63 猫の塔? あーこれ、キャットタワーだね
しばらく歩いていると、巨大な何かが見えてきた。
てっぺんが見えない……。塔かな? 自然にできた物ではないのは確かね。
そう思いながら見上げていると、白猫はその塔をぴょんぴょんと身軽にジャンプし、どんどん上へ登っていってしまった。
「上に来いってことだよね」
「たぶんそうですね……」
サトウは周囲をキョロキョロしている。
「あ、あれって看板ですか?」
「あ、ほんとだ。看板っぽい」
入り口のような所に、1つの看板が立てられていた。
その看板に近づく。
「えっと? ……『猫の塔へようこそ!』だそうですよ?」
「猫の塔? ……あーこれ、キャットタワーだね」
よーく見ると、作りが猫のための塔だ。まさにキャットタワー。
「頂上が見えないキャットタワーですね……猫ちゃんも大きかったですし、私達が小さくなったのでしょうか?」
「そういう夢なんだろうね。とりあえず、猫ちゃんは上に来いって言っているような感じがしたし、行こうか」
「りょーかいです」
目の前の入り口らしき所から、塔の内部へと入る。
その猫の塔の内部に入ると、人間が上がるための螺旋階段と猫達が上がる足場が設けられていた。
この星の人間と言えば夢の主しかいないはずなので、この階段は夢の主のためにある階段なのだろう。
その階段は天井まで続いているが、その先もまだ続いているような感じがする。
だが、1つ気になる点は、人間のための階段にしては横幅がとても広い。
「夢の主は最上階ですかね? あと、行方不明者が見つからないですね……」
「主は最上階だろうけど、行方不明者か……タツロウさんに見てみる?」
「そうですね。今クルマで探索しているでしょうし」
「よし……それじゃ電話っと……」
端末を操作し、タツロウへの通話を押した。
「お嬢! 何かあったのか!?」
「いや私達は問題ないけど、巨大な建築物を見つけたよ」
「それってあの雲を突き抜けているあれのことか?」
「空飛んでるんだし、見えてるよね……」
「ああ、見えてるぜ。それで、俺は何をすればいい?」
「それじゃ、塔のどこかに行方不明者がいないか、空から見回ってほしい」
「りょーかい」
そう言い、タツロウとの通話が切れた。
「それじゃ、私達は上りますか」
「りょーかいです!」
私とサトウは螺旋階段の1段目を上がった。
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何事もなく階段を上り切り、天井から外へと出た。途中、猫達に監視されている感じがしたが、特に何もしてこなかった。
私達は階下を見下ろし、猫達を見た。
「寝ている子達が多かったですね。外よりは寝やすいのでしょうか」
「そうかもしれないね……この風じゃ、中の方が快適だな」
高さがあるからか、風がかなり強い。
所々に猫の足場があるが、そこに留まろうとする猫はいないようだ。
「んー……」
私は周囲を見渡す。
四隅に太い柱があり、その柱から枝分かれをした足場や橋、大きな階段、ハンモック、隠れられそうな小部屋など、猫が楽しむための仕組みがたくさんあった。
その間を階段が通っていて、よくわからない迷路のような構造になっていた。
柱と柱の間はかなりの距離があり、あの大きさの猫達のキャットタワーだからかなと思ったが、明らかに猫と比べても大きい。
そして見上げてみると、私達のいる場所から雲の所までも距離がある。
「すごいですね……まるで迷路です……。階段以外の所に間違えて入りそうですね」
サトウが、近づかない方がよさそうな場所を指している。
「猫が隠れていそうな場所は避けようか。たぶん縄張りだろうし、近づいたら攻撃されるかも」
「そうですね。その方がいいです」
サトウはカバンから双眼鏡を取り出した。
「ねえサトウさん、今にも飛びかかってきそうな猫はいないの?」
私は双眼鏡で状況を確認しているサトウを見る。
「わからないですよー。あ、でも狙われている感じはしますね」
「あー……」
たしかに、ほとんどの猫が獲物を見るような目で見ている気がする。だが、階段には1頭も近づいていこうとしない。
