表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/90

第七十六話 魔王様、大ピンチに陥る

 凄まじい勢いで突っ込んでくる、きらーん☆ちゃん。



 ステータスも高かったし、ここは【私ってば無敵すぎる】を使って攻撃を防ごうと思ったんだけど──。



「ぶももっ!」

「……きんにくん!?」



 きんにくんがまおを守るように、前に出てきた。


 片手を空、もう片方の手を地面に向け、カッコいい構えを取る。


 どうやらキラーン☆ちゃんの攻撃を受け止めてくれるつもりらしい。


 だけどこの構え……どっかで見たことがあるような?


 あっ、ほら! すんごい強い人たちが集まって東京ドームの地下で戦う漫画だよ!



「きいっ!!」



 滑空してきたきらーん☆ちゃんが、きんにくんに体当たり。



「……っ! きんにくん!?」



 凄まじい衝撃が周囲の空気を震わせる。


 思わず尻もちをついちゃったけど、きんにくんはきらーん☆ちゃんを受け止めたまま微動だにしていなかった。


 す、すごいっ!

 

 流石は天地◯下の構えだァ〜〜〜〜〜ッッ!!



「ぶももぉっ!」

「……ぴぃっ!?」



 翼をがっしりつかんだきんにくんが、まるでちゃぶ台返しをするようにきらーん☆ちゃんを投げ飛ばした。


 まさか攻撃を受け止められると思っていなかったのか、茫然自失のまま地面に叩きつけられるきらーん☆ちゃん。


 それを見て、きんにくんがまおのほうを振り向く。



「……ぶももんっ! ぶほっ!」

「ふむっ……ふむふむっ!」



 簡単に通訳すると、「いい感じにやっちゃってください、まおさん!」だそう。



「オッケーだよ、きんにくん! それっ! 【キラキラ☆結晶】ッ!」



 スキルを発動させた瞬間、きらーん☆ちゃんの足元からズババッと鋭く尖った結晶が飛び出してくる。



「きゅ、きゅっ!?」



 とっさに翼を羽ばたかせ飛び退くきらーん☆ちゃん。


 ぬぬっ、やるな! 敵ながらあっぱれ!


 だけど、これで終わりじゃないからね!


 まおは【キラキラ☆結晶】を連続発動させる。


 1発、2発。


 そして、着地した瞬間を狙った5回目の【キラキラ☆結晶】が、きらーん☆ちゃんの翼を貫いた。



「きいっ!?」



 バランスを崩して地上に落下。

 

 よっしゃ! これで上空からの攻撃はできなくなるはず。


 外人さんたちに危害が及ぶことはなくなったよね。


 今のうちに隠れて──って思ったんだけど。



「(……な、何が起きてんのか全然わからん)」



 その外人さんたち、呆然とした顔で立ち尽くしていた。



「(てか、あのスキル何なん?)」

「(理解不能)」

「(よ、良くわからんけど……とにかく頑張れっ!!)」

「(そうだ! 頑張れ! マスクの女の子!)」

「(幼女頑張れっ!!)」

「……むっ!?」



 まおアンテナがNG単語を受信!


 今、まおのことディスらなかった!?



「へいぶらざー! まおのことディスったら……こうだよ! 【キラキラ☆結晶】ッ!」

「きゅうっ!!」



 再び地面から突き出した結晶が、きらーん☆ちゃんをふっとばす。


 天高く吹き飛んだきらーん☆ちゃん、受け身も取れずにそのままドスンと落下。


 広場がしんと静まり返る。


 流石にこれで勝負あったかな?


 ──と思ったんだけど。



「……きゅうぅうぅ……」



 よろよろと起き上がるきらーん☆ちゃん。


 こてんぱんにしたはずなのに、その目にはただならぬ殺気が。


 なんだか不穏な空気──と思った矢先。



《警告。【なかまのうらみ】の発動により、対象のステータスが変化しました》



 まおのスマートイヤホンからアナウンスが流れてきた。


 この声って、ARコンタクトのアナウンス?


 でも、対象のステータスに変化ってどういうことだろ?


