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6/11

兄と買い物

私の名前は『世尾せお 未来みくる


中学2年生よ




最近嬉しい事があったの


それは『行方不明だった兄が帰って来た事』だ


兄は高校2年生で、目立つ事もない所謂『普通の高校生』だった


事件は数ヶ月前···兄はいつもの様に学校に登校する為に家を出た


しかし、学校には登校しておらず、夜に担任から連絡が来た事で『行方不明』が発覚


警察の捜査も虚しく、手掛かりがないまま月日が流れた···


そして数日前、警察から『兄を発見·保護した』と連絡があった


私達家族は喜び、すぐに面会する


しかし、兄は記憶を失くしていた


正確には『一部の記憶のみ』憶えているが、他は『何も知らない』といった感じだ


兄は私達の姿を見て驚いていたが、すぐに『何かに納得する様な顔』をしていた


そして『行方不明以前の事はほとんど忘れていた』が、私達の事は憶えていたので『一般生活には一応大丈夫』として、帰宅が許された


『家族と一緒に生活していれば、記憶も戻るだろう』との考えらしい


何はともあれ、兄が無事?に帰って来たのは嬉しい事だ


家に帰ると、兄は部屋の中を1つ1つ確認する様に見回す···


こまめに掃除はしていたので、汚れてはいないはず···



そして一通り見た兄は部屋を出て、家の中を歩き回る


両親の部屋を見て、私の部屋を見て、再び自分の部屋を見る···


その姿はまるで『失った何かが帰って来たのを確かめる様な行動』を思わせるものだった···


私の部屋を見られた時は、少し恥ずかしかったが、『兄の為』と我慢したわ


今度はもう少し綺麗にしよう···


少なくとも制服はちゃんとしまっておこう···



そして数日が過ぎ···


兄は今現在、自宅で通信教育で勉強をしている


「今の状態で高校に行っても、勉強についていけないから」と、両親に相談して、高校卒業が認められる通信教育をする事になった


そして「家にいるなら、家事はお···僕がやる」と言って、家事をしてくれている


私も手伝うと言ったのだが、「未来は勉強と遊びを大切にしてくれ」と断られてしまった


決して家事音痴だからではないはず···


···そうだよね?


何で全員私から目をそらすの?



そして今日、兄は「夕飯の材料の買い物に行く」と声をかけて来た


私は『また兄がいなくなってしまうのでは!?』と思い、同行する事にした


それに、まだ完全に『記憶が戻っていない』のだから、外に1人で出る事を許可する訳にはいかない!!


私は部屋ですぐに着替えて玄関に向かう


急いで着替えた為、髪が乱れてしまっていた


兄はそんな私の髪を優しく、手漉きで整えてくれた


とても優しく···まるで『大切な宝物を扱う』様に丁寧にしてくれる


(でも、何で『寂し気な目』をしているの?)


そんな事を思うが、兄はすぐに笑顔で


「はい。これで終わり。可愛くなったよ」


なんて言うから、恥ずかしくなって、外に出てしまった


兄は「やれやれ···」と言って玄関の施錠をして私の近くに来る


「行き先知らないのに、先に行ってどうするんだ?ほら、こっちだよ···」


私の手を取り、先を歩く兄の背中は、いつの間にか大きくなっていた···



次回『特売セールは戦場』

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