59 宇宙ステーションの星
巨大デパートの星を出て、次の星に着くまでのクルマの中。
私達は、雑談をしながら食事をしたり、仮眠を取ったりをしていた。
「これがさっきの星で入手した刀ね」
夢羽が、私の荷物の中に入っていた刀を見ている。
「うん。でも私にはこの子がいるから……」
ホルスターに入っていた銃を抜く。
「あーそうね。つくちゃんは銃が好きだから、刀よりそっちかも」
「だよねー……一応入ってくれたけど……」
刀の方に入っていたつくちゃんは、今銃の方に入っている。
「この刀、どうしようか」
「そのまま使っちゃえば? 風羽なら使えるしね」
「でも、近接はこのナイフがあるよ」
私は、以前局員から貰ったナイフを抜いて夢羽に見せる。
「これって代々受け継がれた感じのナイフよね」
「うん、そうそう」
「お? おお!?」
クルマの後部座席に座っているタツロウが、いきなり取り乱す。
「どうしたの急に……」
「タツロウさんのテンションが爆上がりですね」
サトウはタツロウを見て笑っている。
「これって、あのナイフの達人が使っていた伝説の!?」
「え? 知ってるの?」
「ああ。俺がこの世界に来たばかり時の軍部に、ナイフ1本だけで夢の星を渡り歩いたという伝説の老人がいたんだよ」
ナイフ1本って……すごいな。そりゃ伝説になるね。
「そのご老人が持っていたのがこれってこと?」
「ああ、そうだ。その紋が入ったナイフは他に見たことがない」
よく見ると、グリップに小さな獅子の紋が刻み込まれている。
「今までずっと使ってたのに気づかなかった……」
「それ使わないのか?」
「刀使うんだったらこっちは使わなくなるかな」
「そうか。それを渡した局員は何か言ってたか?」
私は少し思い出すために目を瞑る。
「たしか、タツロウさんと初めて会った戦場の星で、師匠から譲り受けた物って言ってたね。僕にはもう必要ないとも言ってた」
「なるほどな。伝説の老人には弟子が何人かいたんだが、その中の誰かにそのナイフを渡したという噂があったんだよ。本当の事だったんだな」
私はタツロウに、ナイフホルスターに入ったままのナイフを渡す。
それを受け取ったタツロウは、目を輝かせている。
「それ、貰ってもいいよ?」
「え? いいのか? そのお弟子さんがお嬢を一目見て、この人だって思ったんじゃないか?」
「んー……そんな感じはしなかったな」
私が首を傾げていると、夢羽は何かを思い出したような仕草をした。
「あー、あの人ね」
「夢羽、今思い出したんだ」
「うん。たしかに、風羽の言う通り見定めたって感じじゃなかったかな」
「なるほどな。お嬢が使わないというのなら、俺が使ってもいいか?」
タツロウはナイフをホルスターから抜く。
「うん。私は新しい相棒ができたからね」
そう言い刀を見た。
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更に時間が経ち、ようやく目的地の夢の星が目の前に見えてきた。
夢の星なのか宇宙なのか、パッと見ただけでは区別がつかないほど同色の星だ。一応輝いているので、起きているから暗いというわけではないようだ。
「あれだよね? 本当にあれで合ってる?」
「座標はここで間違いないね。切手も暗いし、ここで合ってそうだね」
夢羽は手紙に貼られている切手を見る。
「ここに局長がいたって噂があるのか?」
軽食を食べていたタツロウは、それを飲み込んだ後夢の星を見る。
「夢羽さんがまとめたレポートには、そう書かれていますね」
局長室で作業をしているロボットから新たなゲン目撃情報を入手したので、それを1枚の書類に出力してサトウに確認してもらった。
サトウはその書類の中の、ゲン目撃情報の箇所を指でなぞる。
「とりあえず入ってみようか」
「そうね」
私はカバンから、超小型のドローンを取り出し、解放した。
解放されたドローンは、自律飛行でグルグルと飛び回り、星との距離を一定に保ちながらその場に留まった。
「これでよし。それじゃ、行こうかー」
