43 洋館からの脱出①
2階の扉を入ると、1階と同じく廊下になっていた。
1階と違う点は、フランス人形が並んでいない所だ。
「暗いな」
あと、2階なのに1階より月光が入ってきておらず、異様に暗い。
「あいつがいるかもしれんしな」
タツロウは壁際に寄り、背中を預ける。
そして、目が慣れるまで銃の弾倉に弾丸を補充している。
「見えるようになってきたな。こっちは何も無いんだな」
角に消火器があるだけで、キャビネットも何も置いていないただの廊下だった。
何事もなく扉の所まで着き、扉を開く。
部屋の中はどうやら寝室のようで、端に大きめのベッドがある。
ベッドの横に小型のライトがあったので、それを点けようとした。
「点かないな。この家、電気点かないのか? って、ロビーは点いてたな。ブレーカーでも落ちてるのか?」
近くにロウソクがあったので、それをロウソク台ごと持った。
「ブレーカーは無いな。が、あれはこれを置く場所か?」
下の階と同じテーブルがベッドサイドに置いてあり、その真ん中にくぼみがあった。
ちょうどロウソク台が入る大きさだ。
「これでいいのか?」
タツロウは火の灯ったロウソク台を置く。
すると、
「お? またどっか開いたな」
カチっという音が廊下側から聞こえた。
タツロウは部屋を出るために扉に近づく。
「タバコ切らしたか。カバンの中に買い置きがあったはず。あったわ」
空になったタバコの箱を握り潰した後にカバンの中に入れ、新品を取り出して開封した後に1本取り出した。
そして、箱を胸ポケットに入れた。
「さっきの骸骨顔どこ行ったんだ? 部屋で待ち伏せしていると思ったんだがなー」
そんな事を呟きながら部屋を出る。
「ん? おっと!」
すると部屋から出た瞬間、タツロウの顔面を狙ったナイフが飛んできたので、それを右に避けた。
そして、壁に刺さったナイフを取る。
「あぶねーな。刺さったらどうするんだよ。って、刺すために投げたのか。ははは!」
タツロウは笑いながら、取ったナイフを投げた主へ投げ返した。
投げられたナイフを弾いたのか、金属音が奥の方から聞こえる。
そして、全身真っ黒の骸骨顔が出てきた。
骸骨顔だけ白いので、それだけが浮いているような錯覚を覚える。
「は! また出たな骸骨顔! てかお前、さっきいなかったのにどこから湧いて出てきやがった」
銃を構え、3発骸骨顔に撃つ。
しかし、骸骨顔は顔を隠して完全に闇に消えた。
「どこに行きやがった?」
タツロウは右手に瓶を握った後、思いっきり壁に投げた。
瓶が割れた音が響き渡る。
そしてライターを取り出し、タバコに火を点け、
「出てこい骸骨顔!」
それを壁に投げつけた。
タバコの火がアルコールに移り、燃え始める。
すると、骸骨顔の姿がはっきりと見えた。
骸骨顔は火を怖がっているようで、ロビーの方へと走っていった。
「逃げられたか。っと、これ以上燃え広がるとまずいな」
その場にあった消火器を持ち、栓を抜いて構えた。
「うん? 火はどこ行った?」
燃えていたはずの火が突然消えた。
タツロウは再びライターを取り出し、燃やしてしまったと思われる部分を確認する。
「燃えてないな。さっき燃えてたはずだが?」
壁や床に燃えた形跡が全く残されていなく、そしてナイフが刺さった跡も無くなっていた。
「これってあれか。祭りの所と同じやつか。いや、あっちは俺も巻き戻ったか。ここは建物だけってことか?」
1人で考察し始めるタツロウ。
「あーだめだわからん! お嬢を探さないと! あ! その前に要救助者だ!」
タツロウは暗い廊下を歩き、ロビーへと出た。
ロビーにあった焦げた跡も無くなっていて、全て元通りになっていた。
「次はどっちが開いたんだ?」
タツロウはそのまま反対側の扉を開ける。
「おお、開いた開いた。どれどれ?」
開いて中を確認する。
そこは反対側とは違い、明るい廊下だった。
「やっぱりあっち側のブレーカーでも落ちてたか。このくらい明るかったら不意打ちは大丈夫だろ」
奥の扉を目指して歩き出す。
「どわ!? どこから出てきやがった!」
大きな鎌がタツロウの身体を掠める。
上を見ると、点検口の扉が開いていた。
「上か!」
銃を構え、撃ち放つ。
骸骨顔は大きな鎌を器用に回し、銃弾を全て弾いた。
「こんな狭い廊下でよくそんなでっけぇ鎌振り回せる、な!」
斜め上から振り下ろしてきた鎌を避け、2発撃ち放つ。
骸骨顔が刺した床は、あっという間に補修されていく。
「この手があったな! てめぇはこれでも被ってろ!」
