表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/90

第八十七話 魔王様、ヤバいモンスちゃんに遭遇する

 というわけで、急遽スタートしたマッチョメン育成計画。


 まずは座学からはじめることにした。


 まおの経験を元に、レベルアップの極意を伝授しようってわけだ。



「まおが渋谷20号ダンジョンをソロで潜れるようになったのは、渋谷20号ダンジョンをソロで潜ってたからなんだよね」



 まおはスマホに向かってそう言うと、画面に表示されている「翻訳」ボタンをタップした。


 すぐにホニャラホニャラと英語音声がスマホから流れ出す。


 おお、簡単に翻訳できた!


 めちゃくちゃ便利だな。


 ていうか、気付いたんだけど、これがあるなら英語勉強しなくても良くない?



「(……え? ソロで潜れるようになったのはソロで潜ってたから?)」

「(どゆこと?)」



 マッチョメンたちが一斉に首を捻る。



「(翻訳ミスか?)」

「(いや、違うぞ! これは日本で流行ってるネットミーム……いわゆる進◯郎構文ってやつだ!)」

「(あ、それ俺も知ってる! 同じような内容を繰り返すやつだよな!)」

「(あれ、俺好き)」

「(しかし、さすが魔王イブリズ様だな。日本のネットミームにもお詳しいとは)」

「(さすリズだな)」

「(あれ? でも、自分のこと『まお』って言ってなかったか?)」

「(しらん)」

「(翻訳ミスじゃね?)」



 ざわ、ざわざわざわ。


 最初は困惑していたマッチョメンたちだったが、次第に称賛するような雰囲気に変わっていく。


 良くわからんけど、まおが言ってることが理解できたと考えていいのかな?


 うん。そういうことにしておこう。



「つまり、みんなも頑張れば0号ダンジョンをソロで潜れるようになるということ……てなわけで、みんなにはここでモンスちゃんと戦ってもらいます!」

「(ここで戦ってもらう!?)」

「(いやいや、ここは0号ダンジョンの最下層なんだが!?)」

「大丈夫! やばそうだったらまおが横槍入れるから!」



 それに、こっちには推しモンちゃんもいるし。


 最悪、ぴかどらちゃんを呼んじゃえば、なんとかなるっしょ。



「(横槍?)」

「(その言葉の使い方、合ってるのか?)」

「(多分間違ってると思う)」

「(なんだかイブリズ様って、まおたんっぽいな……)」

「よし、いざ出発!」



 てなわけで、マッチョメンたちを引き連れ、手頃なモンスちゃんを探しに最下層を歩くことにした。


 改めて0号ダンジョンの最下層は、ザ・ダンジョンという感じだった。


 天然の洞窟みたいな雰囲気で、数メートルほどの高さの通路が延々と続いている。


 普段潜っている渋谷ダンジョンなら、すぐにモンスちゃんの気配を感じるんだけど、しんと静まりかえっていた。


 まおたちの足音だけが、洞窟の中に響き渡る。


 ちょっと怖いな……。


 こういうときは、歌でも歌って気分を紛らわせたいところ。



「ふんふ〜ん♪ ふふふふ〜ん♪」

「(……っ!?)」 



 びくりと身をすくませるマッチョメンたち。


 スカーレット☆マニキュアのエンディング曲、「悲しくてもマニキュア」を歌い出したところ、マッチョメンたちにびっくりされてしまった。



「おう、そ〜り〜。でぃすそんぐいず、スカーレットマニキュアのエンディング曲で、まいふぇいばりっと──」



 と、まおが曲の素晴らしさを熱く語ろうとしたときだ。


 突然、前方の洞窟の壁がドカンと破裂した。



「(うわあああっ!?)」

「(な、何だ!?)」



 とっさに身構えるマッチョメンたち。


 一方のまお、何が起きたかわからず放心状態。


 そんなまおの頭に、デカい瓦礫が直撃した。



「(うわああっ!?)」

「(イ、イブリズ様!?)」

「(何事もなかったような雰囲気ですが、頭にどデカい瓦礫が当たりませんでした!?)」

「……あっ! 危ないっ! みんな気を付けて!!」

「(え?)」

「(え?)」

「(反応おそっ!)」



 危険を察知したまおは、ササッと身構える。


 うお〜、びっくりした!!


 しかし、一体何なんだ?


