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第七十四話 魔王様、墓穴を掘りまくる

 颯爽とトモ様たちの助太刀に入ったわけだけど、予想外のことが起きた。


 粉々に砕け散ったギガントゴーレムちゃんが再生をはじめちゃったのだ。


 バラバラになった砂や岩が一箇所に集まり、次第に体を形作っていく。



「……ぐおおおん」



 そして、一分も経たないうちに元の姿に戻っちゃった。


 す、すごっ。



「くっ……ダメージはゼロか」

「なんて再生力だ……」



 トモ様と四野見さんも驚いている様子。


 そう言えばゴーレム系のモンスちゃんって、弱点を破壊しない限り半永久的に再生するんだったっけ?


 こんな速さで元通りになるのは初めて見るけど……。


 確かC級のロックゴーレムちゃんは、自己再生にひと月くらいかかったと思う。それはそれで時間かけすぎじゃんって感じだけど。


 流石はS級のギガントゴーレムちゃんだな。


 だけど、いくら再生速度が速いって言っても、体の中のどこかにある弱点……いわゆる心臓部コアを破壊すれば再生しなくなるはずなんだけど──。



「コ、コア、どこ?」



 それっぽいものはどこにも見当たらない。


 ギガントゴーレムちゃんは、土みたいにバラバラになることができる。


 無数に散らばった土とか石の中からコアを探すのって、スライムちゃんの群れの中からこん◯ゃくゼリーを探すに等しい……。 


 同じギガントゴーレムのつっちーならコアの位置がわかるかもしれないけど、のんびりしてたらトモ様たちが危ないし──。



「よし、決めた!」



 意を決して、ほっかむりをぎゅっと締め直す。


 そんなまおを見て、四野見さんが尋ねてきた。



「ど、どうするつもりなんですか?」

「面倒なので、全部やっちゃいます!」

「……え? 全部?」

「ひえぴたくん! アレをぶっ放しちゃって!」

「ぴいっ!」



 フローズンスライムのひえぴたくんの声が響くと同時に、ギガントゴーレムちゃんの周囲がピキピキと凍りつきはじめた。



「う、うわわっ!?」

「ど、どういうことですか!? 地面が凍りついて……!?」



 アリサさんや東雲さんが驚いた声をあげる。


 これは、フローズンスライムちゃんが使える、対象エリア数メートルを氷漬けさせる【フローズンダスト】というスキル。


 ちなみに、どうしてまおがこのスキルを知っているのかというと、ARコンタクトでひえぴたくんのステータスを見たから。


 これ、ほんと便利。


 八十神さん、マジありがとうございます!



「ふっふっふ……カチカチに凍りついちゃったらバラバラになって逃げることはできないよね?ギガントゴーレムちゃん?」

「……ぐ、ぐおおおん」



 体を分解して逃げようと試みるギガントゴーレムちゃんだったけど、【フローズンダスト】が氷漬けにさせているため、上手くいかない。


 よし。こうなったらあとは──まおが広範囲をぶっ飛ばせば終わりだ!



「いくよっ! それっ!【どどんがどん☆】!】



 氷漬けになったギガントゴーレムちゃんに向かってスキル発動。


 まず最初の爆発で体が砕け、散らばった破片に連鎖爆発が起きる。



「それそれっ! 破片のひとつも残さないどん☆」



 ドカン。


 ズドンバキン。


 小さな破片の一つに至るまで丁寧に爆発させていく。


 これぞ、「コアがどこにあるのかわからないなら、全部破壊しちゃえ」作戦だっ!



「あっはっは! それそれ〜、【どどんがどん☆】! 【どどんがどん☆】!」

「う、うわあああっ!?」

「きゃあああっ!?」



 爆発に混じって四野見さんたちの悲鳴が聞こえた気がするけど……まぁ、大丈夫っしょ。


 爆炎のお祭りが終わって、煙が晴れた。


 さっきまでたくさんの木々や草花が茂っていたその場所は、大きなクレーターに変わっていた。


 どう? ギガントゴーレムちゃん? 


 これでもう復活できないでしょ?



「す、すごい……」



 その光景を見たアリサさんが唖然とする。



「あ、あなた何者なの? あのS級モンスターを粉微塵にしちゃうなんて……」

「……ふっふっふ」



 ついドヤ顔で腕組仁王立ちしちゃった。


 まぁ、ひょっとこ面を付けてるから顔は見えないけど。


 でも、あのアリサさんに褒められるなんて、めちゃ嬉しい。



「……ええっと」



 アリサさんとは裏腹に、四野見さんとトモ様はどこか気まずそうな顔をしていた。


 あれ? どした?



