55 巨大デパートの星
夢羽に紙袋を渡した後、クルマを夢の星の上空で待機モードにしていた。
理由は、今動くともっと出ちゃいそうと夢羽が言ったからだ。
「それならしょうがないね。っと、何か見えるね」
「一箇所だけ明るいな。あとは暗いみたいだが、夢の主起きているのか?」
タツロウは窓を開けて外の様子を見ている。
たしかに起きているのか思うほど暗い。
「どうなんでしょう? たしか、起きている夢の星には近づけないと資料に書かれていましたよ」
「よく勉強したな、偉いぞー! よし、あの明るい所に降下だ!」
タツロウはサトウの頭をわしわしと撫でる。
サトウは頭をくしゃくしゃにされ、「わー」と言いながら髪のセットをし直している。だが、若干嬉しそうだ。
「じゃあ、起きているか試しに降りてみようかー」
「りょーかい。姉御は大丈夫なのか?」
タツロウは助手席の夢羽を見る。
夢羽は「大丈夫よー」と返事をし、右手をぶんぶんと横に振る。
それは大丈夫じゃないという意味なのだろうか?
そんな事を思いながら、夢の星への降下を始めた。
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夢の星へと降下した私達は、着陸する場所を探していた。
座標がずれてしまったのか、あの光っている所を見失ってしまった。
辺り一面黒い雲に覆われていて、着地できそうな陸地が無く、海ばかりが広がっていた。
「あれ? おかしいなー……この切手、デパートの中って感じなのに、海しかない」
「うん、デパートだよね……。もしかして、宇宙から見えた光ってデパートのだったんじゃない?」
「そうかもしれんな。一旦宇宙へ戻るか?」
「うーん……」
私は窓を開けて空を見上げる。
「あ! この星、全体的に雲に覆われているみたいだけど、光が見えたってことは、そこだけ穴が開いているか雲から突き抜けるほど大きい建物があるかのどっちかだよね」
「なるほど! たしかにそうかもしれんな!」
「じゃあ上に行ってみるね」
クルマを手動モードへと切り替え、雲の上まで上昇をした。
雲の上に出るとそこには青空が広がっていて、雲が遥か遠くまで途切れることなく続いていた。
「うわー! すごいすごい! ……すごい光景! 夢の世界だからこそできる景色だよね!」
夢羽は助手席ではしゃいでいる。
「気分悪いの良くなってきたみたいだね。それにしてもすごいね」
「雲でできた夢の星とはまた違う光景だよね。こんな雲の海の世界は初めて見たな」
「たしかにすごいな! ん? あれ、何だ?」
運転席の後部座席に座っているタツロウが前に乗り出し、すごく遠くに盛り上がっている何かを指した。
「あれがデパートの建物でしょうか? 風羽さんの言う通り、雲から突き抜けたものがありましたね」
「よし行こうか!」
私は、建物と思われるものがある場所へとクルマを動かした。
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遠くに見えていた建物のようなものに着いた。
やはり、雲から突き抜けていたものは建物の先端部分だった。
その先端部分はヘリポートになっていたが、ヘリ自体そこにはなかった。
「ここ、着地してもいいかな?」
「いいんじゃない? 置いておくわけでもないし」
「たしかにそうだね」
夢羽のその言葉を聞き、私は屋上と思われる場所のヘリポートへ着地した。
「1番乗り! ……って、ここ寒いわ!」
夢羽は車のドアを開け、ヘリポートの上に立った。
そして身体をガタガタ震わせている。
「たしかに寒いね。まあ、雲の上だもんね……」
「防寒具出しますか?」
サトウがクルマの荷台を開けようとしている。
たしかあの中に、夢の星の気候変化に対応できる物が入っていたっけ。
「いや、目の前に入口があるから、そこまでは我慢しようか。てかさっさと行こう。さすがに寒すぎる」
「だな!」
そう言い、私達は駆け足でヘリポートから出た。
扉をくぐるとエレベーターホールがあり、その奥に下へと降りる階段があった。
私達は手前のエレベーターに入った。
「このエレベーター、1階のボタンしかないわ」
夢羽の言った通り、なぜか1階のボタンしかなかった。
「ま、まあ……夢だからね……降りてみたらわかるかも」
定番のセリフを言いつつ、そのボタンを押した。
エレベーターはガコンと鳴り、そして物凄いスピードで降りていく感じがする。
そして、
「おっと。着いたみたいだな」
スピードが落ちたと思ったら、軽い揺れと共にドアが開いた。
ドアの外に出ると、たくさんの人と四方八方店だらけの空間に出た。
「すごーい! これがデパート?」
「現世のデパートはこんな感じじゃないけどね」
デパート自体が縦に長く、上の方は霞んで全く見えない。
階段がなく、お客さん全員浮いてから上下している。無重力なのだろうか?
店の前には柵のない通路がある。そこに降りて店の中に入っているようだ。
「危なくなさそうだし、タツローとサトウさんデートしてくるといいよー」
「え? えー!?」
夢羽がそう言うと、慌てふためくサトウ。
「ははは、そうだな。お言葉に甘えて、2手に分かれようぜ」
「あ……はい」
サトウは夢羽の言い回しの意味に気づき、顔を赤らめる。
そして、2人で反対側の店の方へと飛んで行った。
「さて私達も、ゲンと夢の主と要救助者を探すよ」
「こんな平和な星で、行方不明になる局員がいるんだね……」
私達は、捜索とどんな店があるのか見回るために、真ん中辺りで上に向かって浮いていた。
周囲にたくさん人がいるが、誰が夢の主なのか夢の住民なのかはわからない。
ゲンも私服で紛れ込んでいるという話なので、この中から探すのは困難な気がする。
「たくさん店があるね。あれ見て見て! 貝殻のアクセサリー屋って書いてある!」
「たしかにそう書いているね」
てか、不思議なお店が多い気がする。
あっちには馬屋。んで、こっちが牛屋……。家畜でも置いているのだろうか?
中を覗き込んでみるが、窓から中の様子を見ることができなかった。
「牛! 風羽は牛が欲しいの?」
「いやいや違うよ。どういうお店なのかって気になったから見たんだけど、中が全く見えないんだよね」
「なるほど、そうだね。夢だから、店の内部までは作られていないのかもね」
夢羽は窓から店の中を覗き込む。
「あっちの店にはたくさん人が入ってるね。行ってみようか」
「お、いいね!」
反対側の、お客の出入りが多いお店の前に来た。
どうやら食べ物を売っているお店のようで、出て行く人の手にはクレープのような物が握られていた。
「あれ食べたい!」
夢羽が、クレープ屋のディスプレイに飾られている巨大クレープを指している。
よく見ると、通貨が見たことのない物だった。
だが、私達が給料で貰っている『星間通貨』は、どの夢でも通貨として使える万能なお金だ。
金の神が管理する、現世の人々が死者や神に捧げる物としてお供えするお金だ。
使うと消えるが、使わないとどんどん増えていくことから、現金以外の支払い方法は作らないと言っている。
「うーん……夢羽だし大丈夫か……。店内専用って書いてあるね。入ってみようか」
「やったー!」
そう言い、夢羽はささっとお店の中に入っていったので、私もそれを追い中へと入った。
続きます!
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