 ステータスオープンで、きらーん☆ちゃんのレベルを見てみる。



―――――――――――――――――――

 名前:キラーワイバーン

 レベル:690

 HP:7800/8800

 筋力:950

 知力:850

 俊敏力:920

 持久力:810

 スキル:【グングニルインパクト】【ブラストブレスⅣ】【超硬化Ⅲ】【なかまのうらみ】

―――――――――――――――――――



「……うええぇえっ!? なな、なんだか鬼強化されてない!?」



 だって、さっき見たときはレベル190だったよね。


 もしかして、【なかまのうらみ】ってスキルで強化されたの?


 でも、「なかま」って何のことだろう?


 みたところ、きらーん☆ちゃんはひとりっぽいし──。



「……あっ! もしかして《《ダンジョン内のモンスちゃん》》のこと?」



 ほら、同じところに住んでるルームメイト的なさ。


 推測するに、このダンジョンに住んでるモンスちゃんの恨みを自身のレベルに変えるってことじゃなかろうか。


 しかし、この強化具合を見る限り、ダンジョンのモンスちゃんたち……相当なオコだよね?


 まぁ、いきなりお家に見知らぬ人間が大挙して押しかけてきたわけだし、激オコになってて当然か。


 もしかして現在進行系で強化されたりして──。



―――――――――――――――――――

 名前:キラーワイバーン

 レベル:720

―――――――――――――――――――



 あ、ほらぁ!!


 さらにレベルが上がってる!


 このスキルやばすぎじゃない!?


 ていうか、まおに恨みをぶつけられても困るんですけど!


 だってまおはモンスちゃん愛でてるわけじゃん?


 むしろ「みんなの愛」でまおをレベルアップさせてくれないかな?



「……なんて言ってる場合じゃないか」



 きらーん☆ちゃんは凄まじいオーラを放ちながら、ゆっくりとこちらに近づいてきている。


 ううむ……どうしよう。


 きんにくんたちに相手させるのはちょっと危険な気がする。


 みんなも【なかまのうらみ】を使えたと思うけど、レベルアップしてないみたいだし……。


 もしかしてまおの推しモンちゃんになったから、ダンジョンに住むモンスちゃんの「なかま」じゃなくなっちゃったのかもしれない。


 とにかく、まおがどうにかしないと!



「みんな離れて! ここはまおにまかせて頂戴!」

「ぶ、ぶもっ!?」

「わふっ!」



 きんにくんたちも、きらーん☆ちゃんのヤバさが理解できたのか、あわててまおの後ろにササッと隠れる。


 それを見て、きらーん☆ちゃんが大きく翼を広げた。



「ぐるぅぅぅ……」



 威嚇している……っていうより、どっからでも攻撃してきて良いよ的な雰囲気を感じる。


 ちょっと待って?


 これってまさか──。



「まお、煽られてる?」

「ぐっふん」



 きらーん☆ちゃんに「ブフォッ」と鼻で笑われてしまった。


 ああっ! やっぱり!


 この顔、完全にまおを見下してるよね!? 


 ちょっとレベルがバク上がりしたからって、図に乗っちゃってない!?



