表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

第5話 天使と悪魔と右か左か


「いーえ、右です」

「左に決まってんだろ」


「右ったら右なんです! 穢れし悪魔が!」

「滅べ腐れ天使が! 左以外ありえねぇーんだよ!」


 俺たちはいま馬車に揺られながら、街へと向かっている。おじさんのご厚意で乗せてもらっているのだ。

 あれほどの惨事を「かまわんかまわん! ガハハハハ」豪快な笑い一つで吹き飛ばした、寛大さと人の好さには本当に頭が下がる。


 例の騒がしい二人も強引に付いて来ているのだが……。

 なんでもこの先が別れ道になってるらしく、どちらが街に通ずるみちかを俺の頭越しで言い争っているのだ。まるで子供の喧嘩だ……。商人のおじさんに聞けば済む話なのに。


 そんなくだらない状況を、俺は体育座りで身を細めて聞かされてる訳だが。二人の足がげしげしと俺の両脇に当たり始めたので、たまらず上に向かって――


「ねぇー二人とも、さっきも言ったけどさ。ヒートアップ……徐々に勢いづいて収拾がつかなくなるような本気はやめてよね」


 ホーリーランスとか言っていたからヒートアップは通じると思うけど、念のため丁寧に言っておこう。

 また伝説の名前みたいな武器出されて、暴れられても困るからね。

 言葉を聞いた両者は、真下の俺に視線を下ろすと。


「んなこたぁわかってんよ。あんな極上の魂見せられちまったんだからな、悪魔になりたいとぜってぇー言わせてやんよ。ついでにこのクソも滅ぼしてやんよ」

「もちろん理解しておりますわ。素晴らしい結晶の輝きでしたからね、是非とも天使になっていただきたく存じます。ついでにこちらのバカも消し炭にしたく存じます」


 …………わかってるのやら、わかってないのやら。

 

 出会った時からもこの二人が度々くちにしていた言葉。


 馬車の中で改めて聞いた話によると『魂』には『輝き』があるらしい。

 しかもそれは『人間』にしか発現しない現象らしく、その『魂の輝き』が強ければ強いほどいいみたいだ。

 

 驚いたのが魂は『絶対不可侵』なんだと。魂の持ち主が生前に『自己決定での選択』をした場合のみ、死後に『帰属』を決められるとか。

 

 簡単に言えば、天使や悪魔でも侵せない強制はできない『人間の主権』――だから勧誘をしているってところなのかな。


 最初に謎の声が言っていたのもこの魂のことだよね、きっと。

 でも磨くとか紡ぐとか、どうしたらいいんだろ……異世界だけあって、やはりモンスター倒したり、剣術や魔法とかスキルなのかな!?

 待ち遠しいなぁ~。この異世界で、それがしたくてたまらないんだよね! 楽しみにしてるんだよね! 早く街に着かないかな~。


 胸をときめかせる俺に、両者の足先、膝蹴りがちょこちょこ当たる。


「ッテ、イテテ……痛いよぉもぉぉ」


 なんで俺を挟んで小競り合いを続けるのよ……。


 それにしても……勧誘するならもう少しやり方とかあるような気がするんだけどな。普通は好かれようとしたり、もっと甘い言葉をかけたりするものなんじゃないの?

 少なくとも、こんな風に人を足げにはしないと思うんだけど。

 やっぱこの二人、ちょっと変わってるのかもしれない。変なのに目を付けられちゃったかな……。


 そもそもさ、なんで自陣に加えたいんだろ。チカラじゃ恐らく人間より圧倒的なのに。チカラ以外のなにかが魂にはあるってことなのかな。

 疑問をぶつけてみても「なったら教えてやる」「選んだらお答えしますわ」などというズルイ返答ばかりだったし。

 忘れてたよ、二人の性格を……。

 

 ――そんな諸々のことをつらつら考えつつ、俺は睨み合う両者を見上げていた。

 ほのかに香る、日向のような匂いと、甘い果実のような香り。そのかぐわしさにいざなわれ、なかなかに大きい四つの見事なたわわをただ眺めている、そう見えなくもないことにハッとした時……とある視線に気付く。


「カデキお兄ちゃん……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