[ホラー短編]最終面接のお迎えーお祈りメールー
深夜二時のワンルーム。パソコンの青白い光が、床に散らばった履歴書の残骸を照らしている。
二十四歳のタカシは、もう何度目かわからない「お祈りメール」を眺めていた。
「今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます」
その定型文が、彼の耳には「もうお前の居場所はこの世にない」という宣告に聞こえた。ふと見ると、部屋の隅に置いたままの、真っ黒なリクルートスーツが立っているように見えた。
いや、立っているのではない。吊るされているのだ。
クローゼットのハンガーに掛かっているはずのスーツが、まるで中身があるかのように膨らみ、天井からだらりと垂れ下がっている。
「……あぁ、次はそこか」
タカシは不思議と恐怖を感じなかった。むしろ、ようやく「次のステップ」が決まったような、奇妙な安堵感が胸を支配した。彼は椅子に立ち、ネクタイを手に取った。一番お気に入りだった、勝負ネクタイだ。
首に輪をかけ、意識が遠のいていく中、真っ暗な視界にパッと明かりが灯った。
そこは、見覚えのある会議室だった。
正面には、顔のない三人の面接官が座っている。
「おめでとうございます。君を『採用』します」
真ん中の面接官が、口のないはずの顔で笑った。
タカシは喜ぼうとした。しかし、足元を見て凍り付いた。
彼の足は、会議室の床には着いていなかった。
それどころか、彼の背後には、同じようにリクルートスーツを着た何百、何千という若者たちが、天井からぶら下がったまま、無表情でこちらを見つめていた。
「我が社は年中無休、退職は一切認められません。君の『命』を資本として、永劫に働いてもらいます」
面接官が差し出した内定通知書には、血のような赤色でこう書かれていた。
『勤務地:地獄 営業部』
タカシは叫ぼうとしたが、喉が締め付けられて声が出ない。
ただ、どこからか聞こえる「お祈りいたします」という低い合唱に包まれながら、彼は永遠の初出勤を迎えた。




