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夢現新星譚  作者: 富南
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第5章:邪神教団
69/70

69 夢羽の秘密

「……いえ。逃げられたようです」


 サトウが、双眼鏡で落ちていく残骸を確認している。


「キキキ、考えたわね~……私の剣で割れた風船の空気圧で脱出したみたいね~」


 アイリスはそう言い、自身のクルマを呼び出し、またそれの上に乗った。


「まだ近くにいるはずだ! 我は追いかけるからな!」


 ゲンの乗ったロボットは、また飛行形態へと変身した。


「あ! 待って! せめて、これだけは持っていって!」


 私はカバンの中から端末を取り出し、そして投げた。


「あ? あー……これ、我の端末か。病院にいたロボットは解除して消したからな。それだけ残されたわけか」


 コクピットのゲンが顔を出し、端末を取った。


「みんな心配しているんだから、戻ってきてよ!」

「奴を消してからだな。連絡はする」


 そう言い、ゲンは邪教の連中が飛んで行ったと思われる方向へと飛んで行った。


「……母の仇ね」


 声がしたので振り向くと、夢羽が顔を伏せていた。よく見ると、目尻を拭いているように見える。


「そろそろ起きる時間だから、さっさと出て行ってちょうだいな~」


 アイリスが欠伸(あくび)をしている。


「まさかの夢の主がアイリスだったとはね……。てか、生きてるの?」

「キキキ! 半分死んでいるようなものよ~。手紙あるんでしょ~」

「あ、そうだった!」


 カバンから手紙を取り出す。そしてそれを渡し、アイリスは受け取った。


「ありがと~……ほい~」


 すぐに開封して、切手を私に飛ばしてきた。

 私はそれを受け取る。


「あれ? いつもの映像が流れない……」

「見せるわけないでしょ~。プライバシーだから、見せる見せない決めれるのよ~」

「そうなんだ!」

「はい~。これも受け取ってちょうだいな~」


 アイリスが、少し年季の入った狙撃銃を渡してきた。


「うわ……これはすごいな」

「『器用』の子が使っていた愛銃よ~。これは風羽が持つべきだわ~」


 さっきから『器用』という言葉がすごく気になっている。あとで夢羽にでも聞いてみよう。能力ってのもわからないし。


「あ、それと~。今まで使っていた銃は、ツクモが食べてくれると思うわ~」

「食べるの!?」

「食べないよ! コレクションに加えるって言ってくれ!」


 肩に乗っている小さなツクモが反論している。


「キキキ! そろそろ時間ね~。それでは御機嫌よう、霊神ソラ様とその他~」


 アイリスはお上品にお辞儀をした。その瞬間、周囲の景色が宇宙へと変わった。


「……起きたんだね」

「そうみたいだな。お嬢、一旦戻るか?」

「うん、そうだね。ちょっと色々ありすぎて疲れたよ」

「賛成です……」


 サトウも緊張の糸が切れたのか、脱力している。


「夢羽。局長室に着いたら聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「うん、良いわよ」

「よし! じゃあ帰ろう!」


 私の一声で、タツロウはクルマを飛ばし、星間郵便局への帰路を急いだ。


---


 アイリスの夢の星と星間郵便局の距離は意外と近かったようで、あっという間に着いた。

 タツロウとサトウは自室で報告書をまとめると言って、到着後に別行動となった。


「それにしても、アイリスもまだ生きているとはね……」


 局長室に向かう途中、商店街で買い物をしている。


「それ言ったら、風羽もまだ生きてるわよ」


 夢羽は小腹が空いたのか、軽食を都度購入しながら買い物を満喫している。


「生きてるって……私の場合は現世で生まれなかったんだから、いない者じゃないの?」

「この世界で生まれたじゃない。だから、貴女はここで生まれた生者よ」

「うーん……死後の世界で人が生まれるっておかしいでしょ……」


 それを聞き、夢羽は袋から大福を3つ取り出した。


「『死後の世界』っていう名前が浸透しちゃったからおかしいのよね。ここは昔、『夢の世界』って呼ばれていたわ。『(うつつ)の世界』、今で言う『現世』と対になる世界で、どっちでも生物は誕生していたのよ」


