃやってられない。


謹慎処分を受けてすぐに仲間の何人かと共同生活していた家を出奔した。2ヶ月ほど監視がついたものの俺は14年の人生の中で一番に退屈な2ヶ月を過ごすよう努めたし、現住所もきちんと本部に届け出たから今はもう自由に動ける。

だが謹慎中の俺たちに仕事なんかあるはずないから、こうやってバーかカジノにたむろって酒だの煙草だのをくらって時間をつぶしているわけだ。時々腕慣らしと銘うって組手をするのが唯一の気晴らしだなんて最悪にもほどがある。


「あんまり呑むと身体壊すよ」

「このくらいでうるせぇな」


隣に腰かけたルーカの無関心なたしなめを退けグラスをあおぐとやつと一緒にやってきたシャラが「かっくいー」と手を叩いた。絞められてもいないのに首が真っ赤になっているのを認めてため息をつく。


「酔ってんじゃねえかそいつ。俺を止める前にその女を寝かせろ」

「50シュテル」

「死ね」


ルーカの足元に座り込んだシャラがけたけた笑って「しね!」と唇をとがらせる。バカだろ。


「フーベルはどうだった」

「まあいい感じに荒れてたね。おかげで小金がざっくざく。やっぱり軍政はいいねぇ、腐敗しててつけいる隙がいっぱいあったよ」

「国境は」

「エメリア側は持ちこたえてるけどフーベル側が厳しいね。末端の兵士が追剥に成り下がってる。おかげで入ってきた難民が強盗になりかねないってんでこっち側では十把一絡げに拘束されてるみたいだ」

「ベルレアファミリーは動いてるのか?」

「ダメ。こっから先はお金とるよ」


舌打ちを隠す気も起きない。守銭奴が。


「50シュテル」

「150」

「70」

「145」

「…やっぱ死ね!」


ソファを蹴ってグラスを投げつけたがルーカはひらりとかわしてテーブルの向こうへ逃げた。


「やれるものならやってごらんー」

「待てこの…っ」


投げた灰皿もかわされ逆にフォークが飛んでくる。しゃがんだ先でシャラが「ひゅーひゅー」と無責任に応援してくるのがよりいっそう耳障りでムカつく。

テーブルを蹴っ飛ばしルーカを追い詰めようとしたが逆に乗り上げられて顔面に蹴りがとんできた。掴んで引きずりおろし馬乗りになろうとしたところで右足を払われ膝をつく。間をおかず横に転がるとさっきまで俺がいたところで俺の頭ほどもある花瓶が粉々になっていた。

殺す気か!

割れた花瓶の破片を飛ばそうとしたところで肩を強くつかまれた。


「よせ2人とも」

「触んなオタク野郎!ルーカてめぇぶっ殺す!」

「お優しいサルヴァトーレ様におできになるので?」

「―――死ねえええぇぇぇぇ!!」

「挑発するなルーカ!トトも落ち着け!俺たちは謹慎中なんだ何が原因で処分されるか分からないんだぞ」


降格や監禁ならまだしもファミリーから追放されでもしたらエンヴォナローラの対面もつぶれる。親父がどうかなるとは思わないがお袋はやべぇ。処刑はもっとマズい。


「……くそっ」


肩の手を乱暴にふり払う。マスターがさっさともぐりこんで避難していたカウンターに金を叩きつけ、ドアを蹴破るとたまたま廊下にいた下っ端がびくっと背筋を震わせた。睨みつけると飛ぶように逃げていく。


「トト!」


腰抜けめ。




上層部のいう通り謹慎していたってそれがいつ解除されるかなんざ分からない。ボスの不興をかって、ということなんだからその怒りを解かなきゃいけないわけだがこっちにはその心当たりがないのだからどうしようもない。謝りに行くだけでは門前払いどころか青あざ作って帰ってくることになるのはバカどもを見ていて学習済みである。

だがこのもどかしさは理解しているからといってどうにかなるようなものではないのだ。ボスの意向は理解している。俺たちに何を求めているのかも分かっているつもりだ。だがこっちが”謹慎”している間に周りの間抜けどもはどんどん株をあげて出世していく。


「くそ!」


むしゃくしゃする。巷では自分の存在価値が見出せないとかなんとかほざいて自殺するのが失業者の間で流行っているらしいがそんな連中の気持ちが分かるようになるなんて想像もしていなかった。存在価値なんか見出そうとしなけりゃ一生見出せないもんだろ!


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