「……ねぇ、きらーん☆ちゃん? それ、まおに殴っていいよって意味?」

「きゅ」



 こくりと頷くキラーン☆ちゃん。


 ……ふ〜ん。やっぱり煽ってる系か。


 そうかそうか。



「おっけ〜、理解した」



 すたすたと、きらーん☆ちゃんのそばに。


 ご丁寧に「顔を殴っていいよ」と頭を下げてきたので、こきこきと手首をほぐし、



「えいっ」



 頬に思いっきり平手打ちを放った。



「……ぴぎゃっ!?」



 きらーん☆ちゃんが、平手打ちの衝撃で3周くらいくるくるっと回転する。



「……?? ????」



 叩かれた頬に手を添え、茫然自失になるきらーん☆ちゃん。


 どうやら自分の身に何が起きたのか理解できてないっぽい。


 多分、余裕のよっちゃんイカだと思ったんだろうな〜。


 レベル720って、トモ様よりも強いもんね。


 今のきらーん☆ちゃんは、S級の上位……SS級と言っても過言ではない。


 だけど、ね──。



「こちとら……レベル6000なんじゃいっ!」

「ぎゃおっ!?」



 ワシッときらーん☆ちゃんの足を掴む。


 力任せに引っ張って、ジャイアントスイングみたいにぐるぐると回転。



「ぬおおおおおりゃああああっ!」

「ぎゃぎゃぎゃっ!?」 



 きらーん☆ちゃんの悲鳴が轟く。


 このまま放り投げようかと思ったけど怪我をしちゃいそうなので、1分程度ぶん回したところで解放してあげた。



「……ぎゅ、ぎゅう……」



 しばらくふらふらと彷徨った後、バタンとダウン。



「どう? きらーん☆ちゃん。《《理解した》》?」

「きゅっ、きゅっ……」



 目をぐるぐると回したまま、こくこくと何度も頷く。



「よし。それじゃあ遊びはこれでおしまいにしよう。そろそろお家に帰りな?」

「きゅっ……!」



 きらーん☆ちゃん、すごすごと出てきた穴から地面の中に潜っていく。


 あ、そこがお家なんだ?


 ていうか、お友達になりたかったけど【以心☆伝心】が発動しなかったのは残念。


 仲良くなるのはまた次回、かな。



「……よし」



 静かになったエリア10の広場を見渡す。


 残されたのは、まおと推しモンちゃん。


 ──それと、ぽかんとした顔でこちらを見ている外人さんたち。



「(……し、信じらんねぇ)」



 さっきまおに話しかけてきた白人さんが、目を丸くしている。



「(あの女の子、モンスターぶん回してたぞ……)」

「(な、なんであんなことができるん?)」

「(俺、あの結晶のスキル前に見たことがある!)」

「(マ?)」

「(ああ! ありゃあ、魔王まおが使ってたスキルだ!)」

「(まっ、魔王まお!?)」

「(マジで!?)」

「(うそだろ俺、魔王まおの大ファンなんだが!)」

「(俺も! まおたんかわいいよな!)」

「(まおたんぺろぺろ!)」



 突然盛り上がりはじめる外人さんたち。


 言葉はちんぷんかんぷんだけど、内容はなんとなく理解できるような……。


 多分、まおのこと知ってるくさい?


 これはデンジャーだ。自分はまおじゃないってこと、アピっとく必要がありそう。



「へい! きんにくん、かむひあ!」

「ぶもっ!」



 きんにくんの肩に乗せてもらい、高い位置から外人さんたちを見下ろす。


 そして、ほっかむりの結び目をギュッとしてから、ドドンと胸を張る。



「えぶりばでぃ! あいむのっとまお! まいねーむいず……魔王イブリズ!!」

「(な、なんだって!?)」

「(魔王イブリズ!?)」

「(マジかよ!?)」



 ざわつく外人さんたち。



「(魔王イブリズって、もう一人の魔王だよな!?)」

「(あれ? でも、さっきまおって名乗ってなかった?)」

「(え? 名乗ってた?)」

「(知らん)」

「(聞き間違いじゃね?)」

「(うおおおお! 魔王イブリズ様万歳!)」

「(我らの女神様!)」

「(我らの魔王様!)」

「ふっふっふ……よきにはからえたまえ候!」



 よしよし。まおのアピが効いたらしい。


 魔王イブリズだと信じてくれるなら、まおの存在が広まることはないはず。


 は〜、助かった。



「……ん?」



 外人さんたちのの声援に、やんごとなき王族の如く手を挙げて応えていると、腰につけているポーチがプルプルと震え出した。


 どうやらスマホが鳴ってるっぽい。


 せっかくいい気持ちになってたのに、邪魔するのは誰じゃ?


 死刑に処するぞよ!!

 

 な〜んて魔王ムーブしながらスマホを取り出して、ギョッとしてしまった。


 ホーム画面に表示されていたのは、おびただしい数の着信履歴。


 発信主は──あずき姉。


 さらに、LINKSメッセージも「99+」になっている。



「……こっ、これは」



 すうっと全身から血の気が引いていく。


 お、落ち着いて、まお。


 まずは深呼吸だ。


 すーはーすーはー……。


 少しだけ心が鎮まったところで、再びスマホを見る。


 あずき姉の着信履歴に胃がキュッと痛くなる。


 ええっと……。


 あずき姉から鬼電が来てるってことは……つまり、そういうことだよね?


 え? まお、死亡のお知らせですか?

【読者様へのお願い】


「面白い!」「続きを読みたい」と思われましたら、作者フォローとブックマーク、広告の下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にして応援して下さると嬉しいです。


皆様の応援が作品継続の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