日本脱出編 第六話:違和感
スマホに通知が届いたのは昼過ぎのことだった。教務課からの連絡。進路の確認をしたいらしい。そろそろ来るかもしれないとは思っていたが、いざ連絡がくると少し気が重い。だが無視するわけにもいかない。コートを羽織り、家を出る。
大学までは電車で約40分。西東線に乗り、乗り換えで藍川線へ。久しぶりの電車だった。通学していた頃は毎日のように乗っていたのに、今はやけに遠く感じる。車内は思ったより空いていた。まだ休暇中だからだろう。ちらほらと座る乗客たちの間を抜け、適当な席に腰を下ろす。何かしようとスマホを取り出し、ニュースサイトを開く。けれど、画面のスクロールが妙に引っかかる。
——最近、なんかラグいんだよね…
以前はこんなことなかったのに、ここ数日、やけにカクつく。アプリを開くのにもワンテンポ遅れる。Wi-Fiのせいか、それともこのスマホがそろそろ限界なのか。かれこれ6年は使っている。そろそろ替え時だろうか。カクつくストレスから僕は画面を閉じ、ポケットに押し込む。することがなくなる。ぼんやりと車内を見渡す。
スーツ姿の中年男性。白のチェスターコートを羽織った、少し洒落た雰囲気の大学生らしき女性。黒と濃いピンクを基調とした服を着た、どこか個性的な高校生らしき少女。観光客ら指揮外国人。
特に変わった様子はない。普段の電車と何も変わらないはずなのに、どこか引っかかる。何が、とは言えない。けれど、ふとした瞬間に微かな違和感が胸の奥をかすめる。空調の風が吹き抜け、車内の窓に薄く僕の顔が映った。スマホと同じように,最近自分の周りが中途半端に違和感を感じるようになった。だけど何に違和感を感じるかはうまく言葉に出来ない。しいて言うなら——寝ている間に周りが丸ごと入れ替わった気分。それでいて周りの景色は何も変わっていない。近くを見れば変と思うが,視線を遠くに移すとやはりそこは世界。
深く息を吐き、背もたれに軽くもたれかかる。電車は変わらず淡々と、線路の上を滑っていった。
教務課での事務的な報告と手続きを終えて,僕は帰路に立つ。大学は平日ほどではないが,学生がまばらにいる。筋骨隆々としている学生,おそらくラグビー部だろう。彼らが一列になって走ってトレーニングをしている。出口付近にあるカフェでは女学生たちが談笑を楽しんでいた。外を眺めればやはりそこは日常。安心感を覚える。やはり世界は変わっていないのかもしれない。時に感じるあの妙な感覚が間違っているのかもしれない。そんなことを思いながら,ゆっくりと駅へ向かった。
帰りの電車。
スマホを取り出してみたものの、やはり動作がもたつく。タップしてから数秒遅れて画面が切り替わる。動画なんて論外だ。
「はあ……」
ため息をついてポケットにしまい、なんとなく車内を見渡す。
午後四時過ぎ。ラッシュには早いが、昼の賑わいは落ち着き、乗客もまばら。車内には静かな空気が流れている。
窓際の座席で、小太りのサラリーマンが舟を漕いでいる。ネクタイを緩め、紙袋を抱えたまま、首が不規則に揺れている。
向かいの席には、紺色のカーディガンを羽織った大学生らしき女性。耳にはワイヤレスイヤホン。スマホをいじりながら、窓の外に流れる景色をぼんやりと見つめている。
ドアの近くには、チェック柄のシャツにリュックを背負った男子高校生。イヤホンを片耳に挿し、足元に広げた参考書をじっと睨み、ペンを動かしている。
そして——青のダウンジャケットを着た外国人。
一瞬、胸の奥で何かが引っかかる。
——この人…どこかで……
けれど、それが確実に行きの電車にいたと断言できるほどの記憶ではない。ただ、うっすらと、ぼんやりと、朝の電車の中でこの男を見かけたような気がする。
目立つわけではない。けれど、妙に引っかかる。だが——
よく覚えていない。
