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夢現新星譚  作者: 富南
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第5章:邪神教団
70/70

70 後日談

 夢羽から世界創造の話を聞いた後、クロードの陰謀に気づいた私は、邪教の動きを追うために、チョウさん率いる対策班の情報網を利用して情報収集を始めた。


 その邪教を追っている私は今、局長室の机で書類仕事をしていた。


「よう。ご苦労さん。外は寒いぜー。ほれ、これ飲んで温まりな。うん? 姉御は?」


 そこに、手土産を持ったタツロウが姿を現した。タツロウはその手土産の温かいお茶のペットボトルを差し出した後、いつも側にいるはずの夢羽を探しているのか、キョロキョロと周囲を見ている。

 タツロウの手には、もう1本のペットボトルを持っている。


「夢羽はこっちに来ている時間全てクロードを探すために使うって言って、私が集めた情報を下に動き回っているよ」

「そうか。お嬢はそのサポートなのか?」


 渡すのを諦めたタツロウは、手に持っているペットボトルを開け、自分で飲んだ。

 私は、夢羽が作ってくれたお手伝いロボットがまとめた書類を1枚渡してきたので、それを受け取った。


「うん、そうだよ。夢羽がこっちにいない時は休んで、いる時にサポートをする感じだね」

「お嬢は出向かないのか?」

「今日は行かない日だね。2日に1回は出ているよ」


 さっと書類に目を通し、『邪教』と書いたカゴの中に放り込んだ。タツロウはそれを拾い上げる。


「全部、お嬢と姉御だけで(さば)く必要はないんじゃないか? 俺達救助隊も動くぜ?」

「その報告書の内容次第だね。『能力』が関わると、昔のタツロウさんみたいに捕まっちゃうかもしれないし、下手したら消滅しちゃうかもしれないしね」


 ロボットから新しい書類を1枚受け取った。私はそれに目を通す。


「たしかにそうだな。お? それだったら行けそうだぜ!」


 タツロウが私から書類を取った。その内容は、壺の貯蔵庫らしき場所の在処(ありか)を記された物だった。最近、夢の星の外にある小惑星などで、邪気を溜めた壺の目撃報告が増えている。


「夢の星じゃないし、能力を持った主ではないのはたしかだね。でもたまに、腕の立つ元軍人もいたから気をつけてよ」

「そんな奴も邪教にいるのかよ。あのクロードとかいう邪神、恐ろしい奴だな」


 タツロウは書類を『邪教』のカゴに入れた。


「うん。それほど『洗脳』の能力が強いんだよ。あれをどうにかしないと、クロードには勝てないよ」

「そうだよな! 音を聞いてしまうと洗脳にかかるわけだから、その事を知らなかったら対策のしようがないからな」

「そうなのよ。あ! でも、『時を戻す時計』があったら、洗脳にかかった瞬間にかかる前に戻されたね」


 私は、壊れた懐中時計の入った袋を机の引き出しから取り出した。


「でもこれ、量産はできないんだろ?」

「やろうと思えばできるみたいだけど、こんな危ない時計を増やすなって夢羽に言われたから増やしてない」

「なるほどな」


 懐中時計を引き出しに戻し、『邪教』のカゴの中から行けそうな物を取り出した。


「はい。これらが危険度の少ない邪教関係。でも、身の危険を感じたらすぐに撤退するようにって周知させること。わかった?」

「りょーかい!」


 タツロウはそう言い、書類をカバンに収めた。


「よろしくお願いします。でも助かるよ。霊教の団員にも協力するようにって依頼をしているんだけど、なかなか応じてくれなかったから……」


 タツロウから貰ったペットボトルのお茶を一口飲む。そしてペットボトルの口を閉め、書類に影響の無さそうな場所に置いた。


「霊教って、あの奇妙な笑い声と髪の子がいる所だよな?」

「奇妙な髪って……はは。たしかに、この世界では髪型を変える行為をしないもんね。アイリスも前世の記憶を引き継いでいるみたいだし、それで髪型を変える事に違和感を感じてないのかもね」


