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愛のカタチ  作者: 遠藤 敦子
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 お泊まりデート中、ユウトは茉由紀に指1本触れてこなかった。茉由紀は「まあ付き合ってないんだし当たり前よね」という気持ちと、「ユウトくんは私のことどう思ってるの?」という気持ちで揺れ動く。しかしユウト本人に今の関係について訊く勇気はなかった。それ以外は普通のカップルと変わらない過ごし方だったと思う。一緒に料理したり、映画を観たりした。ただ寝る場所は同じベッドではなかったけれど。

 あっという間にユウトとのお泊まりデートが終わる。ユウトは茉由紀のおでこにキスして

「茉由紀さん、じゃあね。俺もう行くわ。またお店とかライブ来てな」

と言って去っていく。茉由紀はユウトが帰った後、イラスト集の制作に励んだ。表紙はユウトくんに選んでもらったイラストにして、中身は思い入れのあるイラストにしよう。そう考えながらイラスト集を作る。



 そうこうしているうちに、茉由紀のイラスト集のサンプルが出来上がった。ユウトくんに1番に見せに行こう。そう思ったけれど、ユウトは最近ずっとお店を休みがちだ。お店に電話で問い合わせるも、「ユウトはお休みいただいてまして……」としか返ってこない。ユウトからもらったSNSアカウントにダイレクトメッセージを送ってみるも、返事はない。そもそも既読すらつかないのだ。

 茉由紀は居ても立っても居られなくなり、ユウトのお店のある最寄駅で待ち伏せする。ここならユウトくんに会えると思ったからだ。ユウトくんに会ったら、イラスト集のサンプルを見てほしい。茉由紀はそんな気持ちでユウトを待っていた。

 するとユウトが若い女性と腕を組んで歩くのを茉由紀は見つける。茉由紀はすかさず、「ユウトくん……!」と声をかけた。にも関わらず、ユウトは「何?」と茉由紀に冷たい視線を向ける。連れの女性は「ユウトって誰? (のぶる)じゃないの?」と怪訝そうな顔で言った。きっと彼女はユウトの本当の職業を知らないのだろう。

「これ、イラスト集のサンプル。ユウトくんに選んでもらったイラストを表紙にしたの」

茉由紀はおずおずとイラスト集のサンプルをユウトに渡す。しかし、ユウトからは容赦ない言葉が返ってきた。

「こんなん興味ねえし、いらねえんだよ! もう二度と話しかけてくんな! 死ね!」

ユウトは茉由紀に怒鳴りながら暴言を吐き、イラスト集のサンプルを地面に叩き落とす。それから「なんか変なオバサンに声かけられてんけど、もう行こ」と、連れの女性と一緒に立ち去った。茉由紀は呆然とその場に立ち尽くす。

 ユウトがいなくなってから、茉由紀はイラスト集のサンプルを拾い上げた。地面に落とされたのもあってサンプルは汚れている。

「うっ……うわああああああぁん……!」

茉由紀は人目も憚らず、駅で小さな子どものように大泣きした。通行人からの視線が痛いけれど、茉由紀はもはや周りの目など気にしていなかったのだ。



 あれから茉由紀は、仕事により一層打ち込むことにする。その努力もあり、茉由紀の初のイラスト集はSNSで大人気になった。それ以来、茉由紀は有名企業からイラストの依頼が来るようになる。

 一方でユウトは交際相手の存在をインターネットのまとめサイトですっぱ抜かれ、地下アイドルを首になった。お店では女子高生を相手に高いドリンクを無理やり買わせ、女子高生が支払いできなくなると「実家に行くで」「払えへんのやったら、立ちんぼしてもらわなあかんな」と脅迫めいたことを言っていたそう。

 茉由紀はニュースでユウトが逮捕されたことを知り、「どうしてこんな人が好きだったんだろう」と魔法が解けたような気持ちになった。しかし今は仕事の方が大事なので、目の前の仕事に打ち込むことにする。

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