表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢現新星譚  作者: 富南
【Ⅰ】夢と現の星間郵便 第2章:現れる脅威と新たな力
29/70

29 もふもふ天国を守れ!

「あ、壺! 風羽止まって!」


 夢羽の声を聞いて急停止し、壺の置いてある場所を見た。


「うーん……あれからニオイはしないわね。たぶんまだ空っぽなのかも」

「一応壊しておくね」

「そうだね」


 私は拳銃を抜き、壺を割った。


「ここにも桜と椛の星と同じ壺か……」

「また大蛇でも出るのかしら?」

「それは勘弁だね……」


 少し進むと、家の形をした雲がチラチラと見えてきた。

 そして、


「ねえねえ。あれって羊? 執事かしら?」

「執事の羊……かなー」


 二足歩行の羊が執事服を着て、家らしき雲の近くで水をかけている。

 よく見るとそこは花壇のようで、緑の芽が出ている。


「雲に植物って生えるの?」

「この世界での地面だし……まあ夢だしねー」

「このやり取り、前にもどこかで……」


 夢羽はうーんと考えている。

 まあゲンとの会話で、考えるのを止めた時に、簡単に流す時に言うセリフなんだけどね。


「それで、魂のニオイ? はどうなったの?」

「うーん、この辺に来たら急にしなくなったのよね。どうしてかしら?」

「ってことは、この辺にいるかもしれないってことだね。探してみようか」

「手分けして探す?」

「いや、他の局員の行方不明者もいるし、見られちゃまずいでしょ。あの壺を置いていった怪しい局員もいるかもだし、一緒に行動しようか」

「それもそうね」


 家の雲が立ち並ぶ所に着地し、周囲を確認する。

 フヨフヨと移動をする雲羊と、執事の羊が町中を歩いている。


「羊だらけ……もふもふしたい! けど我慢……」

「主を保護したらもふもふしてもいいよ」

「ほんと!? やった! 急いで探すわ!」


 テンションが上がり、色んな方向を見ている夢羽。


「地面のもふもふと羊のもふもふ……そりゃ行方不明者出るよね……」


 そんな事を呟きながら、行方不明者と夢の主の捜索を始めた。


---


 風羽と夢羽が夢の星に降下を始めて数分後。


「お嬢いないぞ!」


 レンタカーの中で叫んでいる男が1人。

 救助隊副隊長のタツロウだ。


「ちゃんと探しましたか?」


 通信機でサポートしているのはチョウだ。


「探したぞ! 隈なくな!」

「遅くなったから先に降りたのでしょうか……副隊長、降りてみましょうか」

「おうよ! って、なんでチョウが指示しているんだよ!」

「オペレーター代行なので、指示ではなくサポートです」

「そうか! ならサポートよろしく!」


 タツロウを乗せたレンタカーが雲の星へと降下し始めた。

 そして、


「チョウ! 地面が無いぞ!」

「この星は土の地面ではなく、雲の地面です」

「なに!? 先に言えー!」

「いえ、言いましたよ。ミーティングの時と出発時の2回。今回で3回目です」

「なに!? 俺が忘れてただけか! 失敬失敬」


 レンタカーの降下モードを手動運転モードに切り替えたタツロウは、乗ったまま着地ができそうな所を探し始めた。


 少し走った所に、雲でできた家が立ち並ぶ集落を見つけた。


「あれは家だな! それで、あれは羊だな!」

「執事服の羊がいると聞いています」

「おいあれ! 執事服じゃないのがいるぞ!」

「行方不明の局員でしょうか! クルマは私が操作しますので、副隊長はそのまま降りてください」

「落ちたら消滅するぞ! あ、無重力なのか! あとは任せた!」


 タツロウはカバンを取り、そのまま執事服ではない物を着ている者が姿を(くら)ませた方向へと泳いで行った。


---


 私達は、街中の進んだ先に、執事の羊がたくさん集まっている所があったので入ってみた。

 このガヤガヤ感と行動を見た感じ、市場かなという印象だ。

 だが、店員もお客さんも皆執事服なので、もう何が何だかわからない。


「……あれって、局員の制服じゃない?」


 私が目を回している中、夢羽は誰かを見つけたようで、左の方を指していた。


「どれ? あ! チラッとしか見えなかったけど、あの後ろ姿はそうだよね。この執事服の集団の中であれは目立つな……追ってみようか」

「うん」


 後を追っていくと、人通りの少ない裏路地的な場所に出た。

 他の所より高めの建物が多く、太陽が当たっていないからか暗い感じがする。


「あ! あそこ曲がったわ!」


 夢羽は曲がった所を指す。

 私はその後ろ姿を追い、少し駆け足になる。

 局員らしき人物を追っていくと開けた場所に出た。

 太陽がいっぱい入ってくるようで、他より明るい。

 どうやらその奥に低めの建物があったようで、その局員は中へと入っていった。


「行方不明者かな? でもこんな所に1人でいるなんて、罠かもしれない。気をつけて入るよ」


 私はそう言い夢羽を見る。

 夢羽は頷いた。

 私は扉をゆっくりと開いた。

 そして、銃を構えながら隙間から中の様子を確認し、開いた扉でできた死角も確認した。


 外から見ると白一色で、更に雲で出来ているため分かりづらかったが、中から見ると2階構造になっている事がわかった。

 少し広い廊下の先に階段があり、その途中途中に扉がいくつもあった。

 部屋の中も雲でできていて、『白』ばかりで扉と壁の区別が難しい。


 特に何も無かったので、2階へと上がった。


「ねえ、あれって……」

「うん、制服着てる。局員だね。でも怪我してるし、縛られているよ」


 私は階段から2階を覗き込む形で立ち、奥を見ている。

 そこには両腕両脚をロープで縛られた男の人が壁にもたれてぐったりとしていた。

 その男の人の近くの扉の中から、誰かが話す声が聞こえる。


「ヒヒ、はい。手筈通りに誘導しました……はい。そのように」


 やはり罠だったようだ。

 だが、要救助者は見つけられたので、その人の近くに寄る。


「この人、気絶しているわね。ロープだけ切っておくね」

「うん、お願い。さて……タツロウさん、聞こえますか?」


 私は端末を操作し、イヤーカフ型のイヤホンで通話を始めた。


「お! お嬢! 今どこだ?」


 ちょうど端末を持っていたのか、すぐ通話が繋がった。


「今、建物の中だから、狼煙上げるね。そこに1名要救助者がいるよ」


 カバンのポケットから狼煙を取り出し、紐を引いた後に窓の外に放り投げた。


「確認できたぜ! 近いな! 俺もその辺りに行った局員を追ってたんだ」

「もしかしたら同じ局員を追っていたのかもしれないね。それじゃ、合流したら作戦通りに」

「りょーかい! と言いたい所だが、厄介なやつに狙われてしまったようだわ」


 タツロウの通話から銃をコッキングする音を拾った。


「やばそうだったら逃げて! 命大事にだからね!」

「ははは、死んでるがな」


 タツロウはそう言い、通話が切れた。

 私が通話をしている間に夢羽は、局員の腕と脚を縛っていたローブを切り終えたようだ。

 こちらを見て頷いている。


 私は頷き返し奥の扉を指す。

 そしてその閉まった扉を開き、中に進入した。


「その場を動くな! 両手を前に組んでゆっくりとこっちを向きなさい」


 私は見覚えのある髪型の、小柄の人に銃を向けた。


「キキキ! 待ってたわよ、ムウ」


 その小柄の子どもがこちらを向く。

 アイリスだ。

続きます!

いいね、ご評価、ブックマークご登録お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