64 猫の巨塔の猫の女王
雲の中の螺旋階段を抜け、私達は頂上付近の部屋にいた。下より装飾が凝っていて、まるで物語に出てくる王城の一室にいるようだ。
私達は雲の中で汚れた服を汚れ物用の袋に入れ、他の制服に着替えていた。
「よし、これで誰に会っても大丈夫だね」
「そうですね!」
サトウも間切りの向こうで着替えを終えたようだ。
「それにしても、ここって猫の塔だよね? 塔と言うより巨塔だけど、城の中にいるみたいだよね」
「たしかにそうですね。夢の星だから何でもありな気がしますけどね……。そういえばふと思ったんですが、行方不明者が出る星の共通点って何でしょうか?」
共通点……。
「タツロウさんはどう思います?」
通話を繋げていたタツロウにも聞いてみた。
「あー今まで行った行方不明者がいた星ってどこだ?」
たくさんありすぎて覚えていないようだ。そういう私もかなりの数の星を行ったので、すぐに出てこない。
「うーん……戦場の星に桜と椛の星、雲の星、夏祭りの星、ホラー映画の星、巨大デパートの星とー、あとどこ行ったっけなー……」
「それだけで考えてみるか。そうだなー、ほとんど障害となるのがいたな」
「そうだね。ほとんど夢の主が障害だったけどね。雲の星と夏祭りの星には他の障害がいたけど」
指を折りながら共通点を思い出している。
「巨大デパートの星の夢の主って、あの腹ペコの方でしたよね? 外的要因がありそうな感じがしましたが……」
そういえば、桜と椛の星でも入手した不思議な切手、巨大デパートの星でも入手したな。送られてきたって言ってたけど……。
「たしかにな。その辺りは姉御から聞いてないのか?」
「あー……聞いてないな……。ようやく聞けるようになったからたくさん聞きたい事あったんだけど、起きちゃったから……」
「起きた?」
「うん。夢羽はまだ生きてるからね」
「ああーそうだったな」
「えー!? そうなんですか!?」
タツロウは思い出して納得した様子で、サトウは驚いている。
「そうか。ようやく集まったんだな」
「何が集まったんですか?」
「えっと……」
サトウにも夢羽が置かれていた状況を説明した。
「そうだったんですね……それを隊長さんは1人で一生懸命……すごいです!」
「ありがと。まあ、ほとんど誰かの助けがあったから何とかなったんだけどね。その点、軍部の部長兼救助隊隊長になれた事は幸運だったかなって」
救助隊の対策班にはたくさん情報を貰ったから助かった。
「さて、長話もこのくらいにして、そろそろ夢の主に会いに行こうか」
「はい!」
「俺の方は、雲下に行方不明者いないか再チェックしてくるぜ」
「はい、お願いします」
私はそう言い、タツロウとの通話を切った。そして荷物を取り、扉を開いて外に出た。
ここの階段も他と違い、レッドカーペットで覆われて豪華という雰囲気を出している。私達はその階段を登り、ようやく頂上へと出た。
屋外なのに風がほとんど無く、風が何か見えないものに遮られているような感じがする。
カーペットの先には玉座があり、その上に誰かが頬杖をついて座っている。
その横に、先程の猫の女王と思われる長毛の白猫が、尻尾をパタパタさせて座っている。
なぜか、玉座の上の人を睨んでいるような気がする。
「貴方が夢の主ですか?」
そう聞くと、王座に座っている人が足を組みなおし、こちらを見た。
「クヒヒ、この王座ーは素晴らしいですーね」
よく見ると、白髪で顔に仮面をつけていた。だが、いつもの白衣を着ていない。
「あ! 邪教の団長! 夢の主をどこに連れて行った!」
「クヒヒ。僕ーは邪教ーの団長でーす! クヒヒ」
いつもと雰囲気が違う。
座っているからはっきりとわからないが、体格も違う気がする。
「主は!? 行方不明者はどこ!? 言わないと撃つよ」
ホルスターから銃を抜き、邪教の団長である仮面の科学者と思われる人物に向ける。
サトウは柱に隠れて様子を伺っている。手にはちゃんと銃が握られている。
「クヒヒ。軍部ーの部長さんーは野蛮ですーね」
そう言い、ポケットからU字型の金属と、鉄の棒を取り出した。
「なにあれ。サトウさんわかる?」
柱に隠れているサトウを見る。
「あれは楽器の調律に使う音叉という物ですね。なんであれを出したのでしょう……」
仮面の科学者と思われる人物が、それを叩く。そして、低い音が部屋中に響き渡った。
「ん? あちっ!」
突然ポケットの中に入っていた何かが破裂した。
私はポケットに手を入れ、何が破裂したのかを確認した。
「あ、懐中時計……」
「んんー? なぜ掛からないでーす? それーはなんでーす?」
そう言い立ち上がった。
仮面の科学者と思っていた人物とは全く違う背丈で、明らかに小さかった。
「邪教の団長じゃないの? これ、団長から取った物なんだけど」
中身がバラバラになってしまっているが、外見は残っていたのでそれを見せる。
「それーは……なるほーど、しくじったーのですーね。これーは、あとーでお仕置きーが必要ですーね」
クヒヒと笑う謎の仮面男。
「そのまえーに、貴方ーを洗脳したーら、人神ーは僕ーの手中ーに収まったーも同然でーす」
は? 今何て言った?
謎の仮面男はまた、音叉と鉄の棒を握った。
「見てられないわ~。ツクモちゃん~。ライフルにしてあげて~! 夢羽様の腰巾着は私の援護よ~」
「いつも通り、オレのことは『つくちゃん』でいいぜ、アイリス」
「え!? どっちも喋った!?」
長毛種の白猫が私の前に飛んできた。そして、白いゴスロリ服を着た白銀のツインテールの子に変わった。
アイリス・ネフィリアだ。
私が握っていた拳銃も、アイリスが言った通り狙撃銃に変わった。そして、物神ツクモが今までの火の玉ではない姿を見せ、なぜか勝ち誇った顔をしている。
その姿は、赤く長い髪が馬の尻尾のような形で束ねられており、黒地に赤い炎の模様が描かれた着物を着ている大柄で色々と大きい女の人だった。
肩に担いだ大きな鎚がすごく目立つ。
「な! なな! なんでーこんな所に現人神と物神がいるーのでーすか!!」
謎の仮面男は、音叉をカタカタ揺らして震えている。
「キキキ! 現人神って呼ばれるのも久しぶりね~。それにまんまと私の夢に入ってくるなんて、エサ撒き成功ね~」
「喜んでいる場合じゃねーぜ。あいつが持ってるやつ、『洗脳』を発動させる道具だぜ」
「キキキ……あれだけ厄介なのよね~……風羽、あいつが持っている音叉、撃ち落とせるかしら~」
アイリスは左手にたくさんの黒い短剣を出し、そこから1本を右手に移した。
「やってみる!」
「キキキ! やってみなさい~あの方の後継者~。さあ、かかってきなさい霊神クロード!」
アイリスは短剣を謎の仮面男に投げた。
続きます!
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