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夢現新星譚  作者: 富南
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第5章:邪神教団
63/70

63 猫の塔? あーこれ、キャットタワーだね

 しばらく歩いていると、巨大な何かが見えてきた。

 てっぺんが見えない……。塔かな? 自然にできた物ではないのは確かね。

 そう思いながら見上げていると、白猫はその塔をぴょんぴょんと身軽にジャンプし、どんどん上へ登っていってしまった。


「上に来いってことだよね」

「たぶんそうですね……」


 サトウは周囲をキョロキョロしている。


「あ、あれって看板ですか?」

「あ、ほんとだ。看板っぽい」


 入り口のような所に、1つの看板が立てられていた。

 その看板に近づく。


「えっと? ……『猫の塔へようこそ!』だそうですよ?」

「猫の塔? ……あーこれ、キャットタワーだね」


 よーく見ると、作りが()()()()の塔だ。まさにキャットタワー。


「頂上が見えないキャットタワーですね……猫ちゃんも大きかったですし、私達が小さくなったのでしょうか?」

「そういう夢なんだろうね。とりあえず、猫ちゃんは上に来いって言っているような感じがしたし、行こうか」

「りょーかいです」


 目の前の入り口らしき所から、塔の内部へと入る。

 その猫の塔の内部に入ると、人間が上がるための螺旋(らせん)階段と猫達が上がる足場が設けられていた。

 この星の人間と言えば夢の主しかいないはずなので、この階段は夢の主のためにある階段なのだろう。

 その階段は天井まで続いているが、その先もまだ続いているような感じがする。

 だが、1つ気になる点は、人間のための階段にしては横幅がとても広い。


「夢の主は最上階ですかね? あと、行方不明者が見つからないですね……」

「主は最上階だろうけど、行方不明者か……タツロウさんに見てみる?」

「そうですね。今クルマで探索しているでしょうし」

「よし……それじゃ電話っと……」


 端末を操作し、タツロウへの通話を押した。


「お嬢! 何かあったのか!?」

「いや私達は問題ないけど、巨大な建築物を見つけたよ」

「それってあの雲を突き抜けているあれのことか?」

「空飛んでるんだし、見えてるよね……」

「ああ、見えてるぜ。それで、俺は何をすればいい?」

「それじゃ、塔のどこかに行方不明者がいないか、空から見回ってほしい」

「りょーかい」


 そう言い、タツロウとの通話が切れた。


「それじゃ、私達は上りますか」

「りょーかいです!」


 私とサトウは螺旋階段の1段目を上がった。


---



 何事もなく階段を上り切り、天井から外へと出た。途中、猫達に監視されている感じがしたが、特に何もしてこなかった。

 私達は階下(かいか)を見下ろし、猫達を見た。


「寝ている子達が多かったですね。外よりは寝やすいのでしょうか」

「そうかもしれないね……この風じゃ、中の方が快適だな」


 高さがあるからか、風がかなり強い。

 所々に猫の足場があるが、そこに留まろうとする猫はいないようだ。


「んー……」


 私は周囲を見渡す。

 四隅に太い柱があり、その柱から枝分かれをした足場や橋、大きな階段、ハンモック、隠れられそうな小部屋など、猫が楽しむための仕組みがたくさんあった。

 その間を階段が通っていて、よくわからない迷路のような構造になっていた。

 柱と柱の間はかなりの距離があり、あの大きさの猫達のキャットタワーだからかなと思ったが、明らかに猫と比べても大きい。

 そして見上げてみると、私達のいる場所から雲の所までも距離がある。


「すごいですね……まるで迷路です……。階段以外の所に間違えて入りそうですね」


 サトウが、近づかない方がよさそうな場所を指している。


「猫が隠れていそうな場所は避けようか。たぶん縄張りだろうし、近づいたら攻撃されるかも」

「そうですね。その方がいいです」


 サトウはカバンから双眼鏡を取り出した。


「ねえサトウさん、今にも飛びかかってきそうな猫はいないの?」


 私は双眼鏡で状況を確認しているサトウを見る。


「わからないですよー。あ、でも狙われている感じはしますね」

「あー……」