 私は後頭部のお団子ヘアを触り、そしてかんざしを触った。


「お嬢は前世の記憶って無いんだよな? それは姉御に教えてもらったのか?」


 タツロウは、私が触っているお団子ヘアを見ている。 


「うん、そうだよ。髪のことで色々と噂されていたからね」


 かんざしを引き抜いた。


「はー! こりゃまた立派な長髪だな。俺の嫁より長いな」


 タツロウは私の長髪を見て驚いている。そういえば見せた事なかったっけ。


「そういえば、長いって言っても肩までの長さだよね」


 女の人になったら髪が肩までの長さに伸びて、それ以上は伸びないらしい。私の髪はそれ以上に長いので、遠目で見てもかなり目立つ。そういえば、夢羽も私と同じくらいの長さだったな。いや私が似たのか。


「失礼しまーす……ここにタツロウさんいますかー……いました! って、隊長! 子持ちだったんですか!?」


 ノックをして入ってきたサトウが、私を見て驚いている。あ、そういえばサトウにも見せた事ないな。


「いや私、まだ高校生くらいの年齢らしいよ」

「らしいよ? ……あー! そうでしたね。隊長のお姉さんの片割れって言ってましたね」

「うん、そんなとこ。それよりタツロウさん探していたんじゃないの?」


 私がそう聞くと、サトウは思い出したかのように、慌てた様子でタツロウの袖を捕まえた。


「ようやく捕まえました! 救助要請ですよ! 隊長さんはお忙しいので、タツロウさんを引っ張ってきてとチョウ班長が言ってました」


 そう言ってサトウがタツロウを引っ張っていく。


「ははは、それじゃ行ってくるぜ。そういや、霊教の団長はどこにいるんだ? 外出ついでに会ってきてから協力要請してくるが」


 引きずられているタツロウがピタっと止まる。


「うーん……1日の半分はいないからなー。会いに行ってもいないかもよ?」


 私は『霊教』のカゴに入っている書類の中から、アイリスの情報を取り出し、それをタツロウに渡した。


「あ、そうだったな! 姉御と同じく生きているって言ってたな! しかも神だっけ?」


 タツロウは書類を受け取り、チラっと見た。


「うん、現人神だね」

「お嬢も現人神じゃないのか?」

「いや、私は現人神じゃないよ。現世には行けないからね」


 再びペットボトルを開け、一口飲んで閉めた。


「そうなのか。わからづらいな」

「うん、私もそう思う」

「それで、その団長はどこにいるんだ?」


 再び書類に目を移すが、首を傾げている。


「ここに書いてあるよ。えっと居場所は……霊教のアジトにいるらしいよ」

「アジト?」

「うん。猫の巨塔の星。明るかったらこの世界に来ているから、わかりやすいんじゃない?」


 私はタツロウから書類を返してもらったので、それ受け取り『霊教』のカゴに戻した。


「そうだな。ここからも近いし、救助の帰りに少し寄っていくぜ」


 そう言ったと同時に、サトウに再び引きずられるタツロウ。


「猫ちゃんには気をつけてねー」


 局長室から出て行くタツロウ達を、手を振って見送った。


---


「夢羽様の動向調査はどうなっているの~?」


 玉座に座っているツインテールの白銀の髪の少女。

 今日もゴスロリ風に改造された局員の制服を着て、いつもの奇妙な笑い声とギザギザの歯をチラつかせている。


「いえ……それが全然掴めなくて……」


 その玉座に座っているアイリスに頭を下げている男の人。


「しっかりしてよね~。あの腰巾着の所にでも行って、夢羽様の情報を抜いてきなさいな~」

「し、しかし!」

「しかしも、かかしもないわよ~。返り討ちにあうんだったら、情報交換をしなさい~。こっちには邪神の情報がたくさんあるんだから~」


 アイリスは、玉座のすぐ近くのテーブルに置いてあった書類ケースの中から、1枚の書類を取り出した。そしてそれを、団員と思われる男の人に渡した。


