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学生魔導士は街を駆ける ー現代社会における魔導の在り方ー  作者: 小仲はたる
第2章 アイドル魔導士、がんばる

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第2章:第2話『みんなでピザ会』

 莉央奈(りおな)の魔導隊入隊祝いパーティーは都内某所のファミレスで執り行われた。ピザ食べ放題のバイキングがあり、ミニケーキなどのちょっとしたスイーツも味わえる。学割のランチが格安なのもあり、幹事の美心(みこ)がこの店に決めたのだった。


「それじゃ、莉央奈先輩。おめでとうございまーす! 」


 美心が音頭を取り、周りの迷惑にならない程度にジュースで小さく乾杯する。中等部三年の美心、高等部一年の大治(だいち)、二年の真那斗(まなと)、莉央奈、律華(りっか)、三年の常盤(ときわ)聡太(そうた)。学生第一魔導隊に所属している学生魔導士全員が集まった。


「良かったね、莉央奈ちゃん。だけど、無理だけはしないでね。皆をちゃんと頼りにするように」


 トレードマークである黒縁のスクエア眼鏡の位置を整えながら、聡太が莉央奈に声をかけた。マッシュヘアの下の表情はいつもどおり優しい雰囲気を纏っているが、真剣な表情で、本気で心配をしている様子だった。


「はい、肝に銘じます。聡太先輩のことも、頼りにさけてもらいますね」


「うん、一番年上だからね。この前皆が襲われた時も駆けつけられなかったし、良いところ見せないとね」


「休みの日だったし仕方ないっすよ。俺とみーこはたまたま仕事が入って外に出ていただけです」


「そうそう。聡太先輩はいつも間が悪いだけで、先輩自身は何も悪くないです! 」


 美心のフォローになっているのかわからない言葉を受けて苦笑する聡太。


「確かに、先輩は運が悪かったり、ちょっと幸薄いところがありますね。日頃の行いは良いのに」


 誠奈人が何気なく話を広げたが、痛い事実を突かれた聡太のショックを大きかった。


「そう、だよね…この前も買ったばかりの自転車が盗まれたんだ。ちゃんと鍵をかけてたんだけどね…」


 どんよりと沈み込んでしまう聡太。事の発端となった誠奈人と美心に冷たい目線が飛ぶ。誠奈人先輩の方が悪いと言わんばかりに、美心は懸命に誠奈人の方を指差す。お前も同罪だと誠奈人も美心を指差したが、そんな二人への目線はどんどん冷え切っていく。それを察した誠奈人と美心は、ここは争っている場合じゃない、協力しよう、と顔を見合って頷いた。


「だけど聡太先輩は本当に頼りになりますから。俺達をいつもまとめてくれるリーダーですよ。先輩がいなかったら全然まとまらないです」


「そうですよ! 先輩はいつも優しくて頭も良くて、戦闘になった時も皆の支援を最優先してくれるから、とっっても助かってます! 」


「聡太先輩、いつもありがとうございます」


「尊敬してますよ! 」


 見え見えなヨイショだったが、聡太は苦笑いしながら指でほおを掻く。


「ありがとう。僕は良い後輩を持って幸せだよ」


「いやぁ、こちらこそ! ほら、ピザいっぱいありますよぉ。どれがいいですかっ? 」


 なんとか持ち直し、胸を撫で下ろす誠奈人と美心。律華、大治、莉央奈は、まぁいいだろう。でも今後は気をつけるように、と言わんばかりに、口をへの字に曲げて頷いていた。


「パイナップルのピザ、初めて食べてみようかな。せっかくだし、食べた事ないものを」


 テーブルの上に並べられた様々な種類のピザ。バイキング形式のため、適当にいくつか取ってきてあったが、その中からいきなり特殊な一品を選ぶ聡太。


「かなり好み別れますよね。みーこは甘いものはそれだけで食べたい派です」


「俺はわりと好きかな。食べてみたら思ったより悪く無かった」


「誠奈人君は甘いもの好きだね。どれ…」


 パイナップルピザを一切れ摘み、先端から口に運ぶ聡太。しばらく口を動かしていたが、徐々に眼を細めていく。じっくりと咀嚼しながら、完食する。


「…うん、まぁ、そんなに…かな」


「それは自ら地雷源に足を踏み入れたんですよ。みーこ達悪くないですよ」


 聡太が薄幸なのは、他の人であれば近付かないような、見えている地雷も踏みに行ってしまう事が要因の一つではなかろうかと、誠奈人は密かに思った。一方、律華、莉央奈、大治は三人で話をしていた。


「大治は普段ピザとか食べてなさそうね」


「体作りには気を遣ってますからねー。でも全く食べないわけじゃないすよ。普通に美味しい物も定期的に食べます。その分調整したりしますけどね」


「たくさん食べたら、しばらくはヘルシーな物を続けたりとか? 」


「そんな感じっす。脂肪分とかカロリーとか、そういうの計算するの得意なんで」


「すごいねぇ。女子としてはそのスキル羨ましいよ」


「食事だけじゃなくてトレーニングもキッチリ計画してこなしてるんだから、レベルが違うわ」


「体作りが趣味みたいなもんすからね。女性がダイエットして達成感を得るのと似たようなもんじゃないですかね」


「趣味と実益を兼ねてるってところかしら」


「まぁそうすね。この仕事してたら、いくら鍛えても鍛え過ぎってことはないですからね」


「あんまり鍛え過ぎると、そういう趣味の女性しか寄ってこなくなるわよ」


「それは…あんま考えてなかったですけど。でも、それで自分の好きな物を止める気にはならないっすね」


「おぉ…そういうの、かっこいいね」


「そうですか? 嬉しいな。莉央奈先輩も一緒にやりますか。筋トレに食事制限にロードワークに…」


「いや、そういう話ではなくてね」


「莉央奈を筋肉ダルマにしたら怒るぞ大治」


 誠奈人が割って入り、筋肉の魔の手から莉央奈を救う。


「誠奈人くんは筋肉付いた女の子は趣味ではないの? 」


「そういう趣味はない。筋肉があって嫌という事はないが、あんまりムキムキなのは…うん…」


「ふむふむ。覚えておくね」


「覚えておく程の事じゃない」


(莉央奈、誠奈人の好みのタイプ気にしてるのね…)


(莉央奈先輩、誠奈人先輩の好みのタイプ気にしてるな…)


「筋肉といえば、戦ってる時みんなすごく俊敏に動くよね。わたしもある程度は体を鍛えておいた方がいいのかな」


「そうだな。嫌と言うほど目にしただろうが、魔導士といっても肉弾戦になる事は多い。魔力で体を強化する事もできるが、元の身体能力が高ければ魔力の消費なくそれを補える。どんな魔導を使うかにもよるが、動けるにこしたことはないな」


「でも…やっぱり莉央奈はあんまり筋肉つけすぎちゃダメよ。今のままでいて」


 律華は逞しくなった莉央奈を想像し、それを拒んだ。


「えぇ? わたしも律華ちゃんみたいに、かっこよくなりたいなぁ」


「護身術なら教えるわよ。そんなに筋力が無くても扱えるから」


「それでも筋肉はあった方がいいっすよ。筋肉は人の悩みの大半を解決してくれる」


 筋肉の力を信じてやまない大治が口を挟むが、一瞬にして目の光が消えた律華が鋭い視線を送りながらドスの効いた声で釘を刺す。


「ちょっと黙ってろ大治」


「あっはい、スミマセン…」


「莉央奈は今の可愛い莉央奈が一番なの。いい? 」


「う、うん! ありがとう律華ちゃん! 」


 律華は怒らせないようにしようと、瞬時に悟る莉央奈だった。


「律華せんぱーい! みーこの事はそんな風に言ってくれないのにぃ」


 美心が頬を膨らませながら抗議の声を上げる。


「あなたにはファンの人達がいるじゃない」


「それはそうですけどぉ」


 不満そうに口を尖らせる美心の頭を、莉央奈はよしよしと撫でる。美心は猫のように眼を細めて口元が緩んだ。


「みーこちゃんは、律華ちゃんに褒めてもらいたいんだよね? 」


「そうなんですぅ。律華先輩はいつもみーこに厳しくってぇ」


「はいはい。悪かったわよ。みーこも可愛いわ。いつも頑張ってて偉いわね」


 律華は苦笑いしながら美心に優しく声をかける。美心に対しては普段厳しい事も言うが、嫌いなわけではない。誠奈人と同様、彼女の長所を認め、凄いと思っている。


「えへへぇ。まぁ、みーこはぁ、かわいくて頑張り屋さんで最高にプリティーな皆のアイドルですからねぇ」


「そうね。みーこはいい子。かわいいとプリティーは一緒だけど」


 律華に褒められてご満悦な美心。鋭い指摘を受けても全く気にしていない。


「早く食べないと時間になっちまうぞ。もぐもぐ」


「あーっ、誠奈人先輩! そのチョコバナナピザはみーこが狙ってたんですけど! 」


「早い者勝ちだね。また自分で取ってくるんだな。うまいぞこれ」


「おのれぇぇ。誠奈人先輩はそうやっていつもオイシイところを持っていくんだっ」


「おまえももっとアンテナを張るんだな。周りの状況をよく観察していれば、棚から牡丹餅が転がってくるのを見逃さないのだ」


「みーこの所には転がってこないんですけど! 」


「だったら場所を変えればいい。転がってきそうな棚を探すんだ」


「幸せは歩いて来ないから、自分で歩いて行くって事ですね」


「そうそう。みーこは賢いな」


「うふふ。賢いですよ。みーこは賢いです」


(ちょろいな…)


 結局雑談しながらも、ピザやスイーツで存分に腹を満たした一行だった。

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