また喚ばれたけど、帰ります
日曜日
朝市に行く事を両親に告げて、家を出る
日曜朝市は普段の倍は混雑する
休日サービスで買い物に付き合う人がいる為だ
日々の労働に家族サービス···お疲れ様です
自転車を近くに置いて、朝市に突撃する
目当ては特売の鮮魚だ
薄く結界を纏い、周りの人の隙間に入り込みながら進む
目当ての干物が見えたので、底の方から『鑑定』と『転移』で欲しい分だけ手に入れる
(今日はいい塩鯖が手に入ったな···これは朝食に出そう)
レジで会計を済ませて、駐輪場に向かうと、足下が光り出した
(···。またか?やれやれ···次はどこだよ?)
そう思いながら転移させられる渡であった···
光がおさまると、目の前には豪華な装飾品を身につけた王らしき肥えた豚···じゃないか、太った人?が座っていた
そしてお決まりの『世界が危ういから救ってくれ』とか言い出す
今回は俺の他に1人の学生がいた
見るからに騙され易そうな感じだ
豚···じゃない、王の話は
『この国は困窮している。その危機を救う為に召喚した』
『魔王を倒して世界を救ってくれ』
『魔王を倒せば帰れる』
とか言ってた
困窮しているなら、その醜い姿にはならないし、装飾品だって着けてないだろ?
どうせ魔王を倒しても帰れないし、国に飼い殺しされるのがオチだろうな···
隣の学生の様子を見ると、残念···やる気になっている···
「まかせて下さい!!必ず魔王を倒して、世界を救ってみせます!!」
う~わ···完全に騙されてるよ···
まぁ、本人がやる気ならいいか···
俺は帰って朝食を作るので、さっさと帰らせてもらおう···
「そうか。俺は帰るから、頑張ってくれ」
学生を応援して転移で世界に戻る
渡が転移で消えた為、その場に残された面々は唖然とするのであった···
無事駐輪場に戻った俺は、自転車に荷物を載せて朝市を後にする
『早く帰って朝食を作ろう。大切な家族を笑顔にする為に』
(余計な事に巻き込まれても、この能力で戻ってこれるから安心だな)
鼻歌交じりで帰宅して、買ってきた塩鯖を焼き始める
今日も1日無事に過ごせるといいな···
世界は変わり···渡が最初に召喚された世界では···
「また駄目だったのか!?あの無礼者の世界の奴等は役に立たぬな!!」
新たに王となった男が叫び声をあげていた···
そして、渡の元·クラスの奴等は魔物に殺され、残り数人となっていた···
渡は転移する前に全員の能力を鑑定していたが、強い奴は『別世界に飛んで行った奴』くらいだったから、当然の結果だろう···
ちなみに飛ばされた馬鹿は『転移先で美味しく戴かれて』いた
転移直後に『偶然上を向いて口を開けていた巨大な魔物の口に入り、そのまま飲み込まれた』様だ
しかも、その後に渡の家に来た『馬鹿の家族』も同じく飲み込まれていた
こうして相手の望んだ通り『同じ世界でちゃんと再会(胃の中だが)できた』のだった
次回『バイトを探す』