「か、かしこまりました!」


 男の人は、それを持って慌てて駆けていった。


「あれ、ボク達が集めた情報の1つです。持っていかせて良かったです?」


 白銀の長い髪を右耳の上に束ね、メイド服風に改造された局員の制服を着た、エメラルドグリーンの瞳の子がピョンピョンとその場で()ねている。跳ねるたびに髪が動く。


「落ち着いてください、姉さん。あれはダミー情報です。ボク達の情報はこっち。さっき差し替えておきました」


 こちらの子も白銀の長い髪だが、左耳の上に束ねられている。それとサファイアの瞳と特徴的な胸部以外は、さっきの子と瓜二つだ。ちなみに着ている服も全く同じ。

 その子はなぜかクッキーを持っている。


「さすがノルリです! これはお礼の品です!」


 そう言いながら右手を開くと、そこから突然スコーンが出てきた。


「バレたら、クルリ姉さんがやったと軍部の鬼部長に報告しておきます」


 ノルリと呼ばれた子は、淡々と言いながらそのスコーンに手を伸ばす。


「ボクのせいになったです!? やっぱりあげないです!」


 クルリと呼ばれた子は、スコーンを引っ込めようとしたが、ノルリに奪われてしまった。


「あら~? 戻っていたのね、エーデリア姉妹~」

「姫ちゃんやっほーです!」

「御機嫌よう、アイリス様」


 クルリは手を振った後に頭を下げ、ノルリも上品に頭を下げる。手に持っていたスコーンはいつの間にか無くなっていた。


「貴女達も私と同じなんだから、かしこまらなくてもいいわよ~」


 そう言いながらアイリスは、玉座から2人と同じ高さまで降りた。


「ボク達は神ではないですし、死者ですからね」

「あと団長ですから、礼儀は大事です!」

「そうね~。礼儀は大事ね~。さすがはお姫様ね~」

「いえ。ただの亡国の元第一、第二継承者です」


 アイリスはそれを聞いて微笑み、少し大きめのテーブルの所まで進んだ。そして、そのテーブルの上にあるティーポットにお湯を注ぎ、クルリに大きめの皿を差し出した。


「それで~? 貴女達の弟君は見つかったのかしら~?」

「見つからないです……」


 クルリはしょんぼりしながら、差し出された皿の上にどんどんクッキーを出している。


「それっぽい人はいるのですが、年齢と体格が一致しないんですよね……」


 ノルリは、その皿からクッキーを取り、口に入れた。


「邪教の人よね~? 誰かしら~?」


 アイリスもクッキーに手を伸ばす。


「邪教の団長さんです!」


 クルリのその言葉を聞き、アイリスのクッキーを持った手が止まった。


「……そう~……。そう言われてみれば、貴女達に似ている気がしますわ~」


 そう言い、クッキーを口に入れた。


「ボク達に似ているですか……姫ちゃんは団長さんのお顔を見たです?」


 クルリは減りつつあるクッキーを、徐々に増やしている。


「見たことないわよ~。雰囲気よ~。あの上品な佇まい、元貴族か王族かもしれないわね~」


 アイリスは顔を上に向け、思い出そうとしている。


「さすがに自身の雰囲気はわからないので、アイリス様がそうおっしゃるなら、そうなのかもしれませんね」


 ノルリは3枚クッキーを取り、それを一気に口の中へと放り込んだ。


「じゃあ今度からは、邪神と一緒に行動していると思う、あの仮面の団長も追いなさい~」

「わかったです!」

「わかりました」


 アイリスは、ティーポットの紅茶をカップに入れた。

第一部完結です!

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第二部へと続きます!

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