「あれは?」
「技術部からの試作機だね。これで夢の星を外から監視して、ゲンが出てきたら追跡させる予定」
「なるほど。良いアイディアだわ」
クルマを降下モードに変更し、夢の星へとどんどん降りていく。
しかし、
「これ、どこまで降下すればいいと思う? 重力も無いし、夢の星に入ったはずなのにまだ宇宙だよ」
「え? ここもう星の中なの? え?」
「そう見えないな」
「見た感じは宇宙ですねー」
3人はキョロキョロする。
「ここ、宇宙じゃん。星と勘違いしたのかもよ」
夢羽はクルマから外に出て、その場で宙返りする。
「いや、この切手、黒いから何かなって思ってたけど宇宙だったのね。ここで合ってるよ夢羽。あれ見てごらん」
私もクルマから出た後、逆さまになっている夢羽を見て奥の方を指した。
「あれって……宇宙ステーション! 小さすぎてわからなかったわ! 風羽、行こう行こう!」
さっきまで逆さまになっていた夢羽が、いつの間にか私の隣に来ていた。
そして私は、なす術もなく夢羽に引っ張られ、宇宙ステーションへと移動を開始した。
それと同時に端末から着信音が流れる。
「お嬢! 俺達はどうしたらいい?」
「ごめんごめん、私達はあの宇宙ステーションに行くから、他に捜索できそうな箇所はないか、クルマで移動して探してほしい」
「りょーかい」
「サトウさんもごめんね。タツロウさんとドライブ楽しんできて」
「たの!? ドライブじゃなくて捜索です!!」
サトウの慌てた様子の声が聞こえた。
「ははは。それじゃ、気をつけて」
「りょーかい」
私はそう言い、通話を切る。
「終わったー? じゃあ行こう!」
「夢羽ー……すぐに行きたい気持ちはわかるけど、ちゃんと指揮はしないとだよ」
「はーい。あ! そろそろ着きそうね!」
「もう着くの!?」
夢羽が引っ張っているので、動いているという感覚がない。
「ちょっと待ってー。何がいるかわからないから、まずは偵察しないと」
夢羽に捕まっている手から逃れるために、もがいた。
「そんなの行けばわかるでしょ。さっさと見つけて夢の主に手紙渡してくるよ!」
話している間にも宇宙ステーションに近づいている。
「ねえねえ」
「ん? 姉は夢羽でしょ?」
「違う、そういう意味じゃないー。あの宇宙ステーションからニオイがするよ」
突然、夢羽がよくわからないことを言ってきた。
「え? どんなニオイ?」
「うーん……なんて言うんだろ……言葉で言い表せられないニオイがするわ」
夢羽は、むむむと言いながら難しそうな顔をしている。
前にも夢羽が、ニオイがすると言った時は邪気が関係した。
ということは、この星でも教団が夢の主に何かをしているか、他の局員に危害を加えているかのどっちかをしているのだろう。
私は、銃の入ったホルスターに触れた。
そして、そこからつくちゃんが出てきて、刀の方へと移動した。
「夢羽。急ぎ目で宇宙ステーションに向かって」
「え? ……りょーかい!」
夢羽は察したのか、ゆっくりだったスピードがどんどん速くなっていく。
そして、あっという間にステーションの横に着いた。
外の扉を回して開け、閉めてから操作盤で中の気圧と同じにした後、2つ目の扉をゆっくり回し、そしてそっと押して開いた。
中の様子を伺うと、奥の扉の前に1人の小太りの局員が壁にもたれてウトウトとしている。
私はその人にそっと近づき、刀の柄で腹を強打した。
うぐっという声を漏らして小太りの人は力が抜け、壁をズルズルと滑り座った。
どうやら気絶してくれたようだ。
私は、開きっぱなしの扉から覗き込んでいる夢羽に手招きをした。
夢羽は私と合流し、気絶した男の容態を確認した後、頷いて次の扉を見た。
中から複数の男の声と、震えた声で喋る男の声が聞こえた。
「夢羽は私の後ろにいて。何かあったら援護お願い」
「うん、そうね」
夢羽は、腰のベルトに括り付けた物を握った。
続きます!
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