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【二巻発売記念短編】四野見の勘違い

 先日、BASTERDの事務所で神原と会ったとき、僕こと四野見はびっくりする話を彼女から聞いた。



「聞いてくださいよ四野見さん。昨日、青山6号ダンジョンで偶然まおたんを見かけたんですけど、すごく大きなカメラを持っていたんです」

「え? 大きなカメラ? どれくらいの大きさなの?」

「まおたんくらい」

「それは凄いな」



 魔王様は年齢の割には小柄な体型をしている。


 だけど、その体と同じくらいって言ったら、もはやテレビスタジオに置いてある業務用カメラのレベルじゃないか?


 ダンジョン配信がエンタメになった昨今、ダンジョン撮影なんて珍しくもないが、普通は小型のドローンカメラで事足りる。


 なのに、そんなどデカいカメラを持ち込むなんて……一体、何を撮影しようとしているんだろう?


 あの魔王様のことだ。


 きっと常人では想像もつかないことをやっているに違いない。


 俄然興味が湧いた僕は、神原に話を聞いたその足で魔王様を見たという青山6号ダンジョンへ向かうことにした。


 昨日の今日で、また現れるかもしれないし、もし会えなくても軽くダンジョン探索すればいい──なんて思ってたら、早速、魔王様を発見した。



「ふんふ~ん♪ ふんふんふ~ん♪」



 魔王様は、鼻歌交じりでダンジョンを練り歩いていた。


 だけど、今日はいつもと様子が違った。


 プロの写真家が使っているような一眼レフカメラを首から下げていたのだ。


 もしかして神原が言ってた「大きなカメラ」って、あれのことか?


 でも、どっからどうみても普通のカメラだ。


 神原は魔王様くらいあるって言っていたけど──。



「……いや、待てよ?」



 カメラを揺らしながら歩いていく魔王様を改めて見て思う。


 よく見ると、確かに魔王様の顔よりカメラのほうがデカい気がする。


 神原は「まおたんの体くらい」ではなく「まおたんくらい」と言っていた。


 だとすると、その表現で間違いではない……のかもしれない。


 ふむ……しかし、魔王様はあのカメラで何を撮っているのだろう?



「魔王様、こんにちは」

「……うおっ!? 野生のイケメン!?」

「いえ、四野見です」



 そっと声をかけたんだけど、魔王様は背後にキュウリを見つけた猫みたいにびっくりして飛び上がった。


 僕は魔王様に軽く事情を説明し、何をしているのか尋ねることにした。



「それで、魔王様は一体何を撮ってるんです?」

「もちろんモンスちゃんですよ!」



 魔王様はフンスと鼻を鳴らし、カメラの液晶モニターを僕に向けた。



「写真、見ます?」

「え? いいの?」

「もちろんです! メモリがいっぱいになっちゃって、ほとんど家のパソコンに入れてるのであんまりないですけど」



 なんて少し申し訳なさそうに言ってたけれど、カメラの液晶画面に表示された写真の枚数は999枚だった。堂々たる三桁である。


 しかもこれ、一度に表示できる枚数が999枚ってだけで、実際はもっと多い枚数が保存されてるやつじゃない?


 そうか。これで「あんまりない」のか。


 しかし、すごい量のモンスターの写真だな。


 きっとモンスターの写真を撮って、生態系の調査とか弱点分析をやっているんだろう。


 クリスタルドラゴンを簡単に倒したときは目を疑ったけど、こういう地道な努力の賜物か。流石は魔王様だ──なんて感心した矢先。



「……あ、もしかして四野見さんもほしいですか? モンスちゃんブロマイド」

「なんて?」



 思わず変な声が出た。



「モンスちゃんブロマイドですよ。たまにあずき姉のカメラを借りて可愛いモンスちゃんの写真を撮って、家で愛でてるんです。ほらこれ」



 そう言って魔王様は、どこからともなくモンスターの写真がぎっしりと詰まったクリアファイルを取り出した。


 そこにはC級モンスターのホワイトウルフから、B級のバスターオーガ、ボーンソードマンなど、多種多様なモンスターの写真がずらりと並んでいた。


 言葉を失ってしまった。 


 その量も圧巻だったのだが、ここまで綺麗にモンスターの姿をとらえた写真は見たことがなかったからだ。


 同じモンスターでも至近距離で撮った写真や、ヘソ天しているショットなど、普段ではお目にかかれないものも多い。


 なるほど。ブロマイドなんて言うから変な想像をしてしまったけど、これはやはりモンスターの生態研究のための資料なんだな。


 これは僕も負けていられないぞ。



「あの、魔王様? よかったら写真を譲ってもらえたりしないかな? 僕もモンスターの研究をしたくて」

「えっ! 四野見さんもモンスちゃん愛に目覚めたんですか!? もちろん良いですよ! はいどうぞ!」



 満面の笑みで、魔王様が一枚の写真を差し出した。


 A級モンスター、ティアマットの写真だ。


 鱗のひとつひとつがしっかりと判る距離から撮られているので、どうやったら硬い鱗の隙間を突けるかがよく分かる。


 おまけに皮膚の柔らかそうな部分もバッチリ映ってるし。


 ふむふむ。ここを攻めれば意外と簡単に討伐できそうだな。


 これは凄い。魔王様のおかげでティアマット対策が色々と捗るぞ。



 ──でもこれ、どうやって撮ったんだ?



《あとがき》


ここまでお読みいただきありがとうございます!

さてさて、ココから告知ですが、

本日7月30日、ファミ通文庫様より幼女魔王の2巻が発売されます!!


https://famitsubunko.jp/product/322502000211.html


1巻に続いてとくまろ先生が描かれた、可愛らしいまおたんとみのりちゃんが目印です!

内容は大幅改定&書籍版オリジナル展開!!!

そしてラストには衝撃の事実が……!?

WEBを読まれた方も大満足の2巻となっております。


1巻もセール中ですので、まだの方はこの機会に是非ともどうぞ!!

売上初速で3巻継続が決まりますので、何卒よろしくおねがいします〜〜〜!!


本編更新は……もう少しお待ちくださいませっ!!(汗)

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四野見さんそれは気にしない方がいいよ
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