表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

ホラー短編

[ホラー短編]最終面接のお迎えーお祈りメールー

作者: 狐乃香
掲載日:2026/03/05

 深夜二時のワンルーム。パソコンの青白い光が、床に散らばった履歴書の残骸を照らしている。

二十四歳のタカシは、もう何度目かわからない「お祈りメール」を眺めていた。


「今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます」


 その定型文が、彼の耳には「もうお前の居場所はこの世にない」という宣告に聞こえた。ふと見ると、部屋の隅に置いたままの、真っ黒なリクルートスーツが立っているように見えた。


 いや、立っているのではない。吊るされているのだ。


 クローゼットのハンガーに掛かっているはずのスーツが、まるで中身があるかのように膨らみ、天井からだらりと垂れ下がっている。


「……あぁ、次はそこか」


 タカシは不思議と恐怖を感じなかった。むしろ、ようやく「次のステップ」が決まったような、奇妙な安堵感が胸を支配した。彼は椅子に立ち、ネクタイを手に取った。一番お気に入りだった、勝負ネクタイだ。


 首に輪をかけ、意識が遠のいていく中、真っ暗な視界にパッと明かりが灯った。


 そこは、見覚えのある会議室だった。

 正面には、顔のない三人の面接官が座っている。


「おめでとうございます。君を『採用』します」


真ん中の面接官が、口のないはずの顔で笑った。

タカシは喜ぼうとした。しかし、足元を見て凍り付いた。


 彼の足は、会議室の床には着いていなかった。

それどころか、彼の背後には、同じようにリクルートスーツを着た何百、何千という若者たちが、天井からぶら下がったまま、無表情でこちらを見つめていた。


「我が社は年中無休、退職は一切認められません。君の『命』を資本として、永劫に働いてもらいます」


面接官が差し出した内定通知書には、血のような赤色でこう書かれていた。


『勤務地:地獄 営業部』


タカシは叫ぼうとしたが、喉が締め付けられて声が出ない。

ただ、どこからか聞こえる「お祈りいたします」という低い合唱に包まれながら、彼は永遠の初出勤を迎えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