 たしかに、ほとんどの猫が獲物を見るような目で見ている気がする。だが、階段には1頭も近づいていこうとしない。


「もしかしたら階段は夢の主が歩く所だから、ここを歩く人間には手を出すなって(しつけ)られているのかも」

「猫ちゃんに躾ってできるんですか?」

「賢い子は覚えてくれるんじゃない? あと、ここ夢だから、猫も夢の主の一部だし、物覚えは良さそう」

「なるほど。たしかにそうかもしれませんね。あっちから行きましょう」


 そう言い、サトウが先行した。

 私は後方の警戒をしながら、腰の刀に手を沿える。そして、サトウの後を追った。


---


 猫の塔は空中迷路という感じで、階段を歩いていたと思いきや、いつの間にか別の道に入っていたってことが何回かあった。そして、


「迷子です……」

「うーん複雑だな……いつの間にか別の道を歩いていたりするし……」


 何か法則性があるのかな? 猫の塔の柱はクリーム色で、階段とかもほぼ同色。タツロウさんに聞いても、思った場所に出てこないし……。


「あ、これってハンモックだよね……。寝ている子いるし、起こしてしまったら襲われそう」

「うぅ……引き返しましょう。行方不明者ってもしかして、猫達に襲われてから、ここから落ちちゃったとかありそうですし……」

「それは恐ろしいな……」


 下を見て身震いをする。

 一応さっきの所より上がってきているので、かなりの高さがある。落ちたらひとたまりもないだろう。


「あ、猫ちゃん!」


 下を見ていた私は、サトウが指している所を確認するために振り返る。そこには、塔の下でサトウが最初に手懐けた? と思われる長毛種の白猫がいた。


「にゃー」


 長毛の白猫はひと声鳴き、ゆっくりと進み始めた。


「また案内してくれるのかな?」

「上で待ってたけど全然来ないから迎えに来たのかもしれませんね」


 猫の後を追って、迷路をどんどん進んでいく。


「ここは通ってないですね。まさか先に反対側にも通路があるとは思わなかったです」

「猫の寝床かなって思って避けてたな。あ! 別の猫ちゃんがいる」


 小部屋の中を通り、反対側にあった出口から出ると、茶トラの猫が道を塞いでいた。


「うぅ~……」


 私達に対して低い声で鳴く茶トラ猫。その声を聞いても全く動じることのない長毛の白猫。堂々とした姿で立ち、茶トラ猫をじっと見つめている。

 しばらくその状態が続き、根負けしたのか、茶トラ猫は身を引いて別の場所へと歩いていった。


 喧嘩にならなくてよかった……。こんな所で喧嘩が始まったら、落ちちゃうかもしれないし……。


「猫ちゃん、縄張り通らせてくれてありがとね」


 サトウが立ち去っていく茶トラ猫に声をかけた。茶トラ猫は振り返り、そしてまた前に向き直り、歩いて行った。


「にゃー」


 また長毛の白猫が私達を見て鳴いた。ついて来いと言っているのかもしれない。あの堂々とした(たたず)まい、もしかしたらこの猫の塔の女王かもしれない。


「サトウさんはどう思う?」

「どうしました?」

「あの子、女王なのかな?」

「あー……そうかもしれないですね。かっこいいですし」


 その貫禄(かんろく)のある長毛の白猫の後ろについて、私達は歩く。猫達の残念そうな目線が降り注ぐ。

 そんな中、上がったり(くだ)ったりを繰り返し、ようやく雲の近くまで来た。

 長毛の白猫は残った道が1本なのがわかったのか、雲を気にせずそのまま上へと登って行った。


「あと少しね……」

「ここまで長かったですね……この雲、そのまま突っ切りますか?」

「いや、ちょっと待って」


 念の為に、前に夢羽が作ってくれたガスマスクを着けよう。

 私はカバンからガスマスクを2つ取り出し、1つをサトウに渡した。


「あ! ガスマスク! たしかに、臭かったら耐えられないですからね」

「うん。五感は一緒だしね」

「そうですね。猫ちゃんが登って行ったから大丈夫だと思いますが、念のためですね」


 サトウはガスマスクを受け取った。そして装着した。


「お嬢! 雲の先は見えないからわからんが、途中までは行方不明者いなかったぜ」

「うん、ありがとう。さて……私達は雲の中に入るよ!」

「りょーかい(です)!」


 私とサトウは雲の中へと入っていった。

続きます!

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