 夢羽は2つの大福を左手に乗せ、その大福で説明をしている。


「死後の世界ではない……。でも、今は死者が集まる世界になっているよ?」

「うん。作り直す時に、霊神クロードに邪魔されたからね」

「作り直した!?」


 私の声が商店街に響き渡る。周囲からの視線をすごく感じる。


「失礼しましたー……夢羽、着いてから続き話そう……」

「それがいいわね。今はこれに集中したいし」


 そう言い夢羽は、大福の袋を開封して頬張り始めた。


---


「それで? 世界を作り直したってどういうこと?」


 局長室に着いて早々、夢羽に質問を投げる。


「そのまんまの意味よ。この世界、1度滅んでいるわ」


 持っていた荷物をソファの上に置き、その横に座る。夢羽もその対面に座った。


「誰に滅ぼされたの?」

「霊神クロード率いる邪教ね。この話、長くなるわよ。いい?」


 私はそれを聞き、ソファから立ち、お茶を淹れ始めた。


「あー……その長話の前にいくつか聞いてもいい?」

「うん、いいよ」


 淹れたお茶を夢羽の前に置く。夢羽はそれを「ありがとう」と受け取り、一口飲んだ。


「私って『器用』って能力を持ってるの?」


 自分用に淹れた紅茶をテーブルに置き、ソファに座る。


「そうよ。『さすが器用ね』ってたまに言ってたのも、そういう意味だったのよ」

「いや分かりづらいし……。じゃあ、アイリスも能力持ちってことでいいんだよね?」

「うん、そう。『影操(えいそう)』っていう能力の持ち主よ。あらゆる影を操る能力ね」


 あ、そういうことか! だから、黒い武器を自分の影とかそういった所から出していたんだね。暗い所だと明るくしていたり……。


「じゃあ、この3枚の切手も能力ってこと?」


 私は、『結界』と『吸収』と『物語』と書かれた切手をカバンから取り出した。


「そうよ。回収しちゃったけど、あの子達も能力持ちだったってことよ。現人神にはなれなかったみたいだけどね」


 そう言い、夢羽はお茶を飲んだ。


「その『現人神』って、アイリスもそう呼ばれていたよね。生きている神様ってことでいいの? なる条件とかもあるの?」

「その通り、現世もしくは夢の世界で生きている神のことよ。実際には『能力』を持った人間が、現世でもそのチカラに気づいた場合に『現人神』となるの。そうなると、星間郵便局以外の夢の世界へも自由に行き来する事ができるようになるわ」

「あー……それでアイリスの目撃情報が、星間郵便局では全く無かったのね」

「うん、そういうこと」


 私は自分用に淹れた紅茶を飲んだ。


「そういえば、霊神クロードも能力持っていたみたいだけど、現人神?」

「違うわ。クロードは霊神よ。『洗脳』の切手のチカラを武器として使っていたみたい。さっき久しぶりに会った時に初めて知ったわ……」

「そうなんだ……ん? ってことは、別に能力があるってこと?」

「うん、そうだね。あたしも含めて、霊神の能力は全員『創造』よ。クロードは既にある物に対して創造する能力。あたしは粘土であらゆる物を創造する能力。あとは、ツクモがエネルギーを材料にして物を創造する能力。そしてゲンが乗り物を創造する能力よ」


 そう言い、お茶を飲む夢羽。


「さらっと自分も霊神だって認めたね」

「うぐ……。人神も物神も、元々みんな霊神よ。これも世界創造の話の時に話すわ」


 お茶を吹き出しそうだったが、堪えたようだ。


「わかったよ。それにしても、音叉を武器にね……。音を聞いた者を洗脳するって結構ヤバめな能力だね……」

「うん。邪気を『洗脳』して操って私を監視していたのも、クロードだったってこと。さっきまで誰が使っているのかわからなかったわ」

「バレないようにしてたけど、結局バレてたね……あれ? バレないようにしていた? 邪気相手にバーテンダーやってたような……」


 私はくすっと笑う。


「いいじゃん! 暇だったんだもん!」

「また暇って言っちゃったよこの子!」


 ずずーとお茶をすする夢羽。


「ま、まあ、いずれバレるとは思っていたけど、遅らせることはできたからね。早い段階でバレていたら、操られた邪気が大量に集まってきて、消されていたと思うわ」

「さっき輪廻の世界では消えないって言ってたような……」

「虚勢を張っただけよ。霊神でも純粋な霊気や邪気にずっと触れていたら、いずれ分解されるわよ」

「そういうもんなのね……」


 紅茶を飲もうとしたら空っぽだったので、再びソファから立ち上がった。そして、夢羽の湯呑みも受け取り、淹れ始める。


「突付いたら色々出てきそうだけど、そろそろ世界創造の話聞かせて」

「わかったわ。長いから覚悟してね」

「う、うん」


 淹れたお茶を渡し、私はソファに座った。

あと1話で第一部完結です!

また、外伝Ⅰに世界創造の話を持っていきます!


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