だから“違う人”だと言われれば、それまでだ。
でも、それ以上に気になることがある。この電車の行き先だ。
僕が乗っている路線は、都心のターミナル駅から外れた郊外へと向かうもの。沿線には住宅街や大学はあるが、観光地らしいものはほとんどない。なのに——
男の恰好を見るに外国人観光客にしか見えない。彼はどこに向かいたいのだろうか。
もちろん、どこかの駅で乗り換えて別の目的地へ向かう可能性もある。あるいは,道を間違っている可能性も。でも、それにしたって、なぜこの時間にこの電車に——
——まあ、考えすぎかもしれない。
そう思いながらも、なんとなく目を向ける。
男はスマホを手にしている。だが、指の動きが妙にぎこちないようにも思える。スマホゲームを遊んでいるわけでもないし,ニュースサイトを見ているわけでもないような動き。その時、視線が合った。
一瞬だけ、男の動きが止まる。
だが、次の瞬間には何事もなかったかのように視線を逸らし、再びスマホをいじり始める。
——気のせいかもしれない。でも、気のせいじゃないかもしれない
胸の奥に、小さな警戒心が芽生え始める。
あれからは特に何もなかった。男は僕の最寄り駅の二駅前で降りた。僕は最寄りの駅から,家に向けて歩く。家が見え始めたところで——
不意に角から二人組が現れ、僕の行く手を塞いだ。
二人とも女性警官のようで、制服の着こなしは乱れひとつなく、モデルのように洗練されている。警察のホームページに載っていても違和感がないほどだった。
「すみません~。少しお話を伺ってもいいですかぁ?」
右側の警官が、しっとりとした口調で話しかける。目尻にシワを寄せ、柔らかな笑顔を浮かべていた。場馴れした雰囲気があり、こちらの警戒心をうまく解こうとしているように見える。
「は、はい。構わないんですが……」
そう答えると、今度は左側の女性が口を開いた。
「最近、外国人関連の事件が増えていまして。それで、少しお話を伺いたいのです。」
彼女は落ち着いた口調で、真面目な表情を崩さずに言う。
——この近くで何か事件なんてあったっけ?
心の中でそう疑問を抱きつつも、僕は黙って話を聞いた。
「お仕事は何をされていますか?」
左の警官が、淡々とした口調で質問を投げかける。
「えっと、大学生です。」
「大学生なんですね~。頭よさそうですね~。」
右の警官が、軽い調子で感心したように言う。
「あ、いえ……そんなことは……」
真正面から褒められて、思わず少し照れてしまう。警察に職質されている状況なのに、まるで世間話のような空気感だ。
「お兄さんは、この付近にお住まいですかぁ?」
「はい、そこに住んでいます。」
僕は、通い慣れた道の先にある一軒家を指さした。ベイウィンドウが特徴的な3階建ての洋風の家。元々は祖父母が住んでいたが,上京に伴って,今は一人暮らしだ。自分にとっては見慣れた風景だけど、こうして改めて口に出すと、なんだか妙に客観的に感じる。
「へぇ~、ここなんですね。親御さんと一緒に住まわれてるんですかぁ?」
「いえ、一人暮らしです。」
すると、左の警官の眉がわずかに動いた。
「大学生が一軒家で一人暮らし……ですか?」
その言葉には、わずかな疑問の色が滲んでいた。確かに大学生が3階まである洋館に一人暮らしするのを,奇妙に思ってもおかしくない。
「えっと、実はもともと祖父母の家だったんですが、二人とも亡くなってしまって。それで、上京して一人暮らしをするのにちょうどよかったので住んでるんです。」
言葉に詰まらないよう、できるだけ丁寧に説明する。こういう場面では、余計な誤解を招かないようにするのが一番だ。左の警官は、少しの間考えるように視線を落としたあと、納得したように頷いた。
「なるほど、そういうことでしたか。」
「実はですね、私たち、外国人関連のことでこの付近でお話を伺っているんですよぉ。」