「い、今のってアレだよね、トモ?」

「ええ。間違いなく……まおたんのスキルですね」

「……あっ」



 ハッとそのことに気づく。


 ちょっと待て。完璧な変装をしても【どどんがどん☆】を使ったら、まおだって一発でバレちゃうじゃん……。


 こ、これは意外すぎる盲点……。



「え、ええっと、今のスキルは見なかったことにしてもろて……」

「んなことできるわけないじゃん」



 冷静にアリサさんが返してきた。


 あわわわ……。


 これはちょっとマズいのではなかろうか。


 トモ様がそっと尋ねてくる。



「どうしてまおたんがここに? ダンTVを見たところ配信はしていないようだが……?」

「あ〜……えっと」



 まお、思わず後ずさり。


 や、やばい。


 まお、大ピンチ!


 学校サボって0号ダンジョンに来ているのがバレちゃう。


 何か良い方法はないのか……っ!?


 一発逆転満塁ホームランで、まおじゃない別の人間になりすます方法が──そうだっ! 


 ここは《《アレ》》しかない!



「ち、違うよ! 私はまおじゃない! わ、わ、(わらわ)は、魔王イブリズであるっ!」

「……っ!?」



 トモ様たちが息を飲んだ。


 本日2度目の魔王イブリズ登場である。



「ま、魔王イブリズ!?」



 効果があったのか、アリサさんが愕然とした顔をする。


 ──だけど。



「……って誰?」



 困惑顔。


 あ、あれっ?


 やっぱり効果、無しだった?



「しののん知ってる?」

「確か、ネットの掲示板で少しだけ話題になっていた魔王のことですね……」

「え? ネットの掲示板?」



 首をひねるアリサさん。


 まおも一緒に首を傾げてしまった。 


 え? そうなの?


 初耳なんですけど。



「噂によると、人間になりすました異世界人チン・チマールが、その魔王イブリズを探しているみたいです」

「い、異世界人? マ?」

「マです。さらに、魔王イブリズは、あの魔王まおと双璧をなすほどの実力者だとか……」



 な、なんだって……!?


 思わず愕然としてしまった。


 異世界からの訪問者チン・チマール……一体何者なんだ。


 てか、まおが知らないところでそんな事が起きていたなんて……。


 アリサさんが続ける。



「ん〜……てことは、この冗談みたいなひょっとこ仮面がその魔王イブリズってことなのかね?」

「ええ。その可能性はあります。あのモンスターを葬ったスキルは、明らかに魔王レベルの力だったでしょう?」

「た、確かに!」

「い、いやまぁ、あれは間違いなく魔王様の力だとは思うけど……」



 あはは、と四野見さんが苦笑いする。


 おやおや? ひょっとして、いい感じでカムフラージュできてる?


 よし! ここはダメ押しのオラオラでいっちゃおう!



「ふふん! 妾と同じ力が使えるとは、そのまおとかいうプリティな娘もなかなかのものよのぅ! 褒めてつかわす! わっはっは!」

「……え? 娘?」 



 キョトンとした顔をするアリサさん。



「魔王まおって女の子なの?」

「そうですね」



 四野見さんがコクリと頷き、続ける。



「ただ、この場では一度も性別については明言してないですけど」

「…………あっ」



 しまった!


 また墓穴を掘っちゃった!


 募穴師まおである。



「と、とにかくだなっ! そなたら命は大事にするが良い! てなわけでサヨナラだぜっ!」

「あっ……」

「まおたん!?」

「わ、妾はまおたんではないですぞっ! トモ様っ!」



 ひらりと幽霊狼ガルムのがるりんにまたがり、推しモンちゃんたちを引き連れて全力疾走でダンジョンの奥へと逃げる。


 最近のまお、逃げてばっかりだな。


 人助けしてるのにどうして逃げることになるのか……。解せぬ。


 なんて思いながら走ること5分ほど。


 後ろを振り向き、トモ様たちが追ってきていないことを確認して、ほっと一息。




「……ふぅ、危なかった」



 バレそうになってたけど、なんとか押し通すことができたみたいでよかった。


 だけど、これ以上めだっちゃうと身バレの危険が高くなるし、そろそろ帰ったほうがいいかもしれない。



「…………中層のモンスちゃんをチラ見してからね?」



 だ、だってほら、そろそろ上層最終エリアに到達しそうだし。


 上層のエリアボスもどんな子か気になるし、もう少しだけ……っ!

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