鋼と燕
今日は二話同時更新(2/2)
「ねぇ、はがねくん。今度の土曜、デートしようか?」
義姉のこの言葉に、目の前でコーヒーを啜っていた義父さんが噴き出した。「……」。咽てて可哀想。
「……」
でもそのコーヒーが掛かった僕、もっと可哀想。
未だ咽る義父さんと僕のYシャツが大変なことに成ったので、母さんが少しの怒りを滲ませつつ、面白そうに新しいYシャツの用意をしている。
「……何でですか?」
「父の日、もうすぐでしょう?」
「そうですね。でも『落ち着いてコーヒーを飲める朝』とかの方が喜ばれると思いますよ?」
見て。まだ咽ててほんと可哀想。
「男の子の意見が欲しいの」
「男の子の意見だと唐揚げとかになりますよ?」
からあげ。ゴハンお替り自由。男の子はね、こう言うのが好きなんですよ。
「……そう」
軽く顎に手を当て、何かに納得した様に義姉。
「……真に受けないで下さいよ」
義父さん、未だ咽てる。母さんが背中をさすっている。あの回復の遅さだと、大量の油を胃が受け付けるが怪しい。
母さんもそこまで揚げ物には強くないので、最悪、僕しか幸せにならな――いや、義姉は食うか? うん。食うな。何か隠してるっぽいけど、結構な肉食獣だったな、義姉。
「……」
そんな義姉の腹部を見ていたら抓られた。
気に入らないことがあると抓るその癖を止めて欲しいのですが?
「まぁ良いわ。父の日のプレゼントを買うから土曜日はデートね」
「……」
質問の形を取ってはいたが、僕に選択肢はないらしい。
決定事項として僕の土曜日の予定は決められてしまった。
「夜なら良いですよ」
九時から十七時までは予定が入っていますので、と僕。
「そう。それなら夜、出かけましょう」
「……って言うか、知ってますよね?」
僕が土曜、夜しか開いてないこと? と睨んでみるが、義姉は素知らぬ顔。トーストにブルーベリージャムを塗って「目にいらしいけど、はがねくんも食べる?」と素知らぬ顔で言っている。僕の目のことを知ってるなら、ソレ、無駄だって分かってますよね?
そんな風に僕の土曜の予定が埋められたところで、義父さんがようやく復活した。
「あー……燕に鋼くん?」
そんな義父さんはティッシュで口の周りを噴きながら少し言いづらそうに僕と義姉さんの名前を呼ぶ。
「――」
「はい」
思春期の娘らしく、父親に厳しめ。『なに』と視線だけで言う義姉さんとは違い、返事をする僕は偉いと思う。
「もしかして――付き合って、居たり?」
僅かに祝福よりの困惑で義父さん。
「ねぇって」
思わず汚い言葉になりつつ、それにNOを突き付ける僕。
「……」
そしてその返事が気に入らないのか、僕を抓る義姉。
「……義姉さんがどうこう以前に、ちょっと余裕が無いので、ありません」
そんな義姉の手を剥がしつつ、僕は義父さんに言う。
「? 余裕が無い?」
「えぇ」
だって――
「僕、ちょっと本気で甲子園を目指さないといけないので」
取り敢えず序章完。
こっから間違ってるなりに甲子園目指します。
完結にはしない。
人気ないけど、終わりまで脳内プロットが出来上がってるのでダラダラ書くので!
あ、でも二部書く前に何時ものきらら系を挟みます。