それまでのやり取りとは違う、少し弾んだ声が右の警官の口からこぼれる。
フレンドリーな笑顔は変わらない。
だが、その裏にある何かを探っている感じが、ふっと冷たく肌に触れた気がした。
脳裏にイリーナの姿が浮かぶ。
冷めたようでいて、どこか気だるげな瞳。
口数は少ないのに、なぜか存在感のある声。
「最近、外国の方とお会いしたり、お話しすることはありましたか?」
左の警官が切り出す。口調は穏やかだが、どこか芯のある聞き方。
「あるにはあるんですが……」
言葉を選びながら慎重に答える。
「うんうん。」
右の警官が軽く頷き、促すように微笑む。こういう話し方が、やけに自然だ。
「でも、あまり関係ないかなって……お店をしている人ですし。」
「お店をされている方なんですね~。」
右の警官は相槌を打ち、左の警官は小さく頷く。一見何気ない会話のようでいて、僕の言葉を慎重に拾っているようにも見えた。
「その方とは、どういうご関係ですか?」
「あっ、えっと……」
口を開きかけたが、言葉に詰まる。
僕とイリーナの関係。
どう表せばいいのか。
「すみません、プライベートなことをお聞きするのは重々承知しているのですが、外国人の方とお知り合いである以上、形式上お伺いしないといけなくて。」
左の警官が静かに言う。表情は変わらないが、どこか逃げ道を塞がれた感じがした。
「なるほど……まあ……何と言いますか……」
考えようとするのに、思考が空回りする。
僕とイリーナは——ただの客と店員?
それだけだろうか。
確かに、そう言ってしまえばそれまでだ。
でも、どこか違和感がある。
何かが足りない気がする。
知り合い?
お互いの名前を知っている。
でも、それだけでは表しきれない。
どう言えばいい?
どう表現するのが正しい?
思索を巡らせるうちに、ふと頭をよぎった言葉——
思い人。
——僕は、彼女のことを………………………………
「大丈夫ですか?」
「あっ、す、すみません……えっと………店員と客の関係です。」
自分でも、どこかしっくりこない答えだった。
「店員と客……ですか。」
左の警官が確認するように繰り返す。右の警官は、小さく頷きながら僕の目を覗き込んでいた。
「……はい。」
「なるほど,そうですか。ご協力ありがとうございました。」
左の警官が、事務的にそう言う。右の警官とも顔を合わせる。一瞬,会話がそこで終わるような空気が流れた。
でも——なぜか右の警官は、まだ何かを話したそうに微笑んでいた。
「ひょっとして、その人のこと、好きだったりして?」
「ふぇ⁉ い、いや……!」
思わず声が裏返る。否定するつもりだったのに、動揺が声に出てしまったのが自分でもわかる。
「あっ、目線逸らしたね?」
右の警官が、まるで子供をからかうような口調で指摘する。その笑顔は悪戯っぽく、どこか楽しそうだった。
「……っ」
僕は口を引き結んで目を逸らした。
「こらっ、変なことを聞くな。困っているでしょ?」
左の警官が呆れたように軽くため息をつく。
「……これで一応、職務としての聞き取りは終わりです。ご協力ありがとうございました。」
「いえ……」
やっと解放された。そう思ったのも束の間——
「でも~、ここからは雑談にしましょう!」
右の警官が、楽しげに微笑みながら手を軽く振る。
「お兄さんにも、ちょっとしたアドバイスができるかもしれないですし。ね? もう少しだけ、お話しませんか?」
にじり寄るようなその仕草に、一瞬違和感を覚える。でも、彼女の声のトーンがあまりにも自然で、思わず気を抜きそうになる。
「……少しだけなら……」
本当はここで会話を終わらせたかった。でも了承してしまった。なんだか体と頭が分離してしまった気分になった。
「やった!」
右の警官が、ぱっと顔を輝かせた。