「もしかしたら階段は夢の主が歩く所だから、ここを歩く人間には手を出すなって躾られているのかも」
「猫ちゃんに躾ってできるんですか?」
「賢い子は覚えてくれるんじゃない? あと、ここ夢だから、猫も夢の主の一部だし、物覚えは良さそう」
「なるほど。たしかにそうかもしれませんね。あっちから行きましょう」
そう言い、サトウが先行した。
私は後方の警戒をしながら、腰の刀に手を沿える。そして、サトウの後を追った。
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猫の塔は空中迷路という感じで、階段を歩いていたと思いきや、いつの間にか別の道に入っていたってことが何回かあった。そして、
「迷子です……」
「うーん複雑だな……いつの間にか別の道を歩いていたりするし……」
何か法則性があるのかな? 猫の塔の柱はクリーム色で、階段とかもほぼ同色。タツロウさんに聞いても、思った場所に出てこないし……。
「あ、これってハンモックだよね……。寝ている子いるし、起こしてしまったら襲われそう」
「うぅ……引き返しましょう。行方不明者ってもしかして、猫達に襲われてから、ここから落ちちゃったとかありそうですし……」
「それは恐ろしいな……」
下を見て身震いをする。
一応さっきの所より上がってきているので、かなりの高さがある。落ちたらひとたまりもないだろう。
「あ、猫ちゃん!」
下を見ていた私は、サトウが指している所を確認するために振り返る。そこには、塔の下でサトウが最初に手懐けた? と思われる長毛種の白猫がいた。
「にゃー」
長毛の白猫はひと声鳴き、ゆっくりと進み始めた。
「また案内してくれるのかな?」
「上で待ってたけど全然来ないから迎えに来たのかもしれませんね」
猫の後を追って、迷路をどんどん進んでいく。
「ここは通ってないですね。まさか先に反対側にも通路があるとは思わなかったです」
「猫の寝床かなって思って避けてたな。あ! 別の猫ちゃんがいる」
小部屋の中を通り、反対側にあった出口から出ると、茶トラの猫が道を塞いでいた。
「うぅ~……」
私達に対して低い声で鳴く茶トラ猫。その声を聞いても全く動じることのない長毛の白猫。堂々とした姿で立ち、茶トラ猫をじっと見つめている。
しばらくその状態が続き、根負けしたのか、茶トラ猫は身を引いて別の場所へと歩いていった。
喧嘩にならなくてよかった……。こんな所で喧嘩が始まったら、落ちちゃうかもしれないし……。
「猫ちゃん、縄張り通らせてくれてありがとね」
サトウが立ち去っていく茶トラ猫に声をかけた。茶トラ猫は振り返り、そしてまた前に向き直り、歩いて行った。
「にゃー」
また長毛の白猫が私達を見て鳴いた。ついて来いと言っているのかもしれない。あの堂々とした佇まい、もしかしたらこの猫の塔の女王かもしれない。
「サトウさんはどう思う?」
「どうしました?」
「あの子、女王なのかな?」
「あー……そうかもしれないですね。かっこいいですし」
その貫禄のある長毛の白猫の後ろについて、私達は歩く。猫達の残念そうな目線が降り注ぐ。
そんな中、上がったり下ったりを繰り返し、ようやく雲の近くまで来た。
長毛の白猫は残った道が1本なのがわかったのか、雲を気にせずそのまま上へと登って行った。
「あと少しね……」
「ここまで長かったですね……この雲、そのまま突っ切りますか?」
「いや、ちょっと待って」
念の為に、前に夢羽が作ってくれたガスマスクを着けよう。
私はカバンからガスマスクを2つ取り出し、1つをサトウに渡した。
「あ! ガスマスク! たしかに、臭かったら耐えられないですからね」
「うん。五感は一緒だしね」
「そうですね。猫ちゃんが登って行ったから大丈夫だと思いますが、念のためですね」
サトウはガスマスクを受け取った。そして装着した。
「お嬢! 雲の先は見えないからわからんが、途中までは行方不明者いなかったぜ」
「うん、ありがとう。さて……私達は雲の中に入るよ!」
「りょーかい(です)!」
私とサトウは雲の中へと入っていった。
続きます!
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