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夢現新星譚  作者: 富南
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第3章:狂った時間と狂わせる科学
43/70

43 洋館からの脱出①

 2階の扉を入ると、1階と同じく廊下になっていた。

 1階と違う点は、フランス人形が並んでいない所だ。


「暗いな」


 あと、2階なのに1階より月光が入ってきておらず、異様に暗い。


「あいつがいるかもしれんしな」


 タツロウは壁際に寄り、背中を預ける。

 そして、目が慣れるまで銃の弾倉に弾丸を補充している。


「見えるようになってきたな。こっちは何も無いんだな」


 角に消火器があるだけで、キャビネットも何も置いていないただの廊下だった。

 何事もなく扉の所まで着き、扉を開く。


 部屋の中はどうやら寝室のようで、端に大きめのベッドがある。

 ベッドの横に小型のライトがあったので、それを点けようとした。


「点かないな。この家、電気点かないのか? って、ロビーは点いてたな。ブレーカーでも落ちてるのか?」


 近くにロウソクがあったので、それをロウソク台ごと持った。


「ブレーカーは無いな。が、あれはこれを置く場所か?」


 下の階と同じテーブルがベッドサイドに置いてあり、その真ん中にくぼみがあった。

 ちょうどロウソク台が入る大きさだ。


「これでいいのか?」


 タツロウは火の灯ったロウソク台を置く。

 すると、


「お? またどっか開いたな」


 カチっという音が廊下側から聞こえた。

 タツロウは部屋を出るために扉に近づく。


「タバコ切らしたか。カバンの中に買い置きがあったはず。あったわ」


 空になったタバコの箱を握り潰した後にカバンの中に入れ、新品を取り出して開封した後に1本取り出した。

 そして、箱を胸ポケットに入れた。


「さっきの骸骨顔どこ行ったんだ? 部屋で待ち伏せしていると思ったんだがなー」


 そんな事を呟きながら部屋を出る。


「ん? おっと!」


 すると部屋から出た瞬間、タツロウの顔面を狙ったナイフが飛んできたので、それを右に避けた。

 そして、壁に刺さったナイフを取る。


「あぶねーな。刺さったらどうするんだよ。って、刺すために投げたのか。ははは!」


 タツロウは笑いながら、取ったナイフを投げた主へ投げ返した。

 投げられたナイフを弾いたのか、金属音が奥の方から聞こえる。

 そして、全身真っ黒の骸骨顔が出てきた。

 骸骨顔だけ白いので、それだけが浮いているような錯覚を覚える。


「は! また出たな骸骨顔! てかお前、さっきいなかったのにどこから湧いて出てきやがった」


 銃を構え、3発骸骨顔に撃つ。

 しかし、骸骨顔は顔を隠して完全に闇に消えた。


「どこに行きやがった?」


 タツロウは右手に瓶を握った後、思いっきり壁に投げた。

 瓶が割れた音が響き渡る。

 そしてライターを取り出し、タバコに火を点け、


「出てこい骸骨顔!」


 それを壁に投げつけた。

 タバコの火がアルコールに移り、燃え始める。

 すると、骸骨顔の姿がはっきりと見えた。

 骸骨顔は火を怖がっているようで、ロビーの方へと走っていった。


「逃げられたか。っと、これ以上燃え広がるとまずいな」


 その場にあった消火器を持ち、栓を抜いて構えた。

 

「うん? 火はどこ行った?」


 燃えていたはずの火が突然消えた。

 タツロウは再びライターを取り出し、燃やしてしまったと思われる部分を確認する。


「燃えてないな。さっき燃えてたはずだが?」


 壁や床に燃えた形跡が全く残されていなく、そしてナイフが刺さった跡も無くなっていた。


「これってあれか。祭りの所と同じやつか。いや、あっちは俺も巻き戻ったか。ここは建物だけってことか?」


 1人で考察し始めるタツロウ。


「あーだめだわからん! お嬢を探さないと! あ! その前に要救助者だ!」


 タツロウは暗い廊下を歩き、ロビーへと出た。

 ロビーにあった焦げた跡も無くなっていて、全て元通りになっていた。


「次はどっちが開いたんだ?」


 タツロウはそのまま反対側の扉を開ける。


「おお、開いた開いた。どれどれ?」


 開いて中を確認する。

 そこは反対側とは違い、明るい廊下だった。


「やっぱりあっち側のブレーカーでも落ちてたか。このくらい明るかったら不意打ちは大丈夫だろ」


 奥の扉を目指して歩き出す。


「どわ!? どこから出てきやがった!」


 大きな鎌がタツロウの身体を掠める。

 上を見ると、点検口の扉が開いていた。


「上か!」


 銃を構え、撃ち放つ。

 骸骨顔は大きな鎌を器用に回し、銃弾を全て弾いた。


「こんな狭い廊下でよくそんなでっけぇ鎌振り回せる、な!」


 斜め上から振り下ろしてきた鎌を避け、2発撃ち放つ。

 骸骨顔が刺した床は、あっという間に補修されていく。


「この手があったな! てめぇはこれでも被ってろ!」


 タツロウは銃を窓の上に狙い、そして窓枠を撃った。

 支えが無くなった窓が割れ、骸骨顔に降り注ぐ。

 骸骨顔はそれを見て、壁際に避けた。


「狙い通りこっち側に来たな。被るのはこれだよ」


 タツロウは火の点いた瓶を骸骨顔が近づいた壁に投げる。

 瓶は割れ、中身が骸骨顔に降り注ぎ、同時に引火して黒いローブに燃え広がった。


「ぐおおおお!」


 再び骸骨顔はローブを脱ぎ去り、廊下からロビーへと逃げて行った。

 壁の火は、アルコールが全て燃えた後、燃え広がらず鎮火した。

 また、壊したはずの窓もいつの間にか修復されている。


「どういう仕組みなんだろうなこれは。うん? 何か物音がするな」


 タツロウは奥の扉に近づく。

 そして、ゆっくりと扉を開いた。


「おい! お前大丈夫か!?」


 そこには、縄でぐるぐる巻きにされて拘束された局員が、床に転がっていた。

 また、テーブルやイスなどが倒されていた。

 おそらく、身体を無理やり動かして移動したから、それらが倒れて物音が聞こえたのだろう。

 タツロウはナイフを取り出し、顔回りや身体の縄を切る。


「あ、ありがとうございます……えっと」


 女性の局員のようで、何度もペコペコと頭を下げている。


「ああ、俺はタツロウだ」

「私はサトウです……お礼はこれでいいですか?」


 そして、配達予定の手紙を差し出してきた。


「これは配達するが、配達報酬はいい。助けた人のその言葉が俺達の報酬だ」


 タツロウは手紙を受け取り、カバンに入れる。


「でも……」

「俺達は配達員を救助するのが仕事だ。まあ仕事っつっても、俺にとっては趣味みたいなもんだ。人を助けるのが好きなんだよ。だから、配達報酬はお前のもんだ」


 倒れたテーブルとイスを元に戻しながら微笑む。


「あ、ありがとうございます!」


 サトウはタツロウに笑顔を向けた。


「ああ、その笑顔とその言葉だよ。最高の報酬だ。ははは!」


 キャビネットの上にあったロウソクとロウソク台を持ち、それをテーブルの上のくぼみに置く。

 そして、ロウソクを設置した後にライターで火を点けた。


「これは何をしているのですか?」

「よく聞いておきな」


 下の方からカチっという音が聞こえた。


「鍵が開く仕組みらしい。この洋館の主はギミック好きなんだろな」

「そうなんですね……」


 サトウは周囲を(しき)りに気にしている。


「どうした?」

「誰かに見られている気配がするんです……この星についてからたまに感じるのですが、タツロウさんは?」

「ああこれの事か。たしかに見られている気がするが、もう気にしなくなったな」

「そんなすぐに慣れないですよ……誰かに見られているというより、撮られているような」


 部屋の扉を開け、廊下に出る。

 移動してもやはり視線を感じるようで、サトウは警戒をしている。


「撮られている?」

「はい……生前に服のモデルの仕事をしていたのですが、その時のカメラに撮られている感覚と似ているんです」

「カメラか。たしかに、見るだけだったら同じ位置からでいいよな。ちょくちょく位置が変わるから、位置バレしないようにしているのかと思っていたが、そういう視点もあるんだな」


 廊下からロビーに出る。

 そして中央の階段を下りて、正面玄関を出ようとした。


「開かねぇな」

「私達閉じ込められたのでしょうか……」

「いや、鍵は開いた音がしたから、どこかが開いたはずだ。んで、残った扉はあれだ」


 タツロウは1階フロアの右側の扉を指す。

 そして、その扉を開き中へと入った。

 ここも明るい廊下で、2階と同じ構造をしている。

 タツロウは点検口を注意しながら前へ進む。


「落ちてこないな。残りはこの部屋の向こうだ。お前さんは俺の後ろについてきてくれ」

「わかりました」


 タツロウは銃を構えながら扉を開く。

 そして、右を見て左を見る。


「クリアだ」

「きゃあああああ!!!」


 点検口が開く音が響き、そこを見たサトウさんが悲鳴をあげた。


「懲りない奴だな。先に前へ! 俺がやったようにロウソクをテーブルに!」

「わ、わかりました!」


 サトウは部屋の中に入り、ロウソクと台を探し始めた。


「お前の相手は俺だ。ほれ、これが怖いんだろ?」


 カバンから瓶を取り出し火を点けて見せた。

 骸骨顔はそれを見て一歩後ろに退いたが、キャビネットから何かを取り出した。


「あ? なんだそれ? 俺の真似か?」


 骸骨顔は液体の入った瓶を持っていた。

続きます!

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