「ほら、本人もそう言ってることだし、いいでしょ?」
「……しょうがないな。すみません。こいつ、こういうところがあって。」
左の警官が苦笑しながら言う。
「正式な職質は終わりましたので、ここからはちょっとした世間話程度に思ってくださいね。」
警官とこんなふうに話すこと自体、あまり経験がない。でも、右の警官の砕けた雰囲気につられて、いつの間にか普通の雑談をしているような錯覚に陥る。
「ねぇねぇ、お兄さん、どうしてその人のお店に行くようになったの?」
「えっ?」
「ほら、たまたまとか言ってたけどさ、本当にただの偶然? それとも……何か惹かれるものがあった?」
「それは……」
口ごもる。
たまたまだったのは確かだ。でも、もしあのとき別のバーに入っていたらどうだっただろうか。そう考えると、やはりどこか特別なものがあったのかもしれない。
「なんかこう、ピンと来たとか?」
右の警官が、ニヤニヤしながら聞いてくる。
「まぁ……そうかもしれません。」
「おぉ~! やっぱり!」
右の警官が満足そうに頷く。
「じゃあ、その人ってどんな人? 優しい? それともクールな感じ?」
「んー……どっちかというとクールですね。でも、冷たいわけじゃないんです。必要なときには助け舟を出してくれるというか……。」
「へぇ~。なんかカッコいい人っぽいね~。」
「まぁ、確かに。」
思わず苦笑する。イリーナのことを話すのが、なぜか嫌じゃなかった。
「じゃあさ、お兄さん、もっと仲良くなりたいって思ってる?」
「えっ?」
「いやいや、別に深い意味はないよぉ?」
右の警官がひらひらと手を振る。
「ほら、せっかく知り合ったんだから、もっといい関係になりたいな~とか、そういうのない?」
「……まぁ、嫌ではないですけど。」
「うんうん! それなら、いいこと教えてあげる!」
「え?」
「サプライズ!」
右の警官が、いたずらっぽく笑う。
「サプライズ……?」
「そうそう。女の子ってね、意外と“予定外のこと”に弱いんですよぉ? 何か贈り物するとか、食事に誘ったりとか……びっくりさせるのがいいんです!」
「サプライズ……ですか……。」
「例えばさ、突然プレゼントを渡すとか?誕生日に。」
「こら、また妙なことを。」
左の警官が、呆れたようにため息をつく。
「え~、せっかくのチャンスじゃないですかぁ?」
「まったく……。すみませんね,お兄さん。」
「い、いえ……」
僕は苦笑しながら、適当に頷く。
右の警官は満足そうに笑い、手をひらひらと振った。
「じゃあ、お兄さん、頑張ってくださいね♪」
「は、はい……」
そう言った瞬間、ふっと警官たちの存在が希薄になったような気がした。
気づけば、彼女たちは踵を返して歩き出している。
思ったよりも足が速い。
なんとなくその背中を見送りながら、僕も踵を返し、自分の家へと向かう。
数歩歩くごとに、警官たちの気配が薄れていくような気がした。
やがて、自宅の前に辿り着く。
ポーチを通って,ポケットから鍵を取り出し、ドアノブに手をかける。
家に入るだけの単純な動作。
けれど——
ほんの少し、引っかかるものが胸の中に残っていた。
僕はふと後ろを振り返り、玄関アプローチを抜ける。左を見ても、右を見ても、もう警官の姿はなかった。足音もなければ、気配すら感じられない。
たった数秒の間に、まるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく消えていた。
「…………え?」
あんなに軽い口調で話していたのに、どこか現実感のない消え方だった。まるで、霧が晴れるように——それとも、最初からそこにいなかったかのように。
一瞬、背筋にひやりとしたものが走る。
——まただ…この感覚…
喉の奥で言葉が詰まる。
何かが引っかかっている。
でも、何が?
「……疲れてるのかな……?」
自分に言い聞かせるように呟き、再びドアノブに手をかける。ひんやりとした金属の感触が、妙に現実味を帯びて感じられた。鍵を回し、扉を押し開ける。冷えた空気が、静かに僕を迎え入れた。
***
真夜中の波止場に、場違いな恰好の二人の女が佇んでいた。
潮風が湿った冷気を運び、さざ波の音だけが静寂を破る。
労働者たちはとうに退勤し、広い埠頭には誰の姿もない。
ただ遠く、はっきりとした灯りが点々と輝き、海上に架かる巨大なアーチ橋の輪郭をぼんやりと映し出していた。
二人の女は、明らかにこの場に馴染まない。
港の冷たい潮風を防ぐように、彼女たちは派手なコートを羽織っていた。
一人はファーがあしらわれた真紅のコート、もう一人はゴールドの装飾が施されたヒョウ柄のロングコート——どちらも夜の街で映えそうな派手なデザインだ。
だが、その下にはタイトなパンツにヒール、ギラついたアクセサリーが揺れ、水商売特有の派手さが垣間見える。
彼女たちは腕を組み、足を交差させながら立ち、時折宝石があしらわれている腕時計を確認していた。
夜の冷気が肌を刺すたびに、派手なコートの襟を立て、身をすくめる。
「遅いわね……。」
低い声で、片方が呟く。
「金がもらえるなら待つしかないでしょ。でも、こんな寒空の下で待つなんて最悪。」
もう一人が不機嫌そうにコートの裾を引き寄せる。
その時——
重たいエンジン音が遠くから聞こえた。
静寂を引き裂くように、二台の黒塗りのバンが波止場へと滑り込む。
黒にも見える,濃い紺色をした無機質な車体は、日本では滅多に見かけないデザイン。
ヘッドライトが灯ると、二人の女の表情が少しこわばる。
バンが滑るように停車し、数秒の静寂。
やがてスライディングドアが開く。
そこから降りてきたのは、長身の男だった。身長は180cmを優に超え、スーツの上からでも分かるほどの引き締まった筋肉を備えている。
顔立ちは細く、高い鼻筋が印象的だ。だが、頬はわずかにやつれ、無精髭が生えている。瞳の色は淡いブルー。目元には数本の皺が刻まれ、肌は浅黒く焼けていた。
全体的に若々しく見えるが,疲れからか老けて見える部分もある。そのアンバランスさが,彼の実年齢の推測を邪魔する。
女たちはこの男の依頼で今日仕事をこなしたばかりだ。そして今日,約束の場所で金をもらう約束だった。
黒いコートの襟を立て、淡々とした足取りで二人の前へと歩み寄る。冷たい眼光が、まるで獲物を値踏みするように女たちを見据える。
「やっと来たわね。アレクセイさん。」
赤いコートの女が口を開く。
「情報は電話で伝えた通りよ。金は持って—―」
もう一人、ヒョウ柄のコートの方が,不機嫌そうな足取りでその男に向かいながらして言った。
アレクセイは何も言わず、懐へと手を伸ばした。女たちは報酬を取り出すと思った。だが次の瞬間——
パンッ、パンッ——。
短く,くぐもった銃声が港を夜に響いた。女たちは驚愕の表情のまま、その場に崩れ落ちる。赤黒い血が、コンクリートの地面をじわじわと染めていく。アレクセイと呼ばれた男が無表情のまま、煙を上げる銃口を傾けた。
「死んだ奴が札を数えられるなら、くれてやるさ。」
もう一台のバンのドアが開く。
無言のまま降りてきた数人の男たちが、倒れた二人を手際よく回収して,流れた血を掃除する。
「Член команды.(チームリーダー。)」
チームリーダーと呼ばれているアレクセイに、男が駆け寄る。
「(Женщина выполнила операцию по наведению "Куклы"(女は“人形”の誘導を実行しました。)」
「...Тогда переходим к фазе два. Я займусь этим.(……ならフェーズ2だ。俺がやる。)」
「(…Лидер.(……リーダー。)」
「Что?(なんだ?)」
「Безусловно, "Соловей" хорошо знает наши методы. Но действительно ли так необходимо уделять столько внимания "Кукле"?(確かに“ナイチンゲール”は我々の手口をよく知っています。ですが、人形にこだわる意味が本当にあるのでしょうか?)」
「Пётр, что сделала "Соловей" в конце? Скажи мне.(ピョートル。ナイチンゲールは我々に,最後に何をした?言ってみろ?)」
アレクセイは自分の顔を少し近づけて言った。
「...Предательство. И самое крупное.(……裏切りです。それも、最大の。)」
「Тогда покажи им. Предатель... должен умереть от предательства.(なら、示すんだ。裏切り者は………裏切りによって死ぬと。)」
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