 突然、壁が爆発したみたいだけど……。



「ぐるるるぅ……」



 破裂した壁から立ち上る煙の中に、巨大な影が見えた。


 その影は、ゆっくりと壁の中から這い出てくるように姿を現す。


 2本の角に、牛のような顔。



「(……う、嘘だろ)」



 マッチョメンたちが愕然とした表情で固まった。


 壁を突き破って現れたのは、雄牛の頭を持つ筋骨隆々の巨人さんだった。


 だけど、なんだか見覚えがある。



「……あれ? みろろん?」



 まおは首をかしげてしまった。


 だって、ミノタウロスのみろろんにそっくりだったんだもん。


 でも、【この指と~まれ♪】で呼んでないよ……?



「ブモオオオオオオッ!!」



 みろろん(仮)が雄叫びをあげた。


 ビリビリと空気が揺れ、ダンジョンがグラグラと揺れはじめる。



「(うわぁああっ! に、逃げろ!)」

「(ダンジョンが……っ!)」

「(一体、何が始まるんです!?)」

「(第三次大戦だ)」



 大混乱に陥るマッチョメンたち。


 そんな彼らをよそに、みろろん(仮)の体からもうもうと湯気があがりはじめ、次第に肌が真っ赤に染まっていく。


 もしかしてこれって、第二形態的なやつ!?


 カッコいいし、何だか強そう。 


 ちょっとステータスを拝見させてもらおうかな。



「ステータスオープン!」


《認識しました。所有者、有栖川まお。対象ステータスを描画します》



 アナウンスとともに、まおの目の前にステータス画面が現れる。



―――――――――――――――――――

 名前:ケイオスブルート

 レベル:280

 HP:8700/8700

 筋力:1550(【超肉体Ⅲ】で強化中)

 知力:610

 俊敏力:210

 持久力:800

 スキル:【超肉体Ⅲ】【マイティハンマー】【ファイアヘブンⅤ】【グラビティⅥ】【なかまのうらみ】

―――――――――――――――――――



「ケイオスブルート……?」



 聞いたことがない名前のモンスちゃんだ。


 予想通り、ステータスはかなり高い。


 スキルで強化しているみたいだけど、筋力は1000オーバーだし。


 レベルも250を超えてて──。



「ん? ちょっと待って?」



 まおはそのことに気づく。


 確か下層エリアボスのきらーん☆ちゃんこと「キラーワイバーン」ちゃんのレベルは190だったよね?


 それより100近くレベルが高いってことは──。



「あっ、もしかしてこの子……SS級モンスちゃん!?」



 ひょっとこ面の下で、満面の笑みを浮かべてしまった。


 きたきたきた〜っ!


 ここに来て、ついにS級の上位、SS級が来ましたよっ!


 そうか、この子がSS級のモンスちゃんか。


 確かによく見ると、みろろんとはまた違う可愛さがある。


 例えるならば……そう! きのこの山に対するたけのこの里的な!


 甲乙つけがたい魅力っていうか!


 こしあんに対するつぶあん。


 コーラに対するペプシ。


 今川焼きに対する大判焼き!


 ……あ、最後のは違うか。



「とにかく、相手にとって不足なしだよね!」



 なにせ相手はSS級。


 マッチョメンたちもケイオスブルートちゃんを倒すことができたら、余裕で最下層を回れるはずだ。



「よし! みんな! トレーニング開始だよっ! SS級モンスちゃんに向かって、いざ……突撃っ!」



 それいけ〜と拳を突き上げ、マッチョメンたちに号令をかける。


 しかし彼らは一瞬のためらいもく、一斉に悲痛な面持ちで叫ぶのだった。



「「「「(いや、絶対に無理だからっ!)」」」」

《告知》


27日に幼女魔王様の書籍版がファミ通文庫さんから発売されました!!

これも読者の皆様のおかげでございます。ありがとうございます。

イラストレーターのとくまろ先生が描く、まおのドヤ顔表紙が目印です!


書籍版はシーンの追加や改定など、WEB版から大幅改訂&まおとちずるんの出会いを描いた前日譚の短編つき!

あのふたりはいかにして出会ったのか……壮絶なドラマが待っているっ!!!!

WEB版を読まれた方も楽しめるようになっておりますので、是非よろしくおねがいします〜〜!!


書籍は最初の一週間の売れ行きで続刊が決まりますので、なにとぞ……なにとぞよろしくおねがいしますっっっっ!(切実)

文庫サイズなので、とてもリーズナブルですしおすし!!


▼▼ご購入はこちらから▼▼

https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g322409000352/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