タツロウは銃を窓の上に狙い、そして窓枠を撃った。
支えが無くなった窓が割れ、骸骨顔に降り注ぐ。
骸骨顔はそれを見て、壁際に避けた。
「狙い通りこっち側に来たな。被るのはこれだよ」
タツロウは火の点いた瓶を骸骨顔が近づいた壁に投げる。
瓶は割れ、中身が骸骨顔に降り注ぎ、同時に引火して黒いローブに燃え広がった。
「ぐおおおお!」
再び骸骨顔はローブを脱ぎ去り、廊下からロビーへと逃げて行った。
壁の火は、アルコールが全て燃えた後、燃え広がらず鎮火した。
また、壊したはずの窓もいつの間にか修復されている。
「どういう仕組みなんだろうなこれは。うん? 何か物音がするな」
タツロウは奥の扉に近づく。
そして、ゆっくりと扉を開いた。
「おい! お前大丈夫か!?」
そこには、縄でぐるぐる巻きにされて拘束された局員が、床に転がっていた。
また、テーブルやイスなどが倒されていた。
おそらく、身体を無理やり動かして移動したから、それらが倒れて物音が聞こえたのだろう。
タツロウはナイフを取り出し、顔回りや身体の縄を切る。
「あ、ありがとうございます……えっと」
女性の局員のようで、何度もペコペコと頭を下げている。
「ああ、俺はタツロウだ」
「私はサトウです……お礼はこれでいいですか?」
そして、配達予定の手紙を差し出してきた。
「これは配達するが、配達報酬はいい。助けた人のその言葉が俺達の報酬だ」
タツロウは手紙を受け取り、カバンに入れる。
「でも……」
「俺達は配達員を救助するのが仕事だ。まあ仕事っつっても、俺にとっては趣味みたいなもんだ。人を助けるのが好きなんだよ。だから、配達報酬はお前のもんだ」
倒れたテーブルとイスを元に戻しながら微笑む。
「あ、ありがとうございます!」
サトウはタツロウに笑顔を向けた。
「ああ、その笑顔とその言葉だよ。最高の報酬だ。ははは!」
キャビネットの上にあったロウソクとロウソク台を持ち、それをテーブルの上のくぼみに置く。
そして、ロウソクを設置した後にライターで火を点けた。
「これは何をしているのですか?」
「よく聞いておきな」
下の方からカチっという音が聞こえた。
「鍵が開く仕組みらしい。この洋館の主はギミック好きなんだろな」
「そうなんですね……」
サトウは周囲を頻りに気にしている。
「どうした?」
「誰かに見られている気配がするんです……この星についてからたまに感じるのですが、タツロウさんは?」
「ああこれの事か。たしかに見られている気がするが、もう気にしなくなったな」
「そんなすぐに慣れないですよ……誰かに見られているというより、撮られているような」
部屋の扉を開け、廊下に出る。
移動してもやはり視線を感じるようで、サトウは警戒をしている。
「撮られている?」
「はい……生前に服のモデルの仕事をしていたのですが、その時のカメラに撮られている感覚と似ているんです」
「カメラか。たしかに、見るだけだったら同じ位置からでいいよな。ちょくちょく位置が変わるから、位置バレしないようにしているのかと思っていたが、そういう視点もあるんだな」
廊下からロビーに出る。
そして中央の階段を下りて、正面玄関を出ようとした。
「開かねぇな」
「私達閉じ込められたのでしょうか……」
「いや、鍵は開いた音がしたから、どこかが開いたはずだ。んで、残った扉はあれだ」
タツロウは1階フロアの右側の扉を指す。
そして、その扉を開き中へと入った。
ここも明るい廊下で、2階と同じ構造をしている。
タツロウは点検口を注意しながら前へ進む。
「落ちてこないな。残りはこの部屋の向こうだ。お前さんは俺の後ろについてきてくれ」
「わかりました」
タツロウは銃を構えながら扉を開く。
そして、右を見て左を見る。
「クリアだ」
「きゃあああああ!!!」
点検口が開く音が響き、そこを見たサトウさんが悲鳴をあげた。
「懲りない奴だな。先に前へ! 俺がやったようにロウソクをテーブルに!」
「わ、わかりました!」
サトウは部屋の中に入り、ロウソクと台を探し始めた。
「お前の相手は俺だ。ほれ、これが怖いんだろ?」
カバンから瓶を取り出し火を点けて見せた。
骸骨顔はそれを見て一歩後ろに退いたが、キャビネットから何かを取り出した。
「あ? なんだそれ? 俺の真似か?」
骸骨顔は液体の入った瓶を持っていた。
